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先端医科学研究センターの共同研究グループが、 前立腺癌の再発を予測できる遺伝子を発見!

2009.10.19
  • プレスリリース
  • 研究

aPKCλ/ιとIL-6とのコラボレーション

☆研究の概要

中高年男性に多く発生する前立腺癌は急速に増加の傾向にあります。早期の前立腺癌の治療成績は良好ですが、再燃性の前立腺癌へと変化すると予後不良であり、その診断と治療法の開発が急務となっています。
横浜市立大学先端医科学研究センターの共同研究グループは、細胞極性関連遺伝子であるatypical Protein Kinase C λ/ι (aPKCλ/ι)に着目した研究から、aPKCλ/ιの発現量が多い前立腺癌組織で再発の危険性が高まることを見いだしました。更に、前立腺癌細胞株を用いた解析から、aPKCλ/ιがサイトカイン(細胞間情報伝達分子)であるインターロイキン6(IL-6)の発現と分泌の増加を介して前立腺癌の増殖を促進させていることを明らかとしました(図)。
IL-6が癌の進展と関わるとの報告も踏まえると、今回の研究成果は、aPKCλ/ιとIL-6との両者に着目することにより、前立腺癌の進展と予後の診断精度が大きく高まる可能性を示唆しています。更に、両者が亢進したケースではIL-6を治療標的とした治療が期待できることをも示唆しています。このような可能性の更なる検証が今後の課題です。

☆研究成果のポイント

1.aPKCλ/ιの発現量が多い前立腺癌組織で再発の危険性が高まることを確認

2.aPKCλ/ιの発現量が前立腺癌の再発を予測できる因子であることを確認

3.前立腺癌細胞でのaPKCλ/ιの発現量の増加はIL-6の産生を通して癌を進展させることを確認

図 前立腺癌細胞内でのaPKCの機能模式図

※本研究成果は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS, September 22, 2009, 106(38):16369-74)に掲載されました。
※本研究成果は、先端医科学研究センターの研究開発プロジェクト(窪田吉信教授(泌尿器病態学)、大野茂男教授(分子細胞生物学))の研究成果の一つです。特に、本研究では、石黒斉客員准教授(泌尿器病態学)、秋本和憲助教(分子細胞生物学)、長嶋洋治准教授(分子病理学)、上村博司准教授(泌尿器病態学)らの若手研究グループが大きく貢献しました。
※本研究は、文部科学省科学研究費により行われました。
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