YCU Research Portal

YCU Research Portal

戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」

概要

この事業では、学長のリーダーシップのもと、大学の強みとなる研究領域やターゲットを明確化しながら、積極的かつ戦略的に研究費を投入することで研究活動の一層の加速化を図り、大型研究費の獲得や研究成果の早期の社会還元を目指しています。 

第5期 戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」2021~23年度

再生医療

研究テーマ 研究概要 研究者
精巣組織の機能と精子形成を維持できる培養系の開発 動物実験から組織培養(オルガノイドを含む)への移行がこれからの医学研究には重要なテーマになっている。我々は精巣組織片の培養により精子形成を再現することに成功し、この分野の先端的研究をおこなってきた。現在、小児がん患者の精巣組織が世界的に保存されており、ヒト体外精子形成法の開発が喫緊の課題となっている。本研究ではヒト精子形成の培養下での再現を主目標に培養法の改良を行ってゆく。

  
小川 毅彦

医学研究科 
臓器再生医学
工学技術を用いた新しい治療法の開発 生体材料を用いた人工臓器は再生医学の要であり、多くはiPSだが、実用化にはがん化をはじめ様々な困難が指摘されている。一方で血管が閉塞した場合や人工透析を行う際に、人工血管が使用されるが、現在はいずれも人工織布が主体であるため、感染や血栓の問題がある。消化管手術の際に起こる縫合不全の予防にも、手術部位の補強材が有効だが、生体組織由来の補強材は開発されていない。我々は医学工学連携から、細胞に加圧を施すことにより、細胞の重層培養が可能になるだけでなく、伸展強度に優れた細胞シートが、短期間で作製できることを見出した。本技法を用いることにより、生体細胞を材料として人工血管や消化管補強材が合成できると期待される。細胞加圧装置は産学連携による共同開発をすすめるとともに、動物実験で人工血管や消化管の手術材料の有効性の検討を進める。また作製にあたり細胞増殖制御やがん化予防として磁場など物理刺激の有効性を検討する。本事業では磁場などの物理刺激が、なぜがん細胞の増殖を抑制するのかについてのメカニズムを明らかにする。

  
石川 義弘

医学研究科 
循環制御医学
創薬再生グライコプロテオミクス基盤技術の開発とその応用 細胞や血液中のタンパク質の多くは糖鎖修飾を受けている。糖鎖は分化、増殖、接着などにおいて重要な役割を果たしていること、及び、細胞の状態や生体内環境によって変化することが知られている。例えば、iPS細胞など再生医療等製品の開発と製造においては、糖鎖は未分化能の維持や分化の方向性・成熟度と関係があると考えられており、分化の効率化、各種分化細胞の選別、品質評価に利用することが期待されている。また、多くの腫瘍診断マーカーは糖タンパク質を標的としている。

そこで、本研究では、細胞や血液中の糖タンパク質の糖鎖を網羅的に解析するための基盤技術を開発する。具体的には、糖タンパク質の濃縮法、LC/MS/MSの最適化、及びデータ処理の効率化をめざす。さらに、それらの技術をiPS細胞由来神経細胞、神経変性疾患モデル細胞、及びがん患者血清・組織等の糖タンパク質解析に応用し、神経分化マーカー、神経変性疾患マーカー及びがん診断マーカーなどの開発につなげる。 

  
川崎 ナナ

生命医科学研究科  
創薬再生科学 

ゲノム ・ 遺伝子

研究テーマ 研究概要 研究者
遺伝性疾患の診断技術の向上に関する研究 様々な遺伝性疾患のゲノムDNA診断技術の高度化に資する研究を進める。現行のメイン解析プラットフォームであるショートリードシーケンスの解析手法を改良・発展させ、ロングリードシーケンスの解析手法を確立し未解明の疾患・症例の原因解明につなげる。ゲノム解析・トランスクリプトーム解析・エピゲノム解析を協力に進め、これまで見えてこなかったゲノム異常・トランククリプトーム異常・エピゲノム異常が明らかになり新たな疾患エンティティが確立されると期待される。

