YCU Research Portal

YCU Research Portal

<3歳までの川崎病発症に関連する出生前・出生後因子の検討>について

子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)

神奈川ユニットセンター(横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学 福田清香、小林徹、伊藤秀一、京都大学大学院医学研究科 臨床統計学 田中司朗)の研究チームはエコチル調査の約8万人のデータを用いて、出生前から出生後に受ける曝露因子と生まれた子どもの1歳から3歳までの川崎病※1発症との関連について解析しました。その結果、出生後の因子として、乳児期の栄養や気道感染の罹患歴が関連する可能性が、新たに明らかとなりました。一方で、1歳までの川崎病発症との関連が指摘されていた胎児期の因子は、本研究では関連を認めませんでした。これらの結果から、川崎病の病因が発症時期により異なる可能性が示唆され、病因を追及する上で、重要な結果であると考えます。なお、それぞれの因子と川崎病との真の因果関係については、さらなる検討が必要と考えます。

本研究の成果は、令和8年3月5日付でNature Researchから刊行された自然科学分野の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

※ 本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

発表のポイント

● エコチル調査に登録された妊婦から生まれた子どもの1歳から3歳までの川崎病発症と関連する因子について解析を行った。

● 出生後の因子として、乳児期の栄養や気道感染の罹患歴が関連する可能性が、新たに明らかとなった。

● 一方で、1歳までの川崎病発症との関連が指摘されていた胎児期の因子は、本研究では関連を認めず、川崎病の病因が発症時期により異なる可能性が示唆される。

研究の背景

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしています。

エコチル調査は、研究の中心機関として国立環境研究所にコアセンターを置き、医学的支援のためのメディカルサポートセンターを国立成育医療研究センターに設置しています。さらに、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。

川崎病は1967年に小児科医川崎富作博士により報告された、乳幼児に好発する原因不明の疾患です。全身の血管に炎症が生じ、心臓の冠動脈に動脈瘤の後遺症が発生することもあります。わが国では少子化進んでいるにもかかわらず、年々患者数は増え、一年間に約15,000人の新規患者が発生し、乳幼児の100人に1人が罹患すると推定されます。幸い、治療の進歩にともない、心臓に後遺症が残る患者さんは減少していますが、その原因は未だに解明されていません。

私たちは、エコチル研究のデータを用いて、以前に1歳までの川崎病に関する因子についての検討を行い、報告しました。今回は1歳から3歳までに発症の時期を変えて、出生前から出生後のさまざまな因子と川崎病発症との関連について検討しました。世界で最も患者数が多いわが国でしか実現できない、重要な研究です。

研究内容と成果

エコチル調査に登録された妊婦から生まれた104,062人の子どものうち、流産、死産、協力取りやめ等により対象とならなかった者、1歳までに川崎病を発症した児を除いた82,148人を本調査の対象とし、対象者82,148人のうち686人が川崎病を発症しました。対象者について、川崎病発症の有無と、社会経済因子や母親の既往歴、児の性別、同胞の有無などの家族背景因子、妊娠中の母親の食事内容やサプリメント摂取状況、母親の葉酸血中濃度、妊娠中の甲状腺疾患の合併などの胎児期の因子、周産期因子など過去に報告した因子との関連を再検討しました。さらに、離乳食の開始時期や食事内容、乳児期の感染症罹患など、出生後の因子についても検討しました。

その結果、母親の川崎病・アレルギー疾患の既往、世帯収入が高いこと、男児、生まれた児の同胞の存在が、川崎病発症リスクを上げる傾向が示されました。また、出生後の因子としては、市販のベビーフード摂取、ヨーグルト摂取、乳児期の気道感染の既往が、川崎病の発症リスクを上げる傾向がみられ、早期からの小麦摂取開始は川崎病の発症リスクを下げる傾向がみられました。なお、これらの結果は関連を示したもので、発症原因を示すものではありません。一方で、過去に報告した、1歳未満の発症と関連していた胎内因子および周産期因子は、いずれも有意な関連を認めませんでした。

本研究では、詳細な栄養素の摂取頻度や量までは聴取できていないことや、感染症の罹患期や病原体についての調査はできていないという限界があり、結果の解釈には慎重になるべきであると考えます。

今回の結果で、興味深い点は、対象とする発症月齢により、関連する因子に変化がみられたという点です。これは、川崎病の発症機序が月齢により変化する可能性を示唆しており、今後、病因を考える際に重要となる所見と考えています。

今後の展開

今回は、生まれた子どもの1歳から3歳までに発症した川崎病を対象として研究を行いました。現在、発症年齢をさらに6歳まで拡大し、同様の解析を行っています。年齢を変えることによって、これまでに報告した因子との関連が変わるのか、また新たな因子との関連が見つかるのか、検討していきます。

参考図

図:対象者選別のフローチャート エコチル調査の対象となった妊婦から生まれた104,062人の子どものうち、流産、死産、協力取りやめ等による対象とならなかったもの、また1歳までに川崎病を発症した児を除き、82,148人が本調査の対象となりました。このうち、3歳までに686人が川崎病を発症しました。

用語解説

※1 川崎病:川崎病は1967年に川崎富作博士により報告された疾患で、主に乳幼児に発症します。全身の血管に炎症が生じ、心臓の冠動脈に動脈瘤の後遺症を合併することもあります。日本人に多く、様々な研究がなされてきましたが、原因は未だ明らかにはなっていません。

発表論文

題名:Prenatal and postnatal risk factors associated with Kawasaki disease up to 3 years of age

著者名(英語):Sayaka Fukuda, MD, PhD1), 2), Shiro Tanaka, PhD3), Chihiro Kawakami, PhD1), Tohru Kobayashi, MD, PhD1), Shuichi Ito, MD, PhD, MPH1), the Japan Environment and Children’s Study (JECS) Group
1) Department of Pediatrics, Graduate School of Medicine, Yokohama City University, Yokohama, Japan
2) Department of Pediatrics, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, Yokohama, Japan
3) Department of Clinical Biostatistics/Clinical Biostatistics Course, Graduate School of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan

1,2福田清香:済生会横浜市東部病院 小児科
3 田中司朗:京都大学大学院医学研究科 臨床統計学
1川上ちひろ、小林徹、伊藤秀一:横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学
JECSグループ:コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンター長

掲載誌:Scientific Reports
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-026-40564-w

問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

関連記事

  • 3 全ての人に健康と福祉を