2022年1月28日公開
糖尿病の治療は生活習慣の改善が第一となり、特に、食事療法、運動療法が重要です。
食事療法については従来厳格のエネルギー制限が行われてきました。しかし、超高齢化社会の進行にともない、フレイル、サルコペニアなどの懸念が増加し、特に高齢者の場合には制限のし過ぎが問題となっています。そこで2019年にガイドラインが改訂となり、患者個々に応じたエネルギー設定が求められています。最も大きな改訂ポイントはエネルギー摂取量の算出方法です。
治療開始時の目安となるエネルギー摂取量の算出方法
エネルギー摂取量(kcal/日) =目標体重(kg)×エネルギー係数
総死亡が最も低いBMIは年齢によって異なり、一定の幅があることを考慮し,以下の式から算出します。
年齢 | 計算式 |
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65歳未満 | [身長(m)] 2×22 |
65歳から74歳 | [身長(m)] 2×22~25 |
75歳以上※ | [身長(m)] 2×22~25 |
身体活動レベル | エネルギー係数 |
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軽い労作(大部分が座位の静的活動) | 25~30kcal/kg |
普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含む) | 30~35kcal/kg |
重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある) | 35~kcal/kg |
糖尿病診療の目的は糖尿病に伴う長年の高血糖によって起こる慢性合併症の発症予防と進展阻止です。慢性合併症には網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳卒中、抹消動脈疾患(PAD)、足病変が含まれます。したがって、外来診療で注意すべき点は血糖コントロールのみに注目するのではなく、それぞれの合併症に応じた管理が必要です。特に忘れがちなのが、網膜症のフォローであり、患者に眼科への定期通院を勧めることは必須です。また、腎症においては微量アルブミン尿の定期的な測定も役立ちます。その他に併存疾患の管理が必要です。糖尿病の併存疾患としては骨病変、手の病変、歯周病、認知症、癌があげられます。いずれの管理も重要ですが、特に癌を見逃さないことが肝要です。初診の糖尿病の場合や、急速な血糖コントロールの悪化の場合には癌の合併を疑って全身の精査を行うことをお勧めします。そのような場合には、当院にご紹介いただくとスムーズな検査を行うことができます。
食事・運動療法、服薬、インスリン注射、血糖自己測定など、外来で十分に指導ができない場合、特に診断直後の患者や、教育入院経験のない患者で、その可能性を考慮するよう促しています。
慢性合併症(網膜症、腎症、神経障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患など)発症のハイリスク者(血糖・血圧・脂質・体重などの難治例)である場合や、これらの糖尿病合併症の発症、進展が認められる場合に紹介を考慮する必要があります。
当院から処方された薬を患者の状態に応じて変更されることは問題ありませんが、その際になるべく低血糖を起こしやすい薬(SU薬など)は避ける、または高容量にしないようにする、内服薬の5種類以上の併用を避けるようお願いいたします。インスリン投与患者では、血糖コントロールが悪化しても、過度なインスリンの増量の前に生活習慣の改善を優先してください。HbA1c8~9%以上が持続するようでしたら、再度当院へのご紹介を考慮してください。
当院では糖尿病発症早期においては食事療法などの教育を行い、進行した症例ではインスリンやGLP-1などの注射製剤の導入、インスリン分泌低下例ではインスリンポンプ療法など様々の治療を行っています。また、各種検査機器が充実しており、全身の合併症の精査などを行うことが可能です。糖尿病発症早期、血糖コントロールが改善しない、インスリン導入が必要、慢性合併症が進行しているなど様々なケースに対応可能ですので、迷ったら一度ご相談ください。