2024年12月4日公開
直腸がん術後の局所再発率はこれまで5-10%と報告されていますが、さらなる低下を目指すには腫瘍が周囲に浸潤傾向を示す、ハイリスク症例に対する新たな治療戦略の確立が必要です。
当院では、直腸がんに対し、ロボット手術を基本アプローチとしていますが、ハイリスク症例ではさらに、術前化学放射線治療を組み合わせることで、直腸がんの治療成績向上に務めています。
局所進行直腸がんでは、腫瘍が周囲に浸潤している場合に手術剥離面が陽性になる可能性が高く、特に術前画像で、ぎりぎり切除可能と考えられるボーダーライン症例では、局所再発リスクが約3倍に上昇することが過去の文献で示されています。
ロボット手術は、3D視野と手ぶれ補正機能により精度が高まり、特にリスクの高い症例での再発防止に有効です。さらに、ボーダーライン症例では、術前に化学放射線治療を行うことで、腫瘍縮小が得られることが多く、有用な治療手段と考えています。
直腸がん手術においては、術中に骨盤内の自律神経が損傷されることにより、男性患者では術後に射精や勃起の障害(性機能障害)が高率に生じることが知られています。
これらの障害は、患者の生活の質(QOL)に深刻な影響を与える事があります。
ロボット手術は、従来の腹腔鏡手術に比べて精密な操作が可能であり、神経の損傷リスクを抑えることが期待されています。
立体視と精密な操作が可能になることで、神経を保護しやすく、深部での操作精度も向上し、術後の性機能への影響を最小限に抑えることを目指しています。
・ 消化器病センター外科の下部消化管グループは、大腸を専門とする医師合計10人で、手術、
化学療法を行っています。ロボット手術プロクター(指導医)2名、内視鏡外科学会技術認定医
4名、消化器外科学会専門医6名を有する専門性の高いグループです。
治療成績の向上、患者様の負担軽減を目指して、積極的に低侵襲手術を行っています。
・ 手術までの待ち時間は病状を考慮し、最短で受診当日の入院対応や、受診1週間以内の手術など、
臨機応変に対応をしています。
・ 紹介元への負担軽減のため、当科は事前予約はなくても受診可能です(紹介状のみ必要、事前予約は
なくても受診可能)。患者様のご紹介をどうぞ宜しくお願いします。
・ 当院では、患者さまの病状に応じて手術までの待機期間を柔軟に調整しております。
症状により、受診当日の入院や早期の手術が必要と判断される場合には、速やかに対応
いたします。
また、受診時に大腸がんによる腸閉塞が確認された場合には、緊急でステント留置を行うなど、
迅速かつ適切な対応を心がけております。
消化器病センター 外科
下部消化管グループ
講師 沼田 正勝
平成17年 横浜市立大学医学部卒業
平成17年 NTT東日本関東病院 研修医
平成19年 横浜市立大学 外科治療学入局
平成19年 平塚共済病院 外科
平成21年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター
平成23年 神奈川県立がんセンター 大腸外科
平成25年 秦野赤十字病院 外科
平成27年 静岡県立静岡がんセンター大腸外科 チーフレジデント
平成29年 横浜市立大学 外科治療学 助教
令和 4年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 講師