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連携NEWS「第5波がピークアウトし、落ち着いた今こそ、この冬の備えを!」

2021年10月29日公開

横浜市立大学附属市民総合医療センター
感染制御部 助教 比嘉 令子 先生

感染制御部 助教 比嘉 令子 先生の写真感染制御部 助教 比嘉 令子 先生の写真
略歴
2012年 横浜市立大学附属病院
2017年 JCHO東京高輪病院
2018年 横浜市立大学附属市民総合医療センター

資格
2019年 Infection Control Doctor資格取得
2019年 日本内科学会認定内科医資格取得

第6波はくるのか?自宅療養のケースが多くなる可能性は高い。

COVID-19に翻弄される夏が終わり、新規患者数も激減し、めっきり肌寒くなってきました。神奈川県内の1日のCOVID-19新規患者数が一桁になることも多くなり、昨年末から夏までの日々が嘘のような落ち着きぶりです。
ここまでくると、「果たして第6波は来るのか? ここまで落ち着いているのならば、第6波など来ずに新型コロナウイルス感染症自体がそのまま終息してしまうのでは?」との希望的観測も生まれてきそうですが、残念ながら、第6波はいずれ来るというのが専門家の見解のようです。
実際、イスラエル、イギリス、シンガポールといった諸外国ではワクチン接種率が70~80%台と高水準をクリアしているなかでの再流行を認めております。 これら再流行のケースを見ると、マスク着用の中止、人流増加、ワクチン未接種者から、特にワクチン接種の適応がない小児からの感染などが再流行の引き金になっているようです 。
ちなみにワクチン接種率に関しては我が国のワクチン接種率は首相官邸ホームページによれば10月26日現在、1回以上接種者76.1%、2回接種完了者70.1%となっております。(65歳以上の高齢者では90%超)
規模のほどは未だ不明ですが、皆で来ると目される第6波に備えましょう。

緊急事態宣言こそ解除されましたが、国の方針としても医療においての新型コロナ対策の手を弱めはせず、10月22日に開催された社会保障審議会・医療保険部会の2022年度診療報酬改定の基本方針を提示においては、改訂の骨子となる4項目のなかでも「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」は特に重点項目として挙げられています。

第6波はワクチンの普及から軽症者が多く、第5波同様に自宅療養のケースが多くなる可能性がございますので、特に地域の先生の往診に頼る部分が大きくなり、重症化の際の紹介・入院のタイミングの見極めなどが問題になるかと思われます。

神奈川県には独自の入院優先度判断スコアがあり、現在これまでのリスク因子や酸素化、画像の上の重症度のみならず、ワクチン接種歴も加味したVer3にアップデートされていますので、COVID-19患者さんのご診察の際にはご活用ください。(表『入院優先度判断スコア Ver.3』参照 注:入院の勧告の基準やスコアは自治体の感染状況に応じて適宜変化しますので、最新の基準をご確認ください)

横浜市の10代~30代接種率は70%前半。この世代へのワクチン接種促しは有意義。

また、ワクチン接種率が以前に比べれば高くなったとは言え、まだまだ接種が徹底されていないため接種適応のあるワクチン未接種者への呼びかけ、促しをしていただけると幸いです。
ワクチン未接種者はピットフォールになりやすく、イスラエルの再流行のエピソードを見るとそれが特にわかりやすいのではではないかと思われます。
イスラエルは早期から新型コロナワクチン接種に力を注ぎ、世界的にワクチン接種を牽引する存在でした。実際にロックダウンを行い、積極的ワクチン接種を推進した結果、1日の新規感染者数が一時は1桁に減った時期もありましたが、その後ワクチン未接種の小児にデルタ株のアウトブレイクがありました。
発端になったのは欧州旅行から帰ってきた一家の児童の感染で、本来帰国後待機すべき期間でありながら児童が登校したために生徒80人がデルタ株に感染し、そこからさらに感染が拡大したとのことです。ちなみに、その地域の12歳以上住民のワクチン接種率は90%を超えていたということです。
新型コロナワクチンによって作られた抗体は時間と共に減衰し、接種4ヶ月後には発症予防効果は当初の70%台から50%程度までに低下、6ヶ月後には20%前後にまで落ち込むとの報告があります。早期接種を進めたイスラエルはワクチン未接種児童と発症リスクが再び増してきた市民という組み合わせによって再び流行を見た格好になります。(その後、イスラエルは接種適応を拡大し5歳〜11歳の児童も接種対象者に含めています。)

ただし、新型コロナワクチンの予防効果は比較的はやく減衰しますが、重症化予防効果はそれよりも長く持続することがこれまでの研究によって明らかになっており(図1『ワクチン効果の経時的変化』参照)、イスラエルの再流行も罹患者数に比して死亡者数は低く抑えられております。

2021年10月6日のNEJMに掲載された、カタールにおけるファイザー/ビオンテック社のmRNAワクチンの予防効果の経時的推移をしました論文。

上段が感染予防効果、下段が重症化予防効果の推移を示しています。

感染予防効果の方は比較的早期に減衰しますが、重症化予防はそれよりも長く続いているところにご注目ください。

横浜市では現状、10代〜30代の接種率は70%台前半にとどまっているため、来るべき第6波に備えてこの世代を中心に未接種者に接種促しを行う意義は大きいかと思われます。接種適応がありながら未接種の患者さんがいらっしゃったら、接種をおすすめしてくださると大変ありがたく存じます。ワクチン未接種者が新規に接種を行い、重症化予防だけでなく感染予防効果の高い状態の人間が時間差をもって集団の中に含まれることで集団免疫がより堅固に強化されるものと思われます。
また、インフルエンザワクチン接種との兼ね合いにもご注意ください。
新型コロナワクチンは原則としてインフルエンザワクチンを含めた他のワクチンとは2週間以上あけて接種しないといけません。ご注意ください。(参考:厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」)

インフルエンザについては 今年は南半球での流行はみていないものの、バングラディシュやインドなどの一部のアジア亜熱帯地域で流行が見られています。
いわゆる「ウイルス干渉」で新型コロナワクチンに押されインフルエンザウイルスの勢いが相対的に弱まっています。加えて市中の飛沫・エアロゾル感染予防や接触感染予防の意識も高まっているためにインフルエンザにとっても現状は流行しづらい環境にはなっているものとは推測しますが、他方、昨年はインフルエンザの流行がなく集団免疫としては弱まっているものと考えられ、上記地域のインフルエンザウイルスが人流によって本邦に持ち込まれれば大流行の可能性もありえます。
症例報告レベルではありますが、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの重複感染も稀にございますので診療の際にはご注意ください。

最後に当院への紹介の際の留意点に関してですが、当院には感染制御部はございますが、HIV診療以外の感染症科的な外来はございません。つきましては、感染症精査含めたご紹介については、紹介状で適宜妥当と思われる診療科指定を行っていただくか、もしくは妥当な診療科が判然としない場合には診療相談窓口へ別途お問い合わせください。

市大センター病院「感染制御部」

  • 院内ラウンド(1回/週)では、全ての病棟と外来を巡回し、院内感染の予防に努めている。

  • 院内ラウンド。病棟薬剤庫の確認。

  • 積極的に診療科カンファレンスへの参加・助言を行うなど、感染症診療の質の向上を図り、患者安全の担保と安心できる医療を提供するために活動している。

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