    
松本 直通

医学研究科 
遺伝学

がん

研究テーマ 研究概要 研究者
難治がんの微小環境からみた新規バイオマーカーおよび治療法の開発 治療抵抗性で予後不良の癌腫に対し、新たな突破口となる治療法が求められている。以前から癌およびその周囲の間質を構成する細胞が密接な相互作用を持つことが知られており、種々の間質構成細胞が作り出す微小環境において、癌は免疫抑制状態に置かれていることも明らかになりつつある。近年、制御性T細胞や、リンパ球表面のPD-1が免疫抑制のメカニズムを担うことが認知され、新たな治療薬も実臨床で使用されている。
難治癌の切除標本の解析により、腫瘍周囲の間質に集簇する制御性T細胞、細胞障害性T細胞、肥満細胞の多寡が予後を左右することが明らかとなった。プロテオーム解析を行ったところ、顕著な腫瘍局所浸潤リンパ球の変化を示す腫瘍では特定のたんぱく発現が見られる。また、先行研究によって全身のsubclinicalな炎症が局所の免疫環境に影響を与えることが明らかになりつつある。
このたんぱくの機能を解析することによって、がん免疫治療における新たなバイオマーカーとなること、新規がん免疫(補助)療法に繋がると期待される。

  
折舘 伸彦

医学研究科
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
DNAポリメラーゼθの機能解明と制御 〜 がん研究への応用 DNAポリメラーゼθと非相同末端連結(NHEJ)をともに欠損した細胞では、非相同的な組換えによるDNA修復が全く起こらなくなり、反復配列間での組換えの頻度が上昇する(Nat. Commun., 8:16112, 2017)。この成果に基づく独自の手法を活用して、本研究ではDNAポリメラーゼθの機能解析と阻害剤探索を行うとともに、DNA修復欠損がんを対象とした新規治療戦略の開発を試みる。DNAポリメラーゼθはさまざまな種類のがんで高発現しており、相同組換え修復と合成致死の関係性にあるため、修復欠損がんでDNAポリメラーゼθを特異的に阻害することができれば高い殺細胞効果が期待できる。

  
足立 典隆

生命ナノシステム科学研究科
生命環境システム科学

神経・難病

研究テーマ 研究概要 研究者
神経難病の病態解明とバイオマーカー・治療法の開発 本プロジェクトを通じ、脊髄小脳変性症(SCD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)をはじめとする神経難病の治療法開発へ向けた病態解明研究を推進する。すでに作成済みのSCD疾患モデルに対しては、治療薬の投与効果を検証し、ヒトへの応用へ向けた基盤を構築する。また、新規SCD疾患モデルの作成と解析を通じ、SCDに留まらない神経変性疾患全般の病態解明をめざす。ALSについては、ALS病態関連遺伝子を修飾した複数のモデルマウスの解析を行っており、これによりALSの治療標的分子を明らかにする。また、MSをはじめとする中枢神経炎症疾患において、我々が開発した病勢を反映する疾患バイオマーカーを多数例の患者検体用いて臨床症候との関係を明らかにする。このようにオリジナリティの高い研究リソース、アプローチを駆使し、神経難病の病態機序解明をすすめ、新たな診断・治療戦略へと展開することをめざす。

  
田中 章景
 
医学研究科
神経内科学・脳卒中医学
神経・神経疾患の新しいPET診断法開発 AMPA受容体はグルタミン酸シナプスにおけるグルタミン酸受容体の一つで、ほとんどの神経機能発現において中心的な役割を直接的にになっている、いわば“実行部隊”に相当する分子である。横浜市立大学医学部生理学教室(高橋)はAMPA受容体を生きた人の脳で観察するPET probeを世界で初めて開発した。本プローブを用いて、精神神経疾患横断的にAMPA受容体密度を観察する研究、脳卒中後の機能代償野の研究、てんかん焦点同定補助診断薬としての臨床治験を主に行っている。

