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高血圧症などの疾患解明を目指す国際コンソーシアム(ICBP-GWAS)に参画している、横浜市立大学大学院医学研究科 梅村敏教授らの研究グループが、全世界26万人以上を対象とした国際共同研究において、高血圧症に関連する遺伝子を解明!

2011.09.13
  • プレスリリース
  • 研究
横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学講座 梅村敏教授(附属病院長)らの研究グループは、愛媛大学田原康玄講師、三木哲郎教授、大阪大学荻原俊男名誉教授、滋賀医科大学上島弘嗣名誉教授、東北大学大久保孝義准教授、国立循環器病センター岩井直温部長らと組織する研究グループとして、全世界10億人以上の人が罹患している高血圧症(脳卒中や心臓病を引き起こすリスクファクター)を解決するために設立された、The International Consortium for Blood Pressure Genome-Wide Association Studies (ICBP-GWAS)という国際共同研究組織に参画し、世界規模でのゲノム解析を行うことにより、高血圧症の成因に関与する遺伝子を解明しました。これら遺伝子とその蛋白を解析することにより、新たな創薬や治療の可能性が広がると考えられます。

※本研究は、2011年9月に発刊される英国科学雑誌『Nature』に掲載されます。

研究の背景

高血圧症は生活習慣病のうち最多の疾患として日本でも4000万人、世界全体では10億人以上の人が罹患しています。高血圧症は血圧値140/90mmHgと定義され、日本の死亡原因の第2,3位である心疾患や、脳卒中などの原因となる動脈硬化症の最大の危険因子です。この高血圧症の約90%が原因不明の高血圧症:本態性高血圧症であり、その成因は3〜4割の遺伝因子と6〜7割の環境因子が関与していると考えられています。環境因子は食塩摂取過多、肥満、運動不足、飲酒過多等が挙げられますが、ある程度の生活習慣改善でコントロールしうる因子です。一方、遺伝因子が明らかになると、いわゆるテーラーメイド医療として予防法・治療法の選択を個々人の遺伝子に合わせて行うことができる可能性が考えられてきました。
2009年全ゲノム領域の約250万個の遺伝子多型と血圧との関係を約2万人の欧米人サンプルを用い検討した結果、全染色体の13領域が血圧と関係することが複数報告されました(Nature genetics,2009)。

研究の内容

今回は20万人以上の欧米人サンプルと約3万人の東アジア人、約2.4万人の南アジア人、約2万人のアフリカ人のサンプルを用い、上記研究の遺伝子を含め全ゲノムの250万人SNP(一塩基多型)と血圧との関係が検討されました。これは全世界の200を超える研究機関(約300人以上の共著者)によるゲノム研究上最大の研究です。
その結果、ATP2B1を含め、欧米人で28種、東アジアで9種、南アジア人で6種の遺伝子が血圧と関連することが明らかとなりました。これらの遺伝子は水・電解質バランスや腎機能に関連するものなどであり、このうちいくつかは本研究で初めて高血圧との関連が見出された遺伝子です。一連の研究結果は、本態性高血圧の病因解明と新たな治療ターゲットの導出、個別化医療・予防の可能性を大きく広げる成果です。
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