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【論文掲載】シリンジを用いたポンピング手技において コンタミネーションを生じうる可能性を確認

2021.08.11
  • TOPICS
  • 医療

シリンジを用いたポンピング手技において、コンタミネーションを生じうる可能性について論文掲載されました。

横浜市立大学大学院生命医科学研究科の川上裕客員研究員、日本医科大学武蔵小杉病院救命救急科の田上隆准教授らの研究グループは、シリンジを用いたポンピング手技は、シリンジ内の薬液において手指の細菌によるコンタミネーションを生じうる事を確認しました。

研究内容

救急医療や周術期医療を中心として、プラスチック製シリンジを用いて薬剤を投与したり輸液や輸血を急速投与するためのポンピング手技が頻繁に行われています。その過程において、緊急性の高い切迫した状況でこそポンピング手技が必要とされることもあって、医療従事者が日頃から手指消毒などの感染対策に注意深くあったとしても、そうした状況では手指消毒がややおろそかになる可能性があります。 また、こうした切迫状況に陥った患者においては、静脈ラインを介したカテーテル感染が重症化する可能性が高く、カテーテル感染の予防が極めて重要な課題となっています。一方、プラスチック製のディスポーザブルシリンジは単純な設計をしており、シリンジ内の薬液を押し出すための押し子と、シリンジの内腔の内壁との接触を介して手指の細菌がシリンジ内の薬液に侵入してコンタミネーションを起こす可能性が想像されていました。しかし、これまでこの潜在的可能性を細菌学的に証明する研究は行われていませんでした。 そこで、筆者らは大腸菌を用いてポンピング手技によってシリンジ内の薬液がコンタミネーションを生じるかどうかを細菌学的に検証しました。 その結果、押し子やシリンジの内壁、ならびに押し子を握るグローブに人工的に付着させた大腸菌が薬液内に微量ながらも侵入することがわかりました。さらに、予めエタノールで消毒した手指ではこのコンタミネーションが生じないことがわかりました。 以上の結果から、ポンピング手技自体がシリンジ内の薬液のコンタミネーションを生じうることが示唆されると同時に、このコンタミネーションは事前の手指消毒によって予防できることが示されました。

今後の展開

ポンピング手技の潜在的なカテーテル感染の危険因子のひとつになりうるとともに、手指消毒が非常に有効であることを改めて医療従事者に啓発するものとなりました。 現在はCOVID-19によるパンデミックの時代であり、感染に対する意識がより重要視されている時代でもあります。この論文の教訓が多くの医療関係者に伝播され、感染を防ぐためにできる取り組みが徹底されることでカテーテル感染のリスクが減少することが期待されます。さらに、カテーテル感染がより生じにくい医療器具の開発や、より簡便かつ効果的な消毒方法の追求につながることが期待されます。

論文情報

Pumping infusions with a syringe may cause contamination of the fluid in the syringe Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-021-94740-1

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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