  
高橋 琢哉

医学研究科
生理学
難治性循環器疾患における内分泌-神経-免疫連関の病態生理的意義の解明 日本では毎年3万人以上が急性心筋梗塞で亡くなっている。また慢性心不全患者の予後を劇的に改善する薬はまだ無い。私はこれまで約20年間、難治性心疾患の病態研究・治療法開発に従事してきた。その結果、難治性心疾患の病態改善の鍵が、ホルモン(内分泌系)・神経系・免疫系連関にあると考えるに至った。
グレリンという食欲を亢進させるホルモンの受容体は、心臓にはほとんど発現していない。にもかかわらず、心筋梗塞や心不全モデル動物にグレリンを投与すると、自律神経系を介した抗炎症作用により、病態が明らかに改善する。つまり、難治性心疾患の治療標的は心臓のみでなく、ホルモンによる神経系の刺激を介した炎症(免疫系)の制御が重要であると考えられる。
今後様々なホルモンについて、その難治性心疾患治療薬としての可能性を探り、画期的な難治性心疾患治療薬開発を目指す。
 
      
徳留 健

医学研究科
薬理学

植物

研究テーマ 研究概要 研究者
種の障壁・種子形成のエピジェネティック制御の解明 コメや小麦粉をはじめ、人類の食糧となる植物の種子では、容易に雑種が形成されない仕組みが存在している。コムギの祖先種を同定した故木原博士もこの現象を見いだし、後継者である故西山博士らにより胚乳でのオス・メス由来のゲノムのせめぎ合いであることが予見されていた。一方で申請者らは、分子遺伝学的な解析から胚乳(種子中でデンプン等の栄養分を蓄える組織)では、オス由来、メス由来のゲノムの機能がDNAメチル化などのエピジェネティックな機構により全く異なっていることを明らかにしてきた。現在、全ゲノム解読、エピゲノム情報の解読が進んでいる多種多様なイネ属を用いてこの複雑な現象の全容解明を進めている。

  
木下 哲

木原生物学研究所
植物エピゲノム科学
精細胞を覆う内部形質膜に着目した被子植物の受精機構の研究 被子植物の精細胞は活発に伸長する花粉管の内部を輸送され、胚珠で放出されると正確に重複受精の場にたどり着く。2つ1組の精細胞は内部形質膜という膜に包まれて、一端をしっぽ状に伸ばし、花粉管の栄養核とつながった雄性生殖単位という細胞構造をつくる。複雑な雄性生殖単位がなぜ、どのようにして作られるか、現在もほとんど知見はないが、とりわけ内部形質膜については教科書でに呼称が定まっていないほど、理解が進んでいない膜構造である。2020年度、我々は精細胞の細胞壁にカロースとよばれる多糖を蓄積させると、精細胞が花粉管内における輸送能を失うことを見出した(Nature Commun. Provisionally accepted)。カロース蓄積に伴い、内部形質膜へのタンパク質局在の変化もあらわれたことから、内部形質膜が精細胞の輸送に働く可能性が初めて示唆された。また、内部形質膜は受精直前に精細胞表面を露出させるために崩壊するという推測もされ、にわかに植物生殖分野でも脚光を浴び始めている。本研究では当研究グループで内部形質膜を蛍光タンパク質で可視化した植物を利用して、精細胞の輸送が異常となる変異体の分離と原因遺伝子の同定、および内部形質膜崩壊機構の解析を行う。

  
丸山 大輔

木原生物学研究所
植物エピゲノム科学

感染症・免疫

研究テーマ 研究概要 研究者
新興・再興感染症に対する新たな診断・治療・予防法の開発 我々が独自に開発したタンパク質合成法と最先端の検出技術を用いて、新興感染症に対する病原体検出装置の開発を行う。また、分子疫学解析による感染伝播の予測を行うことで、感染予防や治療法の開発に役立てる。さらにはウイルス-宿主相互作用に着目した新興・再興感染症に対する新たな予防法および治療法の開発を目指す。

