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連携NEWS「肝癌の医療連携」

2021年12月24日公開

横浜市立大学附属市民総合医療センター
消化器病センター 准教授 肝疾患医療センター長 中馬 誠 先生

消化器病センター 准教授 肝疾患医療センター長 中馬 誠 先生の写真消化器病センター 准教授 肝疾患医療センター長 中馬 誠 先生の写真
略歴
1993年 北海道大学病院
2000年 国立がんセンター研究所 
2003年 北海道大学病院
2014年 横浜市立大学附属市民総合医療センター
 
専門医資格・委員
日本消化器病学会学会評議員・指導医・専門医/ 日本肝臓学会東部会評議委員・指導医・専門医/ 日本肝癌研究会幹事/ 神奈川県難病対策協議会・特定疾患審査委員/ 横浜市身体障害者審査委員

肝癌の診断と治療

診断

肝癌はガンの中で、世界で6番目に患者数が多く、死亡者数は世界で3番目です。昨今、脂肪肝やアルコール多飲による慢性肝障害からの発癌は増えています。B型C型肝炎からの肝硬変や、C型肝炎が排除されても、罹病期間が長期だと肝癌ができてきます。腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II)が正常でも発癌していることがありますので、年1-2回の画像診断が望まれます。スクリーニングは超音波が一般的ですが、超音波では十分にみえない場合もあり、造影CT・MRIを相補的に行うことが重要です。特に腫瘍マーカーが高値の場合、後から発癌が確認することもあり、繰り返しの画像診断を行うことが必要です。画像で腫瘍を認めた場合や、画像が検出できなくても腫瘍マーカーが高値または上昇傾向の場合にはご紹介ください。

センター病院も参加した全国調査肝癌の成因のグラフセンター病院も参加した全国調査肝癌の成因のグラフ

治療

肝臓は全部摘出するとその時点で人は生きていけませんので、肝臓自体を残す必要があります。そのため肝機能を維持しながら治療することが最も重要です。完全治癒できる治療法は切除、ラジオ波治療、放射線治療ですが、完全治癒できない場合、最近、肝癌に対する薬物6種類が保険適応となりました。そのため薬物治療単独またはほかの治療との併用療法が増え、以前のように肝動脈塞栓療法を繰り返すことは激減しています。肝癌の治療は日々進歩し、薬物治療や他の治療を組み合わせて(例えば薬物治療と肝動脈塞栓療法やラジオ波治療や切除、ラジオ波治療と放射線治療等)実施中です。さらなる治療薬も開発されています。
また、第2の肝臓ともいわれる筋力を落とさないよう、運動療法や栄養療法についても並行して行います。

肝がん治療に対する保険適用の薬物
ソラフェニブ レゴラフェニブ レンバチニブ
レンビマ ラムシルマブ ネクサバール

肝癌の注意点・フォローアップについて

肝癌は例えば治癒切除をしても、年率10%の割合で再発を認めますので、初回治療後3か月ごとの画像診断が必要です。画像診断は当院で造影CT、造影MRI(特にEOBMRI)、造影超音波で行います。かかりつけ医の先生方には、その間の風邪の治療やインフルエンザやCOVID-19, 肺炎球菌等のワクチン接種をお願いできれば幸いです。さらには血圧や糖尿病の併存があれば、貴院にてご処方ください。肝機能が低下してくると下腿浮腫や腹水、黄疸がでてきますので、それらの観察が参考になります。腹水や黄疸のある患者さんには早めに当科のご受診をおすすめください。
慢性肝炎で肝機能安定または線維化進展していない場合は、逆紹介させていただきますが、肝癌においては主に当院で、高血圧や糖尿病など併存の疾患についてはかかりつけ医の先生に診ていただくダブル主治医制をとりながら、しっかりと患者さんをフォローアップさせていただきます。

肝癌の患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について

画像診断または腫瘍マーカーの継続的な上昇で肝癌を疑われた場合は、すぐにご紹介ください。早期診断が予後の延長につながります。特に紹介の際の基準はございません。

診療科からのメッセージ

消化器病センター 准教授 肝疾患医療センター長 中馬 誠 先生の写真消化器病センター 准教授 肝疾患医療センター長 中馬 誠 先生の写真

繰り返しになりますが、脂肪肝(特に血小板減少や脾腫のあるような場合)やアルコール多飲による慢性肝障害からの発癌が著明に増えています。C型肝炎が排除されても、罹病期間が長期だと肝臓癌ができてきますので年1-2回の画像診断と腫瘍マーカーの測定が必要です。また腫瘍マーカーが正常でも肝臓癌が出現していることがありますので、ご注意ください。また腫瘍マーカー以外にM2BPGi等の線維化マーカー高値群に対して重点的に画像診断を実施するのは肝癌の拾い上げに有効です。

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