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データサイエンス研究科 佐藤彰洋教授が主導して開発をすすめたメッシュ統計の国際規格(ISO 24108-1)が発行されました

2025.12.25
  • TOPICS
  • 研究
  • データサイエンス学部

日本で開発したメッシュ統計の規格が世界で初めて国際規格として発行されました

横浜市立大学大学院データサイエンス研究科の佐藤彰洋教授がプロジェクトリーダーとして日本産業標準調査会(JISC)提案として開発をすすめてきた、メッシュ統計*1の国際規格 ISO 24108-1 Grid square statistics and their applications-- Part 1: Fundamental principle of grid square statistics(メッシュ統計とその応用—パート1:メッシュ統計の基本原理) が、2025年10月20日(月)に発行されました。
また、2025年12月14日(日) に金沢工業大学で開催された、第16回横幹連合コンファレンスの特別企画1「国際標準化とアカデミアとの連携~日本がリードした基本規格の国際標準化~」にて、「(JIS)メッシュ統計の国際標準化の取り組み—ISO 24108シリーズ開発のこれまでとこれから—」の特別講演を行い、ISO24108-1の開発過程、概要について講演しました。
背景
メッシュ統計は、各段に細かい空間上に定義される一意に特定可能な数列により定義される矩形くけい領域を集計単位として作成される空間統計の一形態であり、我が国では50年以上の利用実績がある世界的にも優れた統計作成方法です。
我が国では1960年代に総理府統計局、建設省国土地理院、総理府国土庁においてその開発が始まり、その集計単位であるグリッドは1976年に日本工業規格(現在の日本産業規格)地域メッシュコード(JIS X 0410)として国家標準として制定されました。
メッシュ統計は我が国の地域メッシュ統計のほか欧州においても欧州グリッドとして利用され、近年はオーストラリア、ニュージーランドにおいて公的統計として作成、公表されるようになっています。
しかしながら、各国のメッシュ統計は独自の集計単位形態を有し、メッシュ統計の作成方法、名称が標準化されておらず、メッシュ統計間のデータ流通やデータ品質について交換がされることは容易ではありませんでした。世界的に空間情報システム(GIS)が普及し、GPSの普及により位置情報付きデータが大量に生成され、利用できるデータ時代に入り、世界的なメッシュ統計の流通と規格の相互干渉の解決は課題となっていました。この課題に対応するため、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「グローバル・システムの持続可能性評価基盤に関する研究」(2015年10月~2020年3月)において佐藤彰洋教授は日本産業規格地域メッシュコード(JIS X 0410)の世界拡張である世界メッシュコードに関する研究を行ってきました。
メッシュ統計の国際規格 ISO 24108-1
メッシュ統計は、場所と紐づけされた文字列で表される矩形領域を使って統計を作成する方法であり、空間統計の一形態です。メッシュ統計の作成には統計を作成するために使用する空間情報に応じて異なる作成方法があります。また、異なる矩形領域を使って作成されたメッシュ統計間は大きさや形状が異なることから近似的に補正する方法を用いる必要があります。
メッシュ統計を作成する方法、メッシュ統計を変換する方法について、世界的に推奨されるグリッドとして我が国の地域メッシュコードと欧州グリッドなど他国で用いられるグリッド規格を対等に位置づけるとともに、日本産業規格 JIS X 0410(地域メッシュコード)の全世界拡張である世界メッシュコードをメッシュ統計作成時に推奨されるグリッド規格として取り扱っています。世界メッシュコードは地域メッシュコードを全世界に拡張した上位互換コード体系として、佐藤彰洋教授らにより提唱された独自のコード体系[1]です。
図1:世界メッシュコードの体系の概念図
特別講演「(JIS)メッシュ統計の国際標準化の取り組み—ISO 24108シリーズ開発のこれまでとこれから—」の概要

日本産業規格地域メッシュコード(JIS X0410)を集計単位とした地域メッシュ統計と、その全世界拡張である世界メッシュコードを集計単位とする世界メッシュ統計について紹介している。国際標準化機構(International Organization for Standardization; ISO)における国際標準化活動は、各国代表からなる国際委員会による審議を経て行われるルールとなっている。
本講演(図1参照)では、日本の国家規格である日本産業規格地域メッシュコード(JIS X 0410)に基づき作成される地域メッシュ統計について紹介している。次に、メッシュ統計の国際規格ISO 24108シリーズ「メッシュ統計とその応用」の策定の経緯、ISO 24108-1「メッシュ統計とその応用—パート1:メッシュ統計の基本原理」の開発工程、概要について述べる。さらに、全世界でメッシュ統計を作成可能な地域メッシュコードの全世界拡張である世界メッシュコードと、世界メッシュ統計について説明した。今後予定している、ISO 24108シリーズの開発計画について説明している。 



図1:第16回横幹連合コンファレンスにおける講演の様子

佐藤教授のコメント
メッシュ統計は我が国で1960年代から開発が行われ、1976年1月1日に日本産業規格(当時は日本工業規格)地域メッシュコード(現在、JIS X 0410)として我が国の国家規格として発行してから、今年は50年の記念すべき年です。異なる組織が、異なる方法で収集した位置情報付きデータをもとにメッシュ統計をJISの地域メッシュコードを使い集計することで、同じ形式で連結分析、利活用ができる体系となっています。
今回、日本からの提案として、ISO 24108-1 Grid square statistics — Part 1: Fundamental principle of grid square statisticsが発行となりました。地域メッシュ統計を含む各国のグリッド統計を対等に位置づけ世界的なメッシュ統計の流通が今後可能となると期待されます。
国内外へ向けメッシュ統計について情報を発信し、世界メッシュコードを普及していく目的で、一般社団法人世界メッシュ研究所を設立し、社会実装のための活動も展開しています。我が国の先人たちが生み出し、育ててきた優れた技術であるメッシュ統計を世界に発信するとともに、より多くの世界の人々が世界メッシュ統計を利活用できるようメッシュ統計の利活用の活動へご参加、ご協力いただけることをお願いします。
用語説明
*1 メッシュ統計:メッシュと呼ばれる緯度と経度とで囲まれる矩形区画(日本国内では矩形区画は日本産業規格JIS X 0410地域メッシュコードとして定義されている)を、データの持つ位置情報をもとにして集計することで作成した極めて細かい区画に対する統計。匿名性、再集計性や選択性、計算可能性など、メッシュ統計データの高い連結結合性を有する。

参考文献
[1] Aki-Hiro Sato, Shoki Nishimura, Tsuyoshi Namiki, Naoki Makita, Hiroe Tsubaki, World Grid Square Data Reference Framework and its Potential Applications, 2018 IEEE 42nd Annual Computer Software and Applications Conference (COMPSAC) (2018) Pages: 398-409, DOI: 10.1109/COMPSAC.2018.00062
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