令和６年度　横浜市立大学卒業式　　学長式辞

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
また、これまで皆さんを支えてこられたご家族の皆様にも、心よりお慶び申し上げます。
本日、横浜市の山中市長をはじめ、ご来賓の皆様にご臨席いただき、この場で卒業生の門出を祝うことができることを、大変嬉しく思います。

皆さんが過ごされた学生生活を振り返りますと、特に学部生の皆さんにおかれましては、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの制約を受けたことと思います。
式典の中止や厳しい感染対策のもと、授業・課外活動・国際交流など、多くのことが当初の想像とは異なる形になりました。
しかし、そうした困難を乗り越えた皆さんが、今日、卒業の日を迎えられたことを、私は心から誇りに思います。

国際教養学部・国際商学部・理学部・データサイエンス学部を卒業する皆さん、
皆さんは、大学での学びを通じて、幅広い教養や専門知識、スキルを身につけ、研究への探究心を深めてきました。
また、データを正しく読み解き、活用する力も養われました。情報があふれる現代において、正しい情報を見極め、適切に分析する力はとても重要です。
卒業後も、新たな経験を積みながら学び続け、挑戦を重ね、大きく成長していかれることを願っています。

医学部を卒業する皆さん、
皆さんは、コロナ禍という未曾有の事態をリアルタイムで経験し、医師や看護師としての責任の重さを実感されたことでしょう。
そして、将来、新たな感染症が社会を脅かした際には、皆さん自身が最前線で市民の命を守る立場となります。
感染症に限らず、日々の医療現場では患者さんの命と向き合い、その方にとっての最善の治療を、模索し続けることが求められます。
同時に、生命の尊さや素晴らしさを改めて実感し、患者さんの回復や命の誕生に立ち会うことに、大きな喜びを感じることもあるでしょう。
皆さんが、信頼される医療人として成長し活躍されることを、心から期待しています。

そして大学院を修了される皆さん、
皆さんは研究を通じて、高度な専門性を磨いてきました。
修了後は、その専門性を活かしつつ、固定観念にとらわれない自由な発想で、未来を切り拓いてください。
また、研究者としての道を進まれる皆さんには、社会に革新をもたらすような、創造的な研究を期待しています。
皆さんの研究成果は、「研究大学」を目指す本学にとって、そして横浜、日本にとって、大きな誇りとなるものです。

ここで、未来を担う皆さんにお伝えしたいメッセージがあります。
それは、80年近く前に、本学で教鞭をとり、商学部長を務めた先生のものです。

「人間の生活は、まず先人に育てられ、教育、訓練され、ついで後人を育てることの無限の連続である。」

さらに、こうも述べられています。

「教育されて先人から受け継いだものを、自らの創意工夫によって一段と進歩充実せしめて生産性の向上に役立て、これを後人に受け継がせる。この連続が、我々の生活の永遠の進歩 発展を約束する。」

つまり、皆さんが大学で学んだこと、そして今後社会に出て学ぶことを活かし、将来はぜひ、後輩や次世代の人々に、その知識や経験を伝えていってほしいのです。これが、日本の発展を支える力になります。

これを残されたのは、森泰吉郎先生です。皆さんもご存知かもしれませんが、森ビルや森トラストの創業者です。先生は横浜市立大学を退職後、経営の道に専念されましたが、教育への情熱を持ち続けていました。その結果、二つの会社は日本を代表する企業へと成長しました。今の言葉で表せば、日本で最も成功した大学発ベンチャー企業の創始者と言えるでしょう。

さて、本学は、2028年に創立100周年を迎えます。
この歴史を振り返るとともに、さらなる発展に向けて、卒業生を含む多くの方々の御協力をいただきながら、教育・研究に関するさまざまなプロジェクトを推進しています。

特に令和７年１月、本学は全国約800大学の中から選ばれた25大学のひとつとして、国から「地域中核・特色ある研究大学」に指定されました。
これは、南関東を代表する大学として、今後も研究の先頭に立ち、日本社会に貢献していく責務を担っていることを意味します。

卒業生の皆さんは、この伝統ある大学の「大切な一員」です。
私たちは、いつまでも皆さんを応援しています。
そして、皆さんがこれから直面するさまざまな困難を乗り越え、横浜、そして世界を舞台に活躍されることを願っています。

最後の言葉となりますが、卒業生の皆さんが、これからの人生を輝かしいものにし、社会で大いに活躍されることを心より祈念し、私の式辞といたします。