梁 明秀

医学研究科
微生物学
(2022年11月まで)
難治性ぶどう膜炎疾患を対象とした分子遺伝学的発症機序の解明  難治性ぶどう膜炎疾患であるベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病、強直性脊椎炎を対象にゲノム全域に渡る遺伝子解析(ゲノムワイド関連解析(GWAS):サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病、ベーチェット病; エクソーム解析:サルコイドーシス、ベーチェット病、強直性脊椎炎)を実行し、ベーチェット病、サルコイドーシス、強直性脊椎炎の遺伝要因を網羅的に同定している。フォークト・小柳・原田病のゲノム解析については現在進行中である。また、ベーチェット病、サルコイドーシスおよびフォークト・小柳・原田病患者のエクソソーム由来miRNAを対象とした網羅的な発現解析も実行しており、疾患に特異的なエクソソーム由来miRNA(バイオマーカー)の探索を試みている。 

 
水木 信久

医学研究科
眼科学
公衆衛生学の視点からの新興感染症に関する開発研究 令和2年度AMEDウイルス等感染症対策技術開発事業において開始した「新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究」の研究課題をベースとした研究を継続し、新型コロナウイルス感染症患者や一般住民における抗体保有率等を引き続き調査するとともに、アフターコロナを見据えた一般住民を対象としたコホート研究を構築し、疫学的視点からの長期追跡調査を実施する。

 
後藤 温

医学部  公衆衛生学

データサイエンス研究科 
ヘルスデータサイエンス専攻
(2023年度)

肝疾患

研究テーマ 研究概要 研究者
NAFLD/NASH(肝疾患)病態における腸内細菌と遺伝因子 NAFLD/NASHには様々な因子がその病態に関わっているとされる(Multiple parallele hits theory)。しかしながら、その全貌はいまだに明らかとなっていない分子生物学的手法が発達し、様々な疾患において腸内細菌や遺伝因子の関与が明らかとなっている。NAFLD/NASHにおける腸内細菌(メタゲノム解析、便中ムチン、血中エンドトキシン)や遺伝因子(ゲノム解析、メチル化解析、RNAシーケンス)を明らかにし、病態の解明、さらには新規治療の開発に役立てることを目的とする。
 
 
中島 淳

医学研究科
肝胆膵消化器病学

先端融合

研究テーマ 研究概要 研究者
データ活用による意思決定有用性に関する研究 : 証拠に基づく政策立案 (EBPM) と経営 (EBMgt) の観点から  本研究の目的は、エビデンスに基づく政策立案 (evidence-based policy making: EBPM) と経営 (evidence-based management: EBMgt) の推進するために、財務・非財務情報に関するデータを活用することによる意思決定有用性について研究を行う。データ活用の意思決定には様々な要素が複合的に関連しているが,どのようなプロセスでデータが意思決定に関与するのかについて明らかではない。そこで,本研究では,これまで構築したデータベースおよび実務家との関係性を生かし、1) BI(business intelligence)ツールの開発と検証、2) EBPMの意思決定に関する実証実験、3) EBMgtの意思決定に関する実証実験、を実施する。 

   
黒木 淳

国際商学部 国際商学科
データサイエンス研究科 
ヘルスデータサイエンス専攻
都市型プライマリ・ケアの質評価尺度の開発と質改善システムの実装  複数の慢性疾患を持つ高齢者の増加、健康格差の拡大、マイノリティの方の医療へのアクセスなど都市部が抱える医療の課題への対応にはプライマリ・ケアの拡充が必須である。しかし、幅広い領域を扱うプライマリ・ケアは質評価が容易ではない。そこで本研究では、米国で開発され30か国語以上に翻訳されている患者視点の定量的な質評価尺度であるPatient-Centered Primary Care Measure (PCPCM)のに基づいた尺度の開発を行う。また、横浜市役所及び市内の医療機関と連携し同尺度を用いたプライマリ・ケアの質評価を行うと同時に、PDCAサイクルを回し質改善を行うシステムの実装を図る。
 
