診療科・部門案内

泌尿器・腎移植科

当科のご紹介

・泌尿器悪性腫瘍(前立腺癌・膀胱癌・腎臓癌・腎盂癌・尿管癌・精巣癌など)、副腎腫瘍および腎移植、小児泌尿器疾患を含む泌尿器科全般を扱っています。
・診療にあたっては、患者さんとよいコミュニケーションをとることを最優先に考えています。疑問があれば気軽に聞ける雰囲気づくりを心がけています。
・泌尿器疾患の臨床治験(前立腺癌を中心に)
前立腺癌や尿路上皮癌など泌尿器科癌に対する新規薬剤の開発として、国内外の製薬企業と協力して臨床治験を行っています。治験とは、まだ市販されていない薬剤を試験的に患者さんに投与して、その効果を判定するものです。薬剤や対象疾患は様々で不定期ですが、企業からの申込があり次第受け入れており、グローバルと時差のない最新の治療薬の開発に取り組んでいます。
・腎移植は神奈川県でトップクラスの件数で施行しています。

患者さんへ

主な対応疾患

【局所癌】
局所癌の場合、主な治療法は手術、放射線治療、およびホルモン治療が基本になります。手術では癌を取り除くために前立腺全摘手術を行います。当院では、ロボット支援手術を導入し週2~3件程度実施しております。ロボット支援手術により癌の治療成績の向上に加えて、入院期間の短縮や術後の疼痛・尿失禁を低減することができます。放射線治療は、癌細胞を破壊するために高エネルギーの放射線を利用します。当院では強度変調放射線治療(IMRT)を用いています。
ホルモン治療は、前立腺癌の成長を抑えるために男性ホルモンを抑えます。年齢などで手術や放射線治療ができない方や、手術や放射線と組み合わせて実施することもあります。

【転移癌】
転移癌の場合、治療の目的は、癌の進行を遅らせ、症状を緩和し、生存期間を延ばすことが重要です。転移癌に対しては、ホルモン療法、化学療法、新規の抗男性ホルモン剤、遺伝子変異のある方への薬剤、および骨を強化する薬など様々な治療選択肢があります。当院では、エビデンスのある保険適応のある薬剤はすべて治療できる環境です。また新規の臨床試験も国内で最大規模実施しており、従来の治療では困難な方への治療選択肢のひとつとして、ご提案させていただくこともあります。

腫瘍が小さい場合は、部分切除術(腎部分摘出術)が可能で、健康な腎組織をできるだけ保存します。当院ではロボット支援手術を導入しており、腫瘍の大きさが小さい場合は極力温存できる手術をご提案しています。 大きな腫瘍や部分切除が難しい腫瘍には、全腎摘出術が必要な場合があります。腫瘍の大きさや特徴により腹腔鏡下の手術や開腹の手術など適切な治療をご提案します。 転移などがある進行した腎腫瘍に関しては、免疫療法、分子標的療法などを組み合わせた集学的な治療を行っております。

腎盂尿管癌の主な治療は手術で、患者さんの全身状態・腎機能を考慮し可能であれば腫瘍の全摘を目指します。手術では、腎臓と尿管の切除を行います。進行癌で手術が難しい場合は、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤などを含めた集学的な治療を行います。

膀胱癌には通常、内視鏡での診断と治療を行います。初期の癌であれば、内視鏡治療のみで治療が完結しますが、進行がある程度進んだ場合や再発した場合は全膀胱摘出術や化学療法などが検討されることもあります。 当院では、膀胱癌に関しても臨床治験を行っており、該当する患者さんには通常の治療に加えて、ご提案させていただく場合もあります。 膀胱癌が転移している場合、全身治療が必要になります。化学療法が一般的に用いられ、腫瘍の大きさを減少させることを目指します。近年では、免疫療法も治療選択肢として増えており、集学的な治療を行います。

当院は、神奈川県内でも小児泌尿器科学会認定医が在籍する数少ない施設で、停留精巣に対する精巣固定術、膀胱尿管逆流症(VUR)に対する逆流防止手術、先天性水腎症に対する腎盂形成術、尿道下裂に対する尿道形成術など年間40件程度の小児泌尿器科手術を行っています。特にVURに対しては、体を切らない膀胱鏡下にヒアルロン酸/デキストラノマー注入手術を積極的に行っています。

腎移植は、末期腎不全患者さんに対して行う透析療法と並ぶ腎代替療法の一つですが、生活の質を維持し向上が期待できるという点で、透析療法より優れた方法です。 腎移植は、亡くなった方から腎臓の提供を受けて緊急手術として行う献腎移植と、健康な親族から腎臓の提供を受けて予定手術として行う生体腎移植の2種類に大きく分けられます。 献腎移植では、当院のような腎移植認定施設を介し日本臓器移植ネットワークに登録後、適合提供者(ドナー)が出現するのを待機します。当院も含め日本では深刻なドナー不足により、成人における平均待機期間は約14年超となっているため、生体腎移植が多く行われています。 生体腎移植ドナーでは、親族であること、腎臓提供した後も生涯にわたって腎不全となる可能性が極めて低いこと、適合性に問題がないこと等の生体腎移植ドナー基準を満たす必要があります。また腎移植を受ける側(レシピエント)は感染症や癌などの悪性疾患がなく免疫抑制剤の使用上問題がないこと、免疫抑制剤などの決められた薬剤をきちんと内服できることなどの条件が前提になります。 現在、生体腎移植における腎提供(ドナー)手術のほとんどは、侵襲の少ない鏡視下手術で行われ、あらかじめ腎臓を採取するための下腹部においた5cmの傷を利用し、さらに1㎝程の数カ所の傷を加え手術を行います。腎移植手術は、4-5時間の手術で、下腹部に腎臓を移植します。術後の平均入院期間は、ドナーで6日間、レシピエントで20日間となります。術後は、ドナー、レシピエントともに1つの腎臓で生きて行くことになりますので、腎臓の機能に悪影響を与える肥満、高血圧、糖尿病などの成人病に対する自己管理、レシピエントでは免疫抑制剤を使用するため感染症への注意が必要になります。レシピエントは移植した腎臓が機能する限り、量は減るものの免疫抑制剤の内服継続が必要になるため、安定期に入っても1-2か月に1回の定期受診を行います(ドナーでは年1回程度)。 当院では、開院から2023年3月末までに292件の腎移植手術を経験してきました。リスクの高い血液型不適合腎移植や小児の腎移植も積極的に行っていますが、移植腎の生着率(移植腎が機能している確率)は10年で約90%と良好な成績を得ています。当院で腎移植を受けられた患者さんの手術時年齢は、下は5歳から、上は73歳となっています。

