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大学院生 村上優貴さんの論文が
JACS Auに掲載!

2026.02.20
  • TOPICS
  • 学生の活躍
  • 研究

細胞膜透過性を考慮したPROTACのリンカー設計AIを開発

生命医科学研究科 博士後期課程2年(生命情報科学研究室)の村上 優貴さんらの研究グループは、細胞膜透過性を加味したPROTACリンカー設計AIを開発しました。その研究成果が「JACS Au」に掲載されました。
筆頭著者
生命医科学研究科 博士後期課程2年
生命情報科学研究室
村上優貴むらかみ ゆうきさん

指導教員
生命医科学研究科
生命情報科学研究室
寺山 慧准教授

論文タイトル
Data-Driven Design of PROTAC Linkers to Improve PROTAC Cell Membrane Permeability
(日本語訳:データ駆動型アプローチによる細胞膜透過性向上を目指したPROTACのリンカー設計)

掲載雑誌
JACS Au
https://doi.org/10.1021/jacsau.6c00033
今回の研究内容について村上さんに解説していただきました。
本研究では、細胞膜透過性*1を考慮したPROTAC(Proteolysis targeting chimera)*2のリンカー設計を可能とするリンカー生成AI(PROTAC-TS)を開発しました。タンパク質分解誘導剤として注目されているPROTACは、2つのリガンドとそれらを繋ぐリンカーから構成されるため、一般的な低分子阻害剤と比べて分子量が大きく、細胞膜透過性が低い傾向にあります。細胞膜透過性を含むPROTACの物理化学的特性は、リンカーの違いにより変化することが知られており、リガンドの組み合わせごとにリンカーを最適化する必要があります。そこで本研究では、生命情報科学研究室で開発している分子設計AI ChemTSv2*3を基に、細胞膜透過性を考慮したPROTACのリンカー設計を可能とするPROTAC-TSを開発しました(図1)。はじめに、PROTAC向けの細胞膜透過性予測モデルを構築しました。次に、構築した予測モデルに基づいて細胞膜透過性を考慮しながらPROTACのリンカーを設計可能な枠組みを構築しました。PROTAC-TSを用いてリンカーを設計した結果、細胞膜透過性の予測値が高いPROTACのリンカーを設計できることを確認しました。さらに、設計した複数のPROTACについて、理化学研究所の先生方と協力して実験により細胞膜透過性を評価し、PROTAC-TSの有用性を示しました。PROTAC-TSは高いバイオアベイラビリティを有するPROTACの設計を目指す上で、実験者の見落としを減らし、新たな設計指針を提供する有用な手法となる可能性があります。
図1 本研究で開発したPROTACリンカー設計手法の概要
村上 優貴さんのコメント
研究の成果を論文としてまとめ、学術誌に掲載することができ、大変嬉しく思います。本研究は、研究室に所属した当初より取り組みたいと考え、自ら提案して進めてきたものです。本研究の遂行にあたっては、課題探索から研究テーマの立案、手法の構築および検討、論文執筆に至るまで、多くの困難に直面しましたが、周囲の皆様の温かいご支援とご助言により、論文としてまとめることができました。本間光貴チームリーダーをはじめとする理化学研究所の皆様、国立医薬品食品衛生研究所の出水庸介先生、ならびに寺山先生と生命情報科学研究室の皆様に心より感謝申し上げます。今後も自己研鑽に努め、本研究のさらなる発展に貢献できるよう精進してまいります。


指導教員 寺山 慧准教授のコメント
村上さん、論文掲載おめでとうございます!本研究は、村上さんが修士課程入学前に着想していた計算に基づくPROTACリンカー設計を実現したものです。当時教員の私は容易ではないと考え、修士課程では別の研究#を進めてもらいましたが、博士課程進学後、持ち前の探究心と粘り強い試行錯誤により素晴らしい成果として世に出すことができました。とはいえ、PROTAC設計にはまだまだ課題が残されており、村上さん自身もいろいろな構想を持っているので、さらなる有用な手法が生まれてくるものと期待しています。また、本研究でも理化学研究所の本間先生、国立医薬品食品衛生研究所の出水先生をはじめ多数の共同研究者の皆様にお世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。

#こちらで紹介しています。
国立医薬品食品衛生研究所との共同研究により、抗菌ペプチド設計AIの開発に成功
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2023/20230824murakamiyuuki.html
(用語説明)
*1 細胞膜透過性:化合物が細胞膜を通過する能力。細胞膜透過性の低さは、バイオアベイラビリティの低下や前臨床試験や臨床試験の失敗リスク増大につながることから、細胞膜透過性の向上は創薬において重要な課題である。

*2 PROTAC:標的タンパク質の分解を誘導する化合物の一つ。PROTACは、標的タンパク質に結合するリガンド、E3ユビキチンリガーゼに結合するリガンド、およびそれらを連結するリンカーから構成される。標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼを近接させることで、標的タンパク質のユビキチン化を促進し、プロテアソーム依存的な分解を誘導する。

*3 ChemTSv2:分子言語モデルによる逐次的分子生成と強化学習に基づく探索アルゴリズムを組み合わせた分子設計手法(Ishida S. et al., WIREs Comput. Mol. Sci., 13, e1680, 2023)。最近では、より柔軟で実用的な分子設計を志向し、様々な構造変換ルールや大規模言語モデルを用いた分子変換を実装したChemTSv3(Fujii S. et al., Preprint at https://doi.org/10.26434/chemrxiv-2025-kdvrt, 2025)も公開されている。
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