 
金子 惇

データサイエンス研究科 
ヘルスデータサイエンス専攻
コミュニケーションデザインを活用した疾病予防等に関する戦略的研究  われわれは、現代社会が抱えるさまざまな課題解決に向けて、「医療とは病気を診るもの」というこれまでの医学を拡張して、病が顕在化する以前から人々と向き合い、生活の場でウェルビーイングひいては、自己実現を後押しする活動が重要になると予測している。このような新潮流をストリート・メディカルと名付け、その概念の重要性を世界に発信し、社会に根付かせるための活動を体系化・本格化させる。
具体的には、いままでYCU-CDCが培ってきた科学と実践を基盤に 概念普及のための教育・研究活動を展開しつつ、より大きなスケールでの概念実証のためフラッグシップミッションとして「イネーブリングシティ」プロジェクトを展開し、学内・外の複数ステークホルダーとの連携のもと地域住民へと価値還元を目指した活動を展開していく。

  
武部 貴則

先端医科学研究センター 
コミュニケーション・デザイン・センター
新規プロテオーム解析技術の創出とバイオマーカー開発  近年、プロテオミクスの技術進歩により、生体機能に関わるタンパク質や翻訳後修飾、タンパク質間相互作用などの包括的な解析が可能になってきた。本研究では、このような最先端プロテオミクス技術に加え、エピゲノム解析などを統合したマルチオミクスや、挑戦的な戦略による新技術の開発に取り組む。また、これら技術を活用した新規診断バイオマーカー候補や新規治療標的候補の探索にも取り組み、新たな診断法や治療法の開発に役立てる。 

 
木村 弥生

先端医科学研究センター 
プロテオミクス 
Marrying Medical and Bioinformatics Research:helping medical care and discoveries  To apply various Bioinformatics methods to integrate and analyze multi-OMICS data (scRNA-seq, RNA-seq, Hi-C, CITE-seq) in: non-small-cell (NSC) lung cancer, COVID19 patients, and in differentiation of dendritic cells (DC). 

 
ジョーダン・ラミロフスキー

先端医科学研究センター 
バイオインフォマティクス 
都市課題解決のための知の拠点開発となるプラットフォームの構築 本研究課題の目的は、多様化・複雑化する都市課題に対して、分野を横断した研究者間の知恵を融合し、その解決を模索するプラットフォームを構築することである。都市課題は、その都市の規模や地理的な特徴、またその役割等によって異なる。そのため、ここでは大都市である横浜市だけではなく、その周辺地域も含めて課題を整理していき、その解決策を模索する。包括的な観点としては、大都市郊外型の持続可能な戦略的都市づくりとし、特に都市基盤や地域資源等といった観点からまとめていくつもりである。具体的な研究課題としては、①新型コロナウィルス感染後の都市空間構造の変容、②マンションの管理水準の情報が不動産価格に与える影響、③観光促進と地域振興のあり方、④気候変動と水道インフラ等を扱う予定である。現代が抱える都市課題を解決するには、複合的・融合的な観点が重要となり、そのプラットフォーム形成に向けて分野の異なる研究者が集結して協働するスタートアップとしての位置づけが本研究である。

