2023年7月28日公開
近年、遺伝医療・ゲノム医療が臨床現場に拡充されてきています。遺伝医療はもともと染色体や遺伝子といった、分子遺伝学の研究から広がっている医療になります。またゲノムとは、DNAに含まれる遺伝情報全体を指し、ゲノム情報は体をつくるための設計図のようなものです。これらを網羅的に調べ、その結果をもとに、より効率的に病気の診断や治療などを行う患者さんごとの個別化医療がゲノム医療です。
現在ゲノム研究の目覚ましい進歩により、病気と遺伝情報のかかわりが急速に明らかになってきています。
現在はゲノム医療の中心はがんゲノムですが、今後がん領域以外の分野も含めて、ゲノム医療はさらに拡大してくることが予想されます。ゲノム医療・遺伝医療の拡充に伴い、遺伝カウンセリングの重要性は高まっています。
カウンセリングという言葉を聞くと、心理カウンセリングをイメージする方も多いと思いますが、心理カウンセリングとは異なります。遺伝カウンセリングは、「相談者とのコミュニケーション・プロセス」と言われています。遺伝カウンセリングでは、相談者の疾患に関する疑問や不安について、正確かつ最新の「情報提供」を伝え、相談者が医学的情報の整理、心理的・社会的影響、家族への影響を理解し、その上で自ら意思決定ができるように支援していく場となります。
遺伝相談は疾患・相談の特殊性から、相談内容を事前に確認するため、事前に紹介状を地域連携室にFAXいただいてから対応させていただいています。
紹介にあたり当科で対応しているかなど、医療機関から電話での相談も受けていますので、疑問点などありましたら、病院代表から遺伝子診療科にお問い合わせください。
また遺伝子診療科の診療は、一部保険診療もありますが、自費診療となることもあるので、紹介の際には患者さんへ一言案内いただけますと幸いです。
当院生殖医療センターは日本産科婦人科学会の不妊症・不育症に関する着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)・着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)、重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)の承認実施施設であるため、これらに伴う遺伝相談にも対応しています。
(PGT-A、SRの紹介は生殖医療センターで対応していますが、PGT-Mの相談は遺伝子診療科に連絡をください。)
各種遺伝性腫瘍の遺伝相談やがんゲノム検査に伴う二次的所見の遺伝相談に対応しています。近年遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子であるBRCA1/2遺伝学的検査の保険適用が拡大されたため、遺伝性乳癌卵巣癌症候群に関する各種遺伝相談が増えています。当院は遺伝性乳癌卵巣癌総合診療暫定連携施設認定を受けており、婦人科と連携してリスク低減卵管卵巣切除術を行っています。遺伝性乳癌卵巣癌症候群患者のサーベイランスについても各科と連携して対応しています。
各診療科と連携しながら、各種遺伝相談、遺伝学的検査に対応しています。
遺伝カウンセリング加算の施設基準に関する届け出を行っている保険医療機関との連携体制や、NIPTを実施する医療機関の認証のための連携など、当院との連携を希望される際には、地域連携室までご連絡ください。
遺伝医療が拡充してきている中で、遺伝医療が必要な患者さん・家族により良い医療を届けたい!をモットーにスタッフ一同努力しています。
ご不明点や疑問点ありましたら、遠慮なくお問い合わせください。
1998年 昭和大学医学部医学科 卒業
1998年 横浜市立大学附属病院
2000年 横浜労災病院 産婦人科
2002年 横浜市立大学附属病院 産婦人科
2003年 神奈川県立こども医療センター 産婦人科
2005年 横浜市立大学附属病院 産婦人科
2005年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター
2012年 カナダトロント小児病院 Motherisk
2014年 横浜市立大学附属病院 産婦人科
2017年 カナダ ブリティッシュコロンビア小児病院 Canadian Pharmacogenomics Network for Drug Safety 研究助手
2020年 済生会横浜市南部病院 産婦人科
2021年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 遺伝子診療科/ 総合周産期母子医療センター兼務