主な検査・設備機器

膀胱鏡検査は、膀胱の内部を直接観察する検査です。検査では、膀胱鏡を尿道から挿入し、膀胱の壁や尿道を詳しく調べます。これにより、腫瘍、結石、炎症などの異常を発見できます。検査前に局所麻酔を使用し、不快感を軽減します。検査時間は大体15~30分です。男性は尿道長が長く不快感が女性より強いため軟性膀胱鏡などを使うことがあります(検査の内容によって使用できない可能性もあります)。検査後、軽い痛みや刺激を感じることがありますが、これは通常、短時間で治まります。

超音波エコー検査は、体内の組織の映像を得るための無痛検査です。泌尿器科領域では、腎臓、膀胱、前立腺、精巣などを調べます。患者さんはベッドに横になり、検査プローブを皮膚に押し当てます。超音波は体内に深く浸透し、映像がモニターに表示されます。この検査で腫瘍、結石、他の異常を発見できます。検査時間は大体5分程度で、特別な準備や後処理は不要です。

行性尿路造影は、腎臓や尿路の疾患を診断するためのX線検査です。この検査では、特殊な染料(造影剤)を膀胱から尿路、腎臓へ注入し、X線画像を撮ります。造影剤が尿路系を流れることで、結石、腫瘍、奇形などの異常が明らかになります。検査は大体30分~1時間かかります。局所麻酔が用いられることもあり、若干の不快感があるかもしれませんが、通常は大きな痛みはありません。検査後は、軽い運動を避け、水分を多く摂ることが推奨されます。検査の状況によっては、軽く眠くなるような薬剤を使うことがあり、その場合はご本人が運転して帰ることができないので、ご家族の運転や公共の交通機関での来院をお願いすることがあります。

その他、採血やCT・MRI・骨シンチなど病院全体で一般的に行われる検査も併せ患者さん毎に必要時な検査を組ませていただきます。

施設認定

診療実績

前立腺癌(疑い病名含む)
わが国でも症例が急増しています。

新患者数(年間) 224名
ロボット支援前立腺全摘術 54例


膀胱癌(疑い病名含む)
血尿を初発とする尿路上皮癌の中で最も頻度の高い疾患です。

新患者数(年間) 148名
TUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 138例


腎細胞癌(疑い病名含む)
検診で発見される早期の癌が多くなっています。

新患者数(年間) 141名
腹腔鏡下腎摘除術 10例
開腹腎摘除術 2例
ロボット支援腎部分切除術 16例


副腎腫瘍
血尿を初発とする尿路上皮癌の中で最も頻度の高い疾患です。

腹腔鏡下副腎摘除術 4例
ロボット支援副腎摘除 2例

※2022年より、腹腔鏡下手術からロボット支援手術へ移行



精巣(睾丸)癌
まれな疾患ですが20~30代を中心とした若年層に多くみられます。
肺、リンパ節などに転移があっても集学的治療により完治を目指します。

高位精巣摘除術 9例


腎盂尿管癌

腹腔鏡下腎尿管全摘除術 9例


腎移植
当院は現在、横浜市内唯一の腎移植施設です。
2000年の病院開設時より2023年3月まで生体腎移植254例、献腎移植を38例、
計292例の腎移植を行ってきました。

関連情報

カテーテルを使用して排尿している患者さんの相談を受けています。  カテーテルおよび自己導尿の導入後は近医泌尿器科クリニックを紹介させていただいております。 病診連携のため、当院での定期的なカテーテル交換や自己導尿の指導は行っておりません。

脳脊髄疾患・下腹部手術等の後遺症としての排尿障害を治療します。 当院は排尿障害を専門とする泌尿器科医師不在のため、関連病院などを紹介させていただいております。

患者さんのQOL(生活の質)向上をめざしてオーダーメイド医療を心がけています。 抗凝固剤を内服しながらでも治療可能なバイポーラー電気メスを用いた前立腺蒸散術やレーザー蒸散術(CVP)を施行しております。患者さん毎に治療選択肢を提示させていただきます。 大学病院の特性上、悪性腫瘍の方を優先させていただいておりますので、長期間お待ちいただくことや、近隣施設を紹介させていただくことがあります。

停留精巣、陰嚢水腫、膀胱尿管逆流症(VUR)、水腎症、尿道下裂、尿管瘤などの先天性泌尿器疾患や排尿異常を対象に治療を行っています。小児泌尿器科外来は毎週月曜日午後と火曜日に、小児泌尿器科手術は毎週木曜日または金曜日に行っています