 
大西 暁生

データサイエンス研究科
データサイエンス専攻
(2023年度)
研究テーマ 研究概要 研究者
DNA維持メチル化の構造生命科学研究とその応用
ヒトは多種多様な細胞の集団から成ります。この多様性の維持にはDNAメチル化が深くかかわっています。哺乳類ではCG配列中のシトシンにメチル化が起こります。遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化は遺伝子発現の抑制に関与します。細胞が獲得した固有のDNAメチル化パターンは細胞に不必要な遺伝子の発現を抑制し、細胞特有の形や機能の獲得に寄与します。重要なことに、ゲノム配列と同様にDNAメチル化は次世代の細胞に受け継がれていきます。しかし、DNAメチル化がどのようなメカニズムで正確に受け継がれていくのかは不明な点が多いです。本研究では、DNAメチル化が受け継がれていく仕組みを構造生物学的な観点から明らかにしていきます。また、DNAメチル化の異常がもたらす疾患の治療薬の開発に向けた、薬剤探索を行います。

 
有田 恭平

生命医科学研究科
構造生物学 
分⼦シミュレーションとAIによる創薬研究  分⼦動⼒学シミュレーションを⽤い、⼈⼯知能(AI)技術と連携して、創薬研究を実施する。
X線結晶構造、クライオ電顕構造、NMR構造、⼈⼯知能による構造予測などから、溶液中構造データも活用して、分⼦動⼒学シミュレーションにより、動的構造による機能発現やリガンド結合のあり方を明らかにする。

  
池口 満徳

生命医科学研究科
生命情報科学 
クライオ電子顕微鏡による膜輸送体の分子機構解明とその制御  生物の構成単位である細胞は、脂質二重膜によって外界から隔たれており、さらに細胞の内部も複雑な脂質二重膜によって多くのコンパートメントに分けられている。脂質膜中に存在する膜輸送体は、このようなコンパートメントを越えて物質を輸送することで細胞の恒常性維持や細胞間コミュニケーションに関わり、これら輸送体における機能異常は様々な疾患につながることから、創薬標的としても非常に重要である。膜輸送体の輸送機構を理解するために、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析の手法や解析アルゴリズムの開発によって、膜輸送体がはたらく過程を動画として描写することで、これらの分子がどのようにして膜を越えた物質輸送を行うのかを理解する。

 
西澤 知宏

生命医科学研究科
生体膜ダイナミクス 
不完全情報下におけるマクロ経済動学-大規模家計消費パネルを活用した分析  本研究の目的は、大規模消費パネルデータを用いて経済動学を分析する点にあります。特に家計の消費に焦点を当て、集計データでは分析が難しい消費の実態について、個票データの分析によって明らかにします。消費の実相については近年、強い関心が寄せられています。(1)いわゆる「中間層」の消滅が格差の拡大として認識され始めたこと、(2)経済政策を講じた場合でも理論通りの効果が発現しなくなり経済成長率が低迷していること、(3)経済主体の期待に働きかけるような金融政策に関心が高まり、「期待」が経済変数に与える影響に注目が寄せられていることが挙げられます。本研究では30年にわたる民間の消費パネルデータへ家計の期待形成に関するアンケート調査を接続することで、従来のデータでは迫り切れなかった家計消費の実態を明らかにすることを目的にしています。 

  
中園 善行

国際マネジメント研究科
制度ロジック変革モデルの探求 –横浜スタートアップエコシステムの形成プロセス研究  「制度的環境の強い場所に新しい組織フィールドが形成される過程で、制度的企業家がどのような役割を担うのか」との問いに対して、現在横浜で形成に向けて取り組まれている「スタートアップエコシステム」を研究対象として明らかにしていこうとする。スタートアップエコシステムは、連携する多様なアクター(スタートアップ、大企業、政府自治体、大学など)が関与して形成されるが、それぞれには従来から埋め込まれた制度ロジックがある。その調整・変革のプロセスを、横浜における大学主導の起業家教育プログラム/産学連携プログラムの参与観察を通じて、また、他地域(日本他都市、米国都市等)との比較事例分析を通じて、明らかにしていく。 

