社会人大学院生 後藤耀さんの論文が、Accounting & Financeに掲載!
2025.06.10
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人事・文化・結果・行動に関するマネジメント・コントロールが従業員のモチベーションに与える影響を解明
国際マネジメント研究科 博士後期課程3年の後藤耀さんと国際商学部の黒木淳教授との共著論文が、オーストラリア・ニュージーランド会計ファイナンス協会(AFAANZ)が刊行するジャーナル「Accounting & Finance」に掲載されました。

筆頭著者
国際マネジメント研究科 博士後期課程3年
後藤 耀さん
論文タイトル
Management Control and Employee Motivation in Local Governments and For-Profit Firms: A Differentiated Replication Study
(日本語訳:地方公共団体および民間企業におけるマネジメント・コントロールと従業員のモチベーション:差別化された再現研究)
掲載雑誌
Accounting & Finance
DOI:https://doi.org/10.1111/ACFI.70044
国際マネジメント研究科 博士後期課程3年
後藤 耀さん
論文タイトル
Management Control and Employee Motivation in Local Governments and For-Profit Firms: A Differentiated Replication Study
(日本語訳:地方公共団体および民間企業におけるマネジメント・コントロールと従業員のモチベーション:差別化された再現研究)
掲載雑誌
Accounting & Finance
DOI:https://doi.org/10.1111/ACFI.70044
今回の研究内容について後藤さんに解説していただきました。
本研究は、オランダの先行研究(van der Kolk et al. 2019)を参考として、「地方公共団体および民間企業における人事・文化・結果・行動に関する4つのタイプのマネジメント・コントロール(以下、「MC」と表記)*1が、従業員のモチベーションに与える影響」を明らかにすることを目的としました。
本研究は、日本の地方公共団体と民間企業を対象に、MCの状況や回答者の内発的モチベーション*2や外発的モチベーション*3についてアンケート調査[1]を実施しました。調査の結果、677の自治体と1,664の民間企業から回答を得ました。
回答を分析した結果、主に3つの発見がありました。第1に、地方公共団体と民間企業の両組織において、人材の採用、教育(研修)、配置を通じた人事的なコントロールや、従業員の価値観・信念・行動を方向付ける文化的なコントロールが従業員の内発的モチベーションと正の相関があることを明らかにしました。これはオランダにおける調査と同様の結果であり、国が異なる環境下でも人事的あるいは文化的なコントロールは内発的なモチベーションにとって重要であることを示唆しています。
第2に、日本の地方公共団体において、業績指標や成果目標の設定、評価や報酬を通じた結果的なコントロールが、職員の内発的モチベーションと正の相関があることを示しました。これは意外な結果であり、オランダの地方公共団体を対象とした先行研究の結果とは対照的でした。
第3に、民間企業において、従業員の具体的な行動を直接規定・監視する行動的なコントロールが、従業員の内発的モチベーションと正の相関があることがわかりました。
地方公共団体における4つのタイプのMCと内発的モチベーションの関連性に関する結果は、人が内発的なやる気を出すためには『自分で決める』という自律性、周囲との関係性、さらに自分はできるという有能感が大切である、という自己決定理論*4から説明できます。
本研究の結果は、人事的・文化的なコントロールは国が異なる環境下でも内発的なモチベーションに同様の効果を持つことを示唆しています。一方で、結果的・行動的なMCは国や文化、制度の違いによって、従業員のモチベーションに及ぼす影響が異なることを示唆しています。本研究の結果を踏まえれば、従業員の内発的モチベーションを高めるためには、従業員の自律性を促進するという視点で4つのタイプのMCをバランスよく設計することが重要であるといえます。
今後の研究では、組織が4つのタイプのMCをどのような要因で導入しているのか、また4つのタイプのMCが自己決定に関するどの要因に影響しているのかに関してさらに探究した知見を探ることが期待されます。
本研究は、オランダの先行研究(van der Kolk et al. 2019)を参考として、「地方公共団体および民間企業における人事・文化・結果・行動に関する4つのタイプのマネジメント・コントロール(以下、「MC」と表記)*1が、従業員のモチベーションに与える影響」を明らかにすることを目的としました。
本研究は、日本の地方公共団体と民間企業を対象に、MCの状況や回答者の内発的モチベーション*2や外発的モチベーション*3についてアンケート調査[1]を実施しました。調査の結果、677の自治体と1,664の民間企業から回答を得ました。
回答を分析した結果、主に3つの発見がありました。第1に、地方公共団体と民間企業の両組織において、人材の採用、教育(研修)、配置を通じた人事的なコントロールや、従業員の価値観・信念・行動を方向付ける文化的なコントロールが従業員の内発的モチベーションと正の相関があることを明らかにしました。これはオランダにおける調査と同様の結果であり、国が異なる環境下でも人事的あるいは文化的なコントロールは内発的なモチベーションにとって重要であることを示唆しています。
第2に、日本の地方公共団体において、業績指標や成果目標の設定、評価や報酬を通じた結果的なコントロールが、職員の内発的モチベーションと正の相関があることを示しました。これは意外な結果であり、オランダの地方公共団体を対象とした先行研究の結果とは対照的でした。
第3に、民間企業において、従業員の具体的な行動を直接規定・監視する行動的なコントロールが、従業員の内発的モチベーションと正の相関があることがわかりました。
