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皮膚疾患に合併する「乾癬性関節炎」~リウマチ膠原病内科と皮膚科の連携~

2024年10月25日公開

関節エコーによる乾癬性関節炎の早期診断と治療

皮膚疾患である乾癬患者の一部に関節炎を合併することが知られています。
欧米に比べ乾癬の患者数が少ないこともあり、非専門医や乾癬患者自身が乾癬性関節炎の合併に気づかないケースが多いと言われています。
乾癬が難治であったり乾癬性関節炎の診断や治療が十分に行われないこともあり、乾癬・乾癬性関節炎患者の医療に対する満足度が低いことが報告されています。
重症の乾癬患者ではうつ病や自殺企図が多いとのデータもあります。
乾癬性関節炎の寛解には、早期診断と治療が欠かせません。横浜市立大学附属市民総合医療センターのリウマチ膠原病センター内科では、高い技術力を誇る関節エコーの応用により乾癬性関節炎の早期の正確な診断を行うことが可能です。
関節エコーにより乾癬性関節炎と診断された場合には、抗リウマチ薬や生物学的製剤を用いた治療により多くの症例で寛解導入できており、患者の満足度の向上に貢献しています。

一方、関節リウマチ患者と比べて病診連携による患者紹介が少ないことが問題点です。乾癬の治療を行っているクリニックにて、乾癬性関節炎の疑われる患者様がいらっしゃいましたらぜひリウマチ膠原病内科までご紹介ください。

皮膚科が診る乾癬性関節炎

乾癬とは

乾癬の典型的な皮疹

乾癬は、銀白色の鱗屑(皮膚の粉)を伴う境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出る病気で、慢性の経過をとります。慢性的に機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿伸側などに出来やすいと言われています。爪の変形を伴うこともあります。

乾癬の頻度は日本では人口のおよそ0.1%-0.3%程度と推定されています。昔は日本人には極めてまれと考えられていましたが、徐々に増加傾向にあり、現在では決してまれとはいえなくなりました。

乾癬の診断は、皮疹が特徴的な場合には視診や問診で可能ですが、判断が難しい場合などはからだの皮膚を一部切り取って、病理検査を行う皮膚生検を行います。

関節炎の発症を疑う

乾癬のうちの90%を占める尋常性乾癬の方の約15%が乾癬性関節炎を発症するといわれています。先に皮膚症状が現れる方が多く、特に爪病変や頭皮、臀部などに皮疹のある方は関節炎を発症しやすいことも分かっています。
乾癬性関節炎の症状は、手指の関節、足裏の腱やアキレス腱、脊椎などいろいろな部位に見られ、その現れ方もさまざまです。関節症状が出現してから診断までの期間が遅れると予後が悪くなることがいくつかの臨床研究で示されており、早期診断が重要と考えます。採血での炎症所見がなくとも関節炎が見つかる方もいるため、すでに関節症状のある方のみではなく、疑いのある方も、関節の診察、関節エコーを含めた画像検査を受けることが必要になります。
乾癬の診断のついている患者さんに関しては、関節症状の出現がないかは日々の診察の中で、手指の関節をはじめとした各関節の症状を確認する必要があります。

  • (リウマチ病学テキスト改訂第3版.p160,図1)  Ⓒ公益財団法人 日本リウマチ財団,一般社団法人 日本リウマチ学会,2022
  • (リウマチ病学テキスト改訂第3版.p404,図3)  Ⓒ公益財団法人 日本リウマチ財団,一般社団法人 日本リウマチ学会,2022

患者さんのご紹介について

注意点・フォローの仕方

乾癬患者では関節炎の合併がないかを常に疑うことが重要であると言われています。簡便なスクリーニング法がいくつかありますので是非利用してみてください。関節炎の合併が少しでも疑われれば積極的にリウマチ膠原病センター内科へご紹介ください。また、乾癬患者では糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の合併が多いことが知られています。当院で複数科の管理が必要な症例も数多く治療を行っています。

患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について

関節や付着部の痛み、指炎が少しでも疑われれば遠慮なくご紹介ください。抗リウマチ薬による治療で乾癬の皮膚症状が劇的に改善する症例も多く経験しています。また当科では当院皮膚科との連携も行っていますので難治の乾癬症例もぜひご相談ください。

逆紹介後のフォローアップについて

治療により寛解が維持できれば紹介元へ逆紹介させていただきます。症状の再燃が見られればまた改めてご紹介ください。

診療科からのメッセージ

リウマチ膠原病センター 内科
部長 大野 滋


乾癬・乾癬性関節炎患者の予後改善のために病診連携の推進を進めたいと考えています。
外用や光線療法で治療効果が不十分な症例、経済的な理由で生物学的製剤の投与が難しい症例などもぜひご紹介ください。

1988年 横浜市立大学 医学部 卒業
1988年 横浜市立大学医学部附属病院 臨床研修医
1990年 横浜市立大学医学部第一内科大学院 入学
1992年 米国国立衛生研究所(NIH)留学
1994年 横浜市立大学医学部第一内科大学院 卒業
1994年 国立横須賀病院 内科
1995年 国立相模原病院 臨床研究センター
1996年 横浜市立大学医学部附属病院 第一内科常勤特別職
1999年 横浜市立大学医学部附属病院 第一内科助手
2002年 横浜市立大学医学部附属病院 第一内科講師
2002年 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 
     難病医療(現リウマチ膠原病)センター講師
2007年 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター 准教授
2022年 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リウマチ膠原病センター 診療教授

皮膚科
部長 金岡 美和

当院では乾癬性関節炎に関してのスクリーニング検査から治療に至るまで、リウマチ膠原病内科と皮膚科とで連携を取りながら行っています。「治らない」、「診断がはっきりしない」などお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください。

2004年 横浜市立大学附属病院 初期研修医
2006年 横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科 後期研修医
2007年 藤沢市民病院皮膚科 修練医
2009年 横浜市立大学附属病院皮膚科 指導診療医
2010年 川崎協同病院皮膚科 医長
2012年 横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学 助教
2014年 横浜市立大学大学院博士課程
2018年 横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学 助教
2022年 横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科 講師(部長)