医療の「地域格差」を数字で見える化! 社会の変化に合わせた医療提供体制を構築日本独自の「へき地尺度」開発で、医療の質格差の改善へ
「近くに信頼できるお医者さんがいること」は、私たちが安心して暮らすための土台です。しかし、都会と地方で医療の質に違いはあるのか? 良い医師・良い診療所とは具体的に何が違うのか? これまで経験則やイメージで語られがちだったこれらの問いに、「ヘルスデータサイエンス」という武器で答えを出そうとしているのが、データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇准教授です。
1. 研究の核心:プライマリ・ケアを「可視化」する
金子准教授の研究の柱は、「プライマリ・ケア(身近な地域医療)」の質をデータで評価することにあります。
単に病気を治すだけでなく、患者の背景を理解し、継続的に関わる医療。その価値を証明するために、金子准教授は膨大なデータを分析し、以下のような関連を明らかにしています。
単に病気を治すだけでなく、患者の背景を理解し、継続的に関わる医療。その価値を証明するために、金子准教授は膨大なデータを分析し、以下のような関連を明らかにしています。
• 「孤独」を和らげる医療の質: かかりつけ医の診療の質(患者中心のケアなど)が高いほど、患者の「孤独感」が低い傾向にあることを突き止めました。医療が単なる身体的治療を超え、精神的なセーフティネットとして機能していることを示しています。
• ワクチン接種率とかかりつけ医の診療の質: かかりつけ医の診療の質が良いほど、インフルエンザなどのワクチン接種率が高まることをデータで証明しました。
• ワクチン接種率とかかりつけ医の診療の質: かかりつけ医の診療の質が良いほど、インフルエンザなどのワクチン接種率が高まることをデータで証明しました。
2. 都市と地方の格差に挑む「地域性の数値化」
日本の医療において「地方の医師不足」は深刻な課題ですが、そもそも「どこからが地方(へき地)なのか」という定義は曖昧でした。金子准教授は、日本独自の「Rurality Index(へき地指数)」の開発に取り組んでいます。
人口密度や医療機関への距離などを数値化し、「地域ごとの特性」を客観的に捉えることで、その地域に本当に必要な医療リソースを効率的に届けるための土台を作っています。
「それぞれの地域で『必要』な医療とは何か?それについて地域でコンセンサスを作るにはどのようにすればよいか?を考える材料としてデータを使えればと考えています」(金子准教授)
人口密度や医療機関への距離などを数値化し、「地域ごとの特性」を客観的に捉えることで、その地域に本当に必要な医療リソースを効率的に届けるための土台を作っています。
「それぞれの地域で『必要』な医療とは何か?それについて地域でコンセンサスを作るにはどのようにすればよいか?を考える材料としてデータを使えればと考えています」(金子准教授)
3. 世界が注目する実績と、現場への還元
• 国際的な評価: 数多くの論文が『BMJ Open』や『Journal of General Internal Medicine』といった国際的な著名学術誌に掲載され、日本の地域医療の現状を世界に発信しています。
• PBRN(診療所による研究ネットワーク)の推進: 地域の診療所と大学を結び、実際の現場で生まれる疑問を研究につなげるネットワークを構築。研究成果を医療現場へフィードバックする仕組み作りを牽引しています。
• PBRN(診療所による研究ネットワーク)の推進: 地域の診療所と大学を結び、実際の現場で生まれる疑問を研究につなげるネットワークを構築。研究成果を医療現場へフィードバックする仕組み作りを牽引しています。
4. 私たちの未来はどう変わる?
金子准教授の研究が進むことで、将来、私たちは以下のような恩恵を受けることが期待されます。
3. 都市部の健康格差の是正: 都市部とへき地だけではなく、都市部の中での健康格差の見える化と、かかりつけ医の質向上による健康格差の是正を目指します。
1. かかりつけ医の診療の質の見える化:患者経験という観点からかかりつけ医の質を評価し、その質が予防接種や入院など他の患者アウトカム(治療、看護、薬など医療介入によって得られる「最終的な結果・成果」)と関連があるかを検証します。
2. 地域格差の見える化と集約: 人口が減少する中でどのような医療が地域に必要か、どのような医療は集約が必要かについて、地域ごとにコンセンサスを作るために必要な情報を提供します。
2. 地域格差の見える化と集約: 人口が減少する中でどのような医療が地域に必要か、どのような医療は集約が必要かについて、地域ごとにコンセンサスを作るために必要な情報を提供します。
3. 都市部の健康格差の是正: 都市部とへき地だけではなく、都市部の中での健康格差の見える化と、かかりつけ医の質向上による健康格差の是正を目指します。
金子 惇准教授からのメッセージ
私自身は沖縄の離島診療所で3年間勤務した経験があり、そこから離島やへき地の研究を始めました。必ずしもへき地の方が医療の質が悪いという訳ではなく、医師の診療の幅が広いなど、へき地医療の良い面についても研究してきました。今後もへき地医療のポジティブなアウトカムについても知って貰えるように研究できたらと考えています。