地方公共団体における4つのタイプのMCと内発的モチベーションの関連性に関する結果は、人が内発的なやる気を出すためには『自分で決める』という自律性、周囲との関係性、さらに自分はできるという有能感が大切である、という自己決定理論*4から説明できます。
本研究の結果は、人事的・文化的なコントロールは国が異なる環境下でも内発的なモチベーションに同様の効果を持つことを示唆しています。一方で、結果的・行動的なMCは国や文化、制度の違いによって、従業員のモチベーションに及ぼす影響が異なることを示唆しています。本研究の結果を踏まえれば、従業員の内発的モチベーションを高めるためには、従業員の自律性を促進するという視点で4つのタイプのMCをバランスよく設計することが重要であるといえます。
今後の研究では、組織が4つのタイプのMCをどのような要因で導入しているのか、また4つのタイプのMCが自己決定に関するどの要因に影響しているのかに関してさらに探究した知見を探ることが期待されます。

※本研究の内容は報告者個人の見解に基づくものであり、報告者が所属する組織の公式見解ではありません。
後藤さんのコメント
このたび、自身の研究が国際雑誌に掲載されることになり、大変光栄に思います。最初の学術論文が国際雑誌に採択されたことは、私自身にとっても大きな驚きと喜びであり、今後の励みとなりました。
社会人大学院生という立場で、このような成果を挙げることができましたのは、これまで、ご指導いただきました黒木淳先生や中條祐介先生をはじめ、多くの皆さまのご支援のおかげです。改めまして心より感謝申し上げます。今回の成果を励みに、今後も研究活動に精進してまいりますので、引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします。
指導教員 中條 祐介教授のコメント
後藤さんは、本学国際総合科学部の出身です。現在は、社会人として働きながら大学院生として研究活動を続ける二刀流の大学院生です。
今回掲載の決まった「Accounting & Finance」は、オーストラリア・ニュージーランドの会計・ファイナンスの研究者が中心となって組織されたAFAANZにより刊行されている雑誌です。1961年に創刊された同誌は、豪州のビジネス系大学等の学部長らが組織するABDCによる研究誌の評価において、上から2番目に高い“A”に位置付けられています。
このような高品質な雑誌に掲載されることは、大学院生としては快挙といってよいでしょう。しかも、仕事を抱えながらの研究活動は、困難も多かったことと思います。そのような厳しい研究環境の中での今回の成果は、後藤さんの能力の高さを示すとともに、後に続く大学院生、特に社会人大学院生にとっての範となるものと思います。
今回の論文掲載、おめでとうございました。
後藤さんのコメント
このたび、自身の研究が国際雑誌に掲載されることになり、大変光栄に思います。最初の学術論文が国際雑誌に採択されたことは、私自身にとっても大きな驚きと喜びであり、今後の励みとなりました。
社会人大学院生という立場で、このような成果を挙げることができましたのは、これまで、ご指導いただきました黒木淳先生や中條祐介先生をはじめ、多くの皆さまのご支援のおかげです。改めまして心より感謝申し上げます。今回の成果を励みに、今後も研究活動に精進してまいりますので、引き続きご指導のほどよろしくお願いいたします。
指導教員 中條 祐介教授のコメント
後藤さんは、本学国際総合科学部の出身です。現在は、社会人として働きながら大学院生として研究活動を続ける二刀流の大学院生です。
今回掲載の決まった「Accounting & Finance」は、オーストラリア・ニュージーランドの会計・ファイナンスの研究者が中心となって組織されたAFAANZにより刊行されている雑誌です。1961年に創刊された同誌は、豪州のビジネス系大学等の学部長らが組織するABDCによる研究誌の評価において、上から2番目に高い“A”に位置付けられています。
このような高品質な雑誌に掲載されることは、大学院生としては快挙といってよいでしょう。しかも、仕事を抱えながらの研究活動は、困難も多かったことと思います。そのような厳しい研究環境の中での今回の成果は、後藤さんの能力の高さを示すとともに、後に続く大学院生、特に社会人大学院生にとっての範となるものと思います。
今回の論文掲載、おめでとうございました。
用語説明
*1 マネジメント・コントロール(MC):マネジャーが従業員に対して、組織にとって最も望ましいことを行動するよう促す仕組みのこと。
*2 内発的モチベーション:「仕事そのものが楽しいから仕事をする」というように、ある活動がもたらす本質的な満足感のために取り組むこと。
*3 外発的モチベーション:内発的モチベーションとは対照的に、「お金を得るために仕事をする」など、機能的な理由のために取り組むこと。
*4 自己決定理論(Self-determination theory):アメリカの心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏によって提唱された心理学理論。内発的モチベーションを促進するためには、人間の3つの基本的心理欲求(自律性、有能感、関連性)の充足が特に重要であると提唱している。
参考
[1] MCのアンケート調査項目
*1 マネジメント・コントロール(MC):マネジャーが従業員に対して、組織にとって最も望ましいことを行動するよう促す仕組みのこと。
*2 内発的モチベーション:「仕事そのものが楽しいから仕事をする」というように、ある活動がもたらす本質的な満足感のために取り組むこと。
*3 外発的モチベーション:内発的モチベーションとは対照的に、「お金を得るために仕事をする」など、機能的な理由のために取り組むこと。
*4 自己決定理論(Self-determination theory):アメリカの心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏によって提唱された心理学理論。内発的モチベーションを促進するためには、人間の3つの基本的心理欲求(自律性、有能感、関連性)の充足が特に重要であると提唱している。
参考
[1] MCのアンケート調査項目
