2026年8月28日公開
診断・治療
1. 発症・症状
1型糖尿病は,自己免疫の機序によって膵臓のβ細胞が破壊されることによって起きます。通常はインスリンの分泌が極端に低下するため著しい高血糖をきたします。
そのため症状としては,多飲・多尿はほぼ必発といえます。
その他にも、小児の場合は,以下のようなきっかけで見つかることもあります。
- 夜中に何度もトイレに起きる
- おねしょが増えた
- 乳幼児ではおむつ替えの頻度が増えた
- おむつが重い
なかには多飲・多尿のみでは受診行動につながらず、体重減少が進んだり、まれにはケトアシドーシスに進行して意識障害などの症状が出てから見つかることもあります。
2. 診断
| 条件 |
項目 |
所見 |
| 糖尿病の診断 |
血糖 |
随時血糖の高値 |
| HbA1c |
HbA1cの高値 |
| 1型糖尿病の場合 |
インスリン分泌 |
Cペプチドの低値 |
| ケトン体 |
ケトン体の高値 |
ケトアシドーシスに進行
している場合 |
血液ガス分析 |
pHと重炭酸の低値 |
| 1型糖尿病(1A型)の確定 |
糖尿病関連自己抗体 |
抗GAD抗体,抗IA-2抗体,抗インスリン抗体(インスリン治療開始前),抗ZnT8抗体などのいずれかが陽性 |
3. インスリン治療
ほとんどの1型糖尿病は診断時にはインスリン欠乏の状態に近いため、診断と同時にインスリンの補充が必要になります。現時点では確実なインスリンの補充方法は注射のみとなります。従来からのペン型注入器を用いて各食前に超速効型インスリンと1日1回の持効型インスリンの注射を行うインスリン強化療法が一般的ですが、最近では専用の機器を用いた持続インスリン皮下注射(インスリンポンプ療法)が特に小児では急速に普及しつつあります。特に、持続皮下ブドウ糖測定とインスリン皮下注射を組み合わせることで、高血糖補正のためのインスリンがある程度自動で注入されるAHCL (Advanced hybrid closed loop)の導入によって、容易に良好な血糖コントロールが得られるようになってきました。(図①)
(図①) 幼児のインスリンポンプ使用の例、向かって左側(A)は持続皮下ブドウ糖モニター、右側(B)はインスリン注入用のチューブとカニューレ
4. 自己免疫を標的とした新しい治療
最近では、1型糖尿病の原因の本態である自己免疫を調節することで、進行の抑制や発症の予防を行おうとする薬剤も出てきました(現時点ではわが国では治験段階ですが、海外ではすでに承認されている国もあります)。
注意点・フォローの仕方
稀には定期検尿検査(幼稚園、小・中学校の学校検尿など)を契機に、ごく早期の1型糖尿病が偶然見つかることもありますが、通常は医療機関を受診する時点では何らかの高血糖症状(多飲・多尿、体重減少など)を認めており、検査上も著明な高血糖を呈していることがほとんどです。数日間経過をみているうちにケトアシドーシスが進行することもあります。
糖尿病を疑った場合は遠慮なくすぐにご連絡ください。
患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について
多飲・多尿などの症状が見られ、尿検査で尿糖が陽性でしたら糖尿病の疑いが濃厚です。特に、尿ケトン体も同時に陽性の場合は対応を急ぐ必要があります。
もし、血糖値に加えて血液ガス分析も可能なようなら測定をお願いします。
高血糖に加えてアシドーシス(pH<7.30)が認められるようでしたらすぐにご連絡ください。
極めてまれですが、ケトアシドーシスが進行すると、腹痛、嘔気、嘔吐のような腹部症状が前面に立ち胃腸炎などと間違われたり、呼吸の異常(クスマウル呼吸、深い粗大な呼吸)から呼吸器疾患と間違われたりして診断、対処が遅れることがあります。
(表①) 最初の医療機関受診から治療開始までに1日以上を要したケトアシドーシス症例の内訳 (自験例)
このような場合でも多飲、多尿は必ず認められているはずなので、ひとこと多飲・多尿の有無をご確認いただけると見逃しを避けることができるかもしれません。
逆紹介後のフォローアップで気を付けて欲しいこと
糖尿病の診療は当院で継続させていただきます。1型糖尿病のお子さんが風邪をひいたりされたときは、かかりつけの医療機関を受診されることもあると思います。
1型糖尿病だからといって使ってはいけない薬剤などは基本的にはございません。通常の感冒薬、抗生物質など必要に応じてご処方いただけると助かります。また、予防接種なども予定通りに進めていただいて構いません。
ただ、発熱時など身体的ストレスがかかっている時には、カテコラミンや副腎皮質ステロイドなどの、インスリンに拮抗するホルモンの分泌が増加しますので相対的にインスリンが不足の状態になり、ケトアシドーシスに進行しやすくなります。どのような時でもインスリンの極端な減量や中止は避けてください。
“高熱でぐったりしていて食事、水分摂取も難しい”、“嘔吐・下痢がひどくて水分摂取も難しい”などの場合は入院しての輸液治療が必要になることもありますので、このような際にはご連絡ください。
また、手術を要するような外傷、また抜歯などの際にも状況によっては持続インスリン投与などの処置が必要となる場合もございますのでまずはご一報いただければ幸いです。
診療科からのメッセージ
もし、小児で糖尿病を疑われた場合には、小児総合医療センターの内分泌・代謝グループまでご連絡いただければ幸いです。
特に1型糖尿病は緊急の対応を要することも多く、疑いの段階でも構いませんので遠慮なくご連絡ください。
連絡先は、病院代表番号(045-261-5656)までお電話いただき、小児科内分泌・代謝グループの医師を指定していただく、もしくは小児総合医療センターホットライン(045-253-5712)にお電話いただければ、当番医師よりグループの医師へ連絡が入ります。
小児総合医療センターホットライン
24時間365日、小児科医が直接対応します
本ホットラインは、地域医療機関および救急隊からの診療相談を対象としております。本ホットラインは、地域医療機関および救急隊からの診療相談を対象としております。365日、小児科医が直接対応いたします。発熱、けいれん、呼吸障害、意識障害、脱水、哺乳不良など、救急受診や入院の必要性に迷う症例がありましたら、まずはホットラインへご相談ください。
小児総合医療センターホットライン:Yokohama City University Pediatric Emergency & Consultation line for Everyday、 Everyone、 Everything that matters
(略称:YPEC(ワイペック)
電話番号:045-253-5712
※本ホットラインは、地域医療機関および救急隊からの診療相談を対象としております。
平成7年 横浜市立大学付属病院臨床研修医
平成9年 神奈川県立こども医療センター 内分泌・代謝科シニア・レジデント
平成11年 横浜栄共済病院 小児科
平成13年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター
平成16年 藤沢市民病院 小児科
平成21年 大和市立病院 小児科
平成23年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター 講師
平成27年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター部長