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甲状腺腫瘍の診断と治療

2025年5月23日公開

診断と治療

甲状腺腫瘍には腺腫様甲状腺腫や濾胞腺腫などの良性腫瘍と、乳頭癌や濾胞癌などの悪性腫瘍があります。
近年、検診の頸動脈エコーや胸部CT、他疾患の精査で行ったMRI・PET/CTなどで偶発的に甲状腺腫瘍が発見される機会が増えてきております。しかしCTやMRI、PET/CT等で甲状腺腫瘍の質的診断は困難です。
甲状腺腫瘍の画像評価は頸部超音波が第一選択になります。腫瘍の大きさや性状を確認し、細胞診検査の適応があるか判断します。
 

参照:甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024

良性腫瘍は大きな結節(>4cm)、増大傾向、圧迫や嚥下困難感などの自覚症状、整容性、縦隔内進展、機能性結節、血清サイログロブリン値(≧1000ng/mL)などを考慮し手術適応を決めています。 悪性腫瘍は細胞診で診断がついたらCT等でステージングを行い、組織型毎に適切な治療方針を検討します。乳頭癌が甲状腺悪性腫瘍の9割を占めますが、腫瘍径やリンパ節転移・遠隔転移の有無により甲状腺切除範囲(全摘あるいは片葉切除)とリンパ節の郭清範囲を決めています。また、再発リスクが高いと考えられる症例では術後放射性ヨード内用療法を行います。

注意点・フォローの仕方

当科での初期治療後、適切な医療機関へのご紹介、またはご紹介元での継続診療をお願いしています。かかりつけ医機能はございませんので、ご留意をいただけますと幸いです。

患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について

甲状腺腫瘍が考えられる症例を当科にご紹介ください。発見の契機やいつから症状が出現したか合わせて情報提供いただけると幸いです。特に、急速な増大傾向、頚部痛、声がれ(嗄声)などを伴う場合、未分化癌や甲状腺悪性リンパ腫など進行スピードの速い悪性腫瘍の可能性がありますのですぐにご連絡をお願いします。

逆紹介後のフォローアップで気を付けて欲しいこと

甲状腺腫瘍のフォローは半年~1年に一回程度甲状腺機能(TSH、FT3、FT4)とサイログロブリン(+抗サイログロブリン抗体)の測定及び頸部超音波検査を行っていただけたらと思います。増大傾向やサイログロブリン値の上昇傾向等ありましたら再度ご紹介いただけると幸いです。

診療科からのメッセージ

当科における乳頭癌の治療は主に甲状腺腫瘍診療ガイドラインに準拠した治療を行っております。甲状腺腫瘍診療ガイドラインにおけるリスク分類で低リスク、中リスク、高リスク症例の10年疾患特異的生存率はそれぞれ99.7%、98.6%、84.1%でした。

参照:Yamazaki H, et al. World J Surg. 2023;47(7):1729-1737.

濾胞癌は組織型や年齢、血管浸潤数などの因子を考慮して追加治療の必要性を決定しています。

参照:Yamazaki H, et al. Eur Thyroid J. 2024;13(5):e240146.

横浜市立大学附属市民総合医療センター甲状腺外科では内分泌外科専門医・甲状腺専門医・甲状腺超音波ガイド下穿刺診断専門医を有する医師が甲状腺腫瘍の診断から治療までを一貫して行っています。また、進行再発症例に対する分子標的薬治療も行っております。甲状腺疾患における診療の質向上に努め、先生方の貴重な患者さんに適切な診療および情報提供をできたらと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

乳腺・甲状腺外科
部長代理 山﨑 春彦

2012年3月 浜松医科大学医学部医学科卒業
2012年4月 財団法人同友会藤沢湘南台病院 初期研修医
2014年3月 横浜市立大附属市民総合医療センター 乳腺・甲状腺外科
2014年3月 横浜市立大附属市民総合医療センター 心臓血管センター外科
2015年4月 秦野赤十字病院 外科
2016年6月 神奈川県立がんセンター 乳腺内分泌外科
2019年4月 伊藤病院 外科
2022年4月 横浜市立大附属市民総合医療センター 乳腺・甲状腺外科 助教
2023年4月 横浜市立大附属市民総合医療センター 乳腺・甲状腺外科 甲状腺外科部長代理