2026年3月26日公開
診断・治療
末期腎不全に対する生体腎移植術
術前検査は、原則、ドナー(腎提供者)、レシピエント(腎移植者)ともに外来で検査を進めます。
拒絶反応リスクの高い腎移植でなければ、通常、免疫抑制剤は、入院後に開始となります。
腎移植当日は、まずドナーの手術を先行し、腹腔鏡下(正確には後腹膜腔鏡下)に5㎝ほどの下腹部の小さな傷からドナーの片側の腎臓を採取します。
手術時間は3時間から4時間程度で、術後5-6日で退院となります。
採取された腎臓を、一般的には右の下腹部に15から20㎝の切開をおき骨盤内に移植します。
手術時間は待機時間も合わせて6時間から7時間です。術後数日間はICUで過ごしたのち、一般病棟に戻り、術後14日目前後に退院となります。
注意点・フォローの仕方
免疫抑制療法の進歩に伴い、現在、通常の腎移植では術後周術期に拒絶反応を認めることはありません。それに伴い入院期間も短期化しています。
レシピエントでは、退院後2カ月過ぎますと、安定期に入り、通院が1カ月に1回となります。なお、ドナーは、術後1カ月と3カ月で外来受診しますが、術後3カ月まではドナーの医療費についてはレシピエント負担となります。
当院では長期の移植腎生着を目指して、腎移植後1年、5年、10年経過時に2泊3日で移植腎生検を行っています。移植後1年時の移植腎生検で問題なければ、通院が2カ月に1回程度となります(ただし、成長期の小児は例外)。
また、腎移植で使用する免疫抑制剤は、併用注意・禁忌薬が多いため、注意が必要ですが、薬剤使用時にお分かりにならない場合は、お気軽に外来の方へご連絡ください。
患者さんを紹介する際の必要な情報や基準について
生体腎移植のドナー(腎提供者)条件としては、腎機能の目安としてGFR70mL/min/1.73m2以上であること、健康体であること(がんや感染症等の病気がなく、仮に多少の生活習慣病があっても内服薬によりコントロール良好であること)、正常な判断力をもち精神的に問題がないこと、腎提供が見返りを求めない自発的なものであること、血縁者(姻族含む)であること、などがあげられます。
これらの基準を満たした上で、腎移植レシピエント予定者とのクロスマッチテスト(免疫学的な相性をみる自費検査)を行い問題なければドナー候補者として確定となります。
腎移植患者では、肝移植患者と異なり原則、免疫寛容が成立しないため、移植腎が機能する限り免疫抑制剤の内服継続が必要になります。
腎移植を受ける方では、腎移植に用いる腸骨動静脈に問題がないことや、がんや感染症がないことなどの医療的なことも重要ですが、免疫抑制剤を長く継続する必要があるということから、服薬コンプライアンス(尊守)が最も重要といえます。
また、血液透析と比べ通院間隔が開きますので、体調変化時の対応や通常の生活における自己管理ができることも重要になってきます。
移植した腎臓を再度、元のドナーへ戻すことはできませんので、ドナー候補の方がじっくり考えた上で最終的にドナーになることを判断する必要がありますし、初診から生体腎移植手術を実際に行うまでに最短でも6カ月は要することが多いです。
逆紹介後のフォローアップで気を付けて欲しいこと
移植腎が機能する限り、免疫抑制剤の調整あるため、当院への定期的な通院が必要になりますが、上気道炎等の対応等は、お近くのクリニックにお願いすることが多くなっています。
腎移植の免疫抑制療法は、自然免疫への影響は少ないのですが、主にヘルパーT細胞を中心とする獲得免疫を抑制するため、ウイルス感染症への抵抗力が低下します。
とくにインフルエンザウイルスと新型コロナウイルス感染症は、重症化しうるので、早期診断と早急な抗ウイルス薬投与が必要となります。
特に発熱を伴う上気道炎等、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染症が疑われる場合、迅速検査と診断がつけば抗ウイルス薬の投与をお願いします。
使用薬剤や症状により免疫抑制の調整が必要となるため、患者さん自身から当院に電話連絡をいただくことになっております。
診療科からのメッセージ
末期腎不全に対する腎代替療法として、透析医療と双璧をなす存在が腎移植医療であり、高いQOLが維持できるという意味でも、また医療経済的にも優れた医療でもあります。
腎移植手術は認定施設のみで施行可能であり、現在、神奈川県内には8施設あり、そのうち横浜市内には当院を含めた2施設しかありません。
横浜市立大学では、1996年から福浦(本院)で腎移植を開始、その後2000年の開業から当院に移管、2007年からは私が腎移植の担当責任者となり、2026年1月末までに生体腎移植と献腎移植を合わせて379例の腎移植(年齢は5歳から73歳まで)を、地域医療として行ってまいりました。
拒絶反応リスクの高いABO血液型不適合腎移植や抗ドナーHLA抗体陽性の腎移植、また手術的に難易度の高い小児の腎移植や萎縮膀胱に対する腸管利用膀胱拡大術後の腎移植なども行ってまいりました。
現在、月に2~3件の生体腎移植手術を行っておりまして、さらに近年のニーズに応え、関連病院である藤沢市民病院泌尿器科/腎移植科と横浜市みなと赤十字病院泌尿器科において、前者は2022年から、後者は2024年から手術時に私を含めた2名の移植医が参加する形で腎移植手術を開始しています。
1996年 横浜市立大学 医学部 卒業
1996年 横浜市立大学附属病院 研修医
1998年 横浜市立大学附属病院 泌尿器科 特別職診療医
1999年 静岡県立こども病院 泌尿器科 診療医
2000年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器科 特別職診療医
2001年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器科 助手
2002年 東京都立清瀬小児病院 泌尿器科 非常勤診療医
2003年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 助教
2013年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 講師
2017年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 准教授
2025年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 部長