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研究と仕事を両立しながら博士号を取得! 生命ナノシステム科学研究科 卒業生 秋久保一馬さんにインタビュー

2025.01.14
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社会人のための博士後期課程早期修了プログラム

横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科では、一定の研究実績や能力を有する社会人を対象として、最短1年で修了し博士号を取得できる博士後期課程早期修了プログラムがあります。このプログラムを活用して博士号を取得した秋久保 一馬さんに、在学中の研究内容や社会人としての学生生活、現在のご活躍などについてお話を伺いました。
秋久保さんと橘教授
■当プログラムを履修したきっかけを教えてください。

きっかけは、指導教員である橘先生からお誘いをいただいたことでした。橘先生の研究室と私が勤めている会社は長年共同研究をしており、普段から研究内容に関して多くの指導をいただいていました。成長への願望はありましたので、その橘先生に背中を押していただけるなら、と履修を決意しました。その他にも、研究継続性・配置転換の可能性などから社会人博士として進学する機会はあまり多くはないこと、またプライベートの状況によっても左右されるため、短期集中で取り組むことができる本プログラムは、魅力的に感じたことも要因のひとつです。


■在学中の研究テーマについて教えてください。

基板に対して垂直に配向して壁のように成長した構造をもつ、カーボンナノウォール(CNWs)と呼ばれるナノ炭素材料の応用に関して研究を進めました。このCNWsの成長には、化学気相堆積(CVD)法と呼ばれる手法が用いられていますが、成長中にチタンを導入することで、チタンが入ったCNWsを作製することができます。私は、これを高温で加熱すると、CNWsと同じ壁状の構造をもつ二酸化チタンでできたナノウォール材料を作製できることを発見しました。さらに、その二酸化チタンのナノウォール材料は表面積が大きいため、水の電気分解に用いる電極・光触媒として活用できると考え、実際に参照触媒と比較して高い効率を示すことを確認しました。水の電気分解で得られる水素は脱炭素社会の実現に向けた有望なエネルギーであり、その製造方法に関する研究は活発に行われています。


■社会人としての学生生活について教えてください。

大学院の講義や研究室ミーティングはオンラインで行われていたので、職場の上司の許可を得た上で、業務時間中に参加していました。幅広い分野の先生方から最新の研究に関する講義を受けることができたことは、社会人になってからは機会がなかったので新鮮な体験でした。大学院の研究に関する実験は勤務先の社内で主に行っていたため、博士課程の研究とは異なる通常業務もこなしながら、並行して実施していました。通勤時などの隙間時間には論文を読んだり、研究の方向性を考えたりしていましたが、投稿論文や博士論文の執筆はまとまった時間を確保したかったので、土日や有給休暇を利用して取り組んでいました。このように話すと、慌ただしく大変そうに聞こえるかもしれませんが、やはり自分で実験系を構築し、試行錯誤する毎日は非常に楽しかったです。これまで数値計算は取り組んだことがなかったのですが、実験結果の妥当性を数値計算で補完できると考え、実際にプログラムを組んで結果を研究に反映したときは大きな達成感がありました。
■現在のお仕事(研究)や今後の目標などについて教えてください。

CVDやスパッタ(イオン化したガスをターゲットに当てることで、ターゲットに含まれる原子を基板に堆積させる)という技術を使ってCNWsを作製していましたが、これらの技術は一般に基板表面に材料を形成したりコーティングしたりするのに広く使用されています。現在も、これらの手法を用いて、様々な材料を作って性能を評価する研究を行っています。例えばコーティングでは、短時間で高品質なものが形成できることが求められますが、博士課程の研究を通して培った材料作製の経験や表面における化学の知見を活かし、どのようにすれば目的を達成できるかをメカニズムに基づいて考えることができています。このように装置設計から材料の作製プロセス、分析・性能評価まで一貫した研究開発を実践できる研究者になれたことで、進学への挑戦がやはり価値あるものだったと感じています。さらに、数値計算プログラムを組んだ経験から、理論計算や画像解析、機械学習など、研究のさらなる高度化につなげることができていると思います。
今後は博士課程の研究で得た経験を活かして勤務先で活躍できる人材になるとともに、学会などを通して勤務先以外の専門家の方々とも積極的に交流し、自身の成長および社会への貢献に努めていきたいと考えています。


■さいごに

社会人博士制度を利用しようと考えている方には、ぜひ自分の専門分野における実践的な学びが得られる本制度を利用していただきたいと思います。仕事と研究の両立は大変かもしれませんが、仕事と研究の相乗効果で得られる成果は大きいです。私自身、これまで仕事をこなす中で培ってきた計画立案・実行力は、研究を進めるうえで非常に役立ったと感じました。自身の専門分野を深めるだけでなく、新しい分野のスキルを身に付けることで、将来的なキャリアの幅も広がります。挑戦を恐れず、ぜひ一歩踏み出してみてください。
在学生の皆さんには、ぜひ目の前の研究に全力で集中して、課題に向き合っていただきたいと思います。研究の過程では必ず壁にぶつかることがありますが、それを乗り越えたときの達成感は非常に大きなものです。困難に直面したときは、先生方や周囲の仲間たちと積極的にコミュニケーションをとり、課題を一つひとつ丁寧に解決していってください。そのような経験を通じて得た協力する姿勢や問題解決能力は、社会に出た後も非常に役立ちます。大学でも企業でも、実際の社会では様々な背景を持つ人々と協力しながら課題を解決する場面が多くあります。この経験は、きっと皆さんの大きな武器となるでしょう。
研究室にて
今回お話いただいた内容も含め、在学中の生活についての寄稿が「表面と真空 2024年若手部会特集号」に掲載されていますので、併せてご覧ください。
DOI:10.1380/vss.67.506
生命ナノシステム科学研究科
博士後期課程早期修了プログラム(社会人特別選抜C)出願資格

(「2025年度横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 学生募集要項」より抜粋)

□ 入学時までに同一の企業、教育研究機関等に正規職員として勤務し、勤務成績が良好であると直属の上司の推薦を受けた者
□ 入学後も引き続き同一の企業、教育研究機関等に正規の職員としての身分を有する者
□ 本学と共同研究を実施している者
□ 修士の学位を取得後、3 年以上の研究歴を有する者。
□ 査読付き英語論文の要件を満たす者
□ 学会等で口頭発表の実績を有する者
などの出願資格が必要です。詳しくは、こちらをご覧ください。
 
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