  
芦澤 美智子

国際マネジメント研究科 
(2022年度まで)
地域間ネットワークの経済効果に関する実証研究   人口減少と環境制約下での地域の持続可能性を高める手段として,リニア中央新幹線といった高速交通ネットワークの役割が期待されている。各地域が高速交通ネットワークで結ばれることで,地域で発生する集積の経済の広域的活用が可能になり,地域経済全体の生産性が向上する可能性がある。さらに,高速交通ネットワークの形成は,地域間移動における公共交通の利用促進を通じて地域の環境効率を改善させる可能性もある。本研究は,集積の経済の広域的活用という観点から地域間のネットワーク経済の在り方を定義し,経済効率と環境効率の両立可能性という点から旅客移動に関する高速交通ネットワーク形成が地域経済の持続可能性に与える影響を定量的に明らかにする。そして,現在の国土形成計画の妥当性を評価し,地方創生の進化と低炭素社会に向けた新たな国土形成の在り方を提示する。

 
大塚 章弘

国際マネジメント研究科 
安楽死、尊厳死、鎮静の是非に関する倫理学研究  いわゆる安楽死(医師による致死薬の投与)、医師による自殺幇助(致死薬の処方など)、尊厳死(生命維持に必要な医療の見送り)の是非が国内外で社会問題化している。また最近では、死亡する前の患者に鎮静剤を与えて意識を下げる処置(鎮静)についても、場合によって安楽死と区別するのが難しいなどとしてその倫理性を懸念する声が聞かれるようになっている。これらの処置が容認できる範囲とその根拠について、これ以上生きたくないという患者の意向、苦痛から解放されることにある患者の利益、延命治療にかかる医療費の高騰、人命の価値、高齢者や機能障害者などの社会的弱者にかかるリスク、行為主体としての医師の意図(生命を短縮するつもりがあるかどうか)や作為性(生命短縮に積極的に関わっているかどうか)など、考慮する必要のある論点を整理し、考察する。

 
有馬 斉

都市社会文化研究科 
観光予測に資する観光⾏動パターン解析(分類)⽅法の検討  近年活用されるようになった人の流動を分析するためのGPSデータを用いて、観光地における観光客の移動を解析する。それによって観光行動のパターンを分類する手法を確立し、特徴的な観光行動のパターンを抽出する。方法論を生み出すためのこの基礎的研究を行うことにより、リアルタイムデータへの適用や各自治体のEBPMに貢献する。また、観光地それぞれの特性も観光客の行動から具体的に理解することが可能となり、観光学をはじめとする人文・社会科学にも貢献できる。
 
有馬 貴之

都市社会文化研究科
海洋ガバナンスにおける寄港国措置の展望と課題  旗国による船舶の管理が行き届かなくなる状況においても国際規範を強制するために、近年の国際条約においては、旗国だけではなく、寄港国が措置を取ることを認めるようになってきている。しかしながら、地中海の難民危機やCOVID-19が蔓延する中での船舶の受入などの事態は、寄港国に過度な負担を強いる可能性があることを示すものとなっている。また、寄港国の権利が明確でないことも、寄港国の悩みの種となっている。そこで、寄港国の権利を明確にすると同時に、負担配分を可能にする制度の構築を検討する。

  
 
瀬田 真

都市社会文化研究科 
(2022年度まで)
初期胚が生み出す表面応力場の時空間動態  発生過程において初期胚が生み出す機械的力は、細胞の形状変化や空間配置のみならず運命決定にも関与する重要な因子である。本研究課題は、初期胚の表面ではたらく応力場を精密に測定する新しい基盤技術を開発する。

 
谷本 博一

生命ナノシステム科学研究科 
物質システム科学 
植物から発生する揮発性有機化合物の高感度リアルタイム計測法の開発とその応用  植物から発生する揮発性有機化合物 (VOC) は年間10億トンと云われ、アレロパシー (他感作用) を持つ他、多大な環境影響をもたらす。例えば、火に強いユーカリは、生存戦略のために引火性のあるVOCを発生させ、山火事を誘発させる。山火事が起こることで、ユーカリの生存範囲は拡大するものの、その地域の大気質は化石燃料を主としていた頃の状況に逆戻りしかねない。このような植物VOCに由来する連鎖的影響を理解するためには、VOCの放出特性を精査する必要がある。

