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新型コロナ変異株に対するワクチン接種者の約9割が 流行中の変異株に対する中和抗体を保有することが明らかに

2021.05.12
  • プレスリリース
  • 研究

新型コロナ変異株に対するワクチン接種者の約9割が 流行中の変異株に対する中和抗体を保有することが明らかに

〜「hiVNTシステム 1 」を用いた複数の変異株に対する中和抗体の測定〜


横浜市立大学 学術院医学群 臨床統計学 山中 竹春 教授、同微生物学 梁 明秀 教授、 宮川 敬 准教授、附属病院 感染制御部 加藤 英明 部長らの研究チームは、現在接種が進められている新型コロナウイルスワクチンが、従来株のほか、様々な変異株に対しても中和抗体の産生を誘導し、液性免疫の観点から効果が期待できることを明らかにしました。現在、日本でワクチンの接種が進められているところですが、接種をされる方々にとっての重要な基礎データとなります。
本研究成果は、プレプリントサーバーのmedRxiv 2に投稿し公開されました。

※本研究成果は、現在Journal of Molecular Cell Biology誌に掲載されています。
研究成果のポイント

  •  日本人のワクチン接種者111名(未感染105名、既感染6名)を対象に、ファイザー製ワクチンの有効性について、中和抗体(液性免疫)の保有率という観点から調査。
  •  独自の迅速抗体測定システム「hiVNT新型コロナ変異株パネル」を活用して、従来株および変異株7種の計8株に対する中和抗体を測定。
  • 未感染者でワクチン2回接種した人のうち、99%の人が従来株に対して中和抗体を保有していた。流行中のN501Y変異を有する3つのウイルス株(英国、南アフリカ、ブラジルで初めて確認された株)に対しても、90~94%の人が中和抗体を有していた。
  • 懸念されているインド由来の株に対しても中和抗体陽性率が低下するような傾向は見られなかった。
  • 計8株すべてに中和抗体陽性であった人は全体の約9割(93/105; 89%)であった。
  • 中和抗体の上がり方については個人差が見られた。特に1回接種のみでは、変異株に対して中和抗体が産生されない人が一定数存在した。

研究の背景と意義

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業要請を余儀なくされる中、打開策として全国的にワクチン接種が進められていますが、最近では、変異株の種類が多様化し、その感染者数が急激に拡大傾向にあります。現在接種が進められているワクチンは初期の従来株に対する有効性は確立されていますが、その後登場した変異株に対して、特に日本人における中和抗体に関する情報は十分ではありませんでした。

今後の展開

変異株のさらなる出現も予想されるため、新たな変異株が登場した際に、変異株に対する中和抗体保有の状況を集団レベルですみやかに調べ、既存のワクチンの有効性を評価できる手法が求められます。今回開発した「hiVNT新型コロナ変異株パネル」のような複数の変異株を取り揃えて(パネル化)、それらに対する中和抗体を一括して短時間で評価し、集団レベルならびに個人レベルにおける免疫能の獲得の詳細を明らかにすることは、ワクチン普及後の社会活動を回復させる後押しになると期待されます。本研究で使用した中和抗体の迅速測定システム「hiVNT」を社会実装につなげられるよう、さらなるデータの蓄積を進める予定です。

掲載論文

Rapid detection of neutralizing antibodies to SARS-CoV-2 variants in post-vaccination sera
Kei Miyakawa, Sundararaj Stanleyraj Jeremiah, Hideaki Kato, Yutaro Yamaoka, Hirofumi Go, Takeharu Yamanaka, Akihide Ryo
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.06.21256788
※お断り:この論文は審査前にプレプリントサーバーへ登録、公開されたものです。今後、学術雑誌での審査により論文内容が修正される可能性があります。

※本研究成果は、現在Journal of Molecular Cell Biology誌に掲載されています。
doi : https://doi.org/10.1093/jmcb/mjab050

参考

1 hiVNT(hiBiT-tagged Virus-like particle Neutralizing antibody Test)システム
令和2年7月に本学研究チームが開発した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる手法。感染性を有する生ウイルスやゲノムを含んだ擬似ウイルスを使用しないため、危険な操作が不要で、3時間以内に中和抗体の量を測定することが可能(J Mol Cell Biol. 2021 Mar 10;12(12):987-990)。
2 medRxiv
コールド・スプリング・ハーバー研究所と医学系雑誌出版社BMJ、米・イエール大学の3機関共同運営による医学分野のプレプリントサービスで、査読前の医学分野の論文を受付し、新しい知見の迅速な共有やフィードバックを受けるためのプラットフォームを無料で提供する。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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