そこで本研究では、多成分の植物 VOC を 「その場で」 「リアルタイムに」 「高感度で」 計測する質量分析法を開発し、実際に植物 VOC を継時的にリアルタイムモニタリングし,新たなVOC放出特性の理解に繋げる。最終的に、植物科学や環境動態学研究への本手法の有効性を評価する。 

  
関本 奏子

生命ナノシステム科学研究科 
物質システム科学 
人工知能(AI)を用いた整形外科手術に関する諸問題の解決に向けた研究  整形外科手術に関する未解決の問題点を情報横断型AIにより術前に予測するアルゴリズムを作成する。本研究では人工股関節全置換術(THA)の重要な合併症である脱臼、静脈血栓塞栓症、インプラント周囲骨吸収が発生するリスクを術前からAIを用いて評価することにより、発生リスクが高い症例には術前から対応することにより安全で質の高い治療を提供することを目的とする。
現在、理化学研究所との共同研究により、THAの際の最適なインプラント設置に関して、画像や診療記録、血液検査結果などの患者情報や症例報告、論文などのテキスト情報などをすべてAIで処理することで疾患の時系列変化を考慮した診断と将来予測等の可能性がある情報横断型AIを用いた解析を行っている。今後は、THA後の静脈血栓塞栓症やインプラント周囲骨吸収の発生予測にも研究を進め、正確で安全な治療に役立てる。 

稲葉 裕

医学研究科
運動器病態学
メディエーター複合体による遺伝子発現制御機構とその破綻による疾患発症メカニズムの解明  本プロジェクトでは、転写制御因子のメディエーター複合体に着目し、そのコンポーネントMed26による転写制御機構をタンパク質構造から分子ネットワークまで解明する。さらに、Med26による転写制御機構が、細胞・組織・個体においてどのような役割を果たしているのかについて、Med26のコンディショナルノックアウトマウスを用いて解明する。最終的には、Med26による転写制御機構の破綻による腫瘍性疾患や神経変性疾患の発症メカニズムを解明し、創薬開発の基盤も構築したい。 

 
高橋 秀尚

医学研究科
分子生物学
難治性中枢神経系悪性腫瘍に対する標的治療法の開発 難治性中枢神経悪性腫瘍である神経膠腫や中枢神経原発悪性リンパ腫などに対する遺伝子異常を標的とした治療法の開発を目指す。再現性の高いモデル作りを行いつつ、網羅的な遺伝子解析などを通じて独創的な治療となりうる分子を見出し薬剤による治療を行う。同時に治療効果を判定できるモニタリングシステムの開発をおこなう。これらの研究によって得られた知見をもとに臨床研究につなげるべく準備を行う。 

立石 健祐

医学部
脳神経外科学

生命医科学研究科
創薬再生科学 
エビデンスの乏しい難治性循環器疾患の終末期医療とAdvance Care Planningに関する疫学的研究 心不全患者の増加に伴い、終末期医療やAdvance Care Planning(ACP)が注目されている。心不全患者の中でも、成人期に達した先天性心疾患(成人先天性心疾患)患者の終末期医療像については、希少かつ多様な病態によりエビデンスが乏しい。さらに新しい患者群のため予後予測が困難なこと、特徴的な親子関係などによりACPが複雑化するリスクがある。本研究ではDPCデータ分析、および専門医療機関に勤務する医師・看護師対象の質問紙調査を併用することで、国内における成人先天性心疾患患者の終末期医療像とACPの実情を明らかにし、関連学会が作成する診療ガイドラインへの基礎データの提供を目指す。
 
落合 亮太

医学研究科 
看護学専攻 成人看護学