生活困窮地域における医療者確保の新たな試み-大学と診療所の連携から
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇准教授の研究グループは、横浜市寿町健康福祉交流センター診療所(以下、「診療所」という。)と連携して、生活が困窮されている方が多く住む地域の医療者確保、およびその地域での初期研修医や有志の医学生の実習受け入れを行う取り組みを実施しています。その取り組みが家庭医療・総合診療の国際学術誌である「Annals of Family Medicine」のInnovations in Primary Careというセクションに掲載されました(2024年9月24日オンライン公開)。
研究成果のポイント
● 今回の取り組みは、英国Glasgow大学から始まった、生活困窮地域で働く医療者が連携して取り組んでいるGPs at the Deep Endプロジェクトの一環として行われた。
● 生活困窮地域で働く医療者を確保することに加え、その地域での学生・研修医教育を行うために大学の研究グループと地域の診療所が共同でプロジェクトを行うことは、日本では先駆的な試みとなる。
● このプロジェクトを通じて、常勤・非常勤合わせて8名(本論文執筆時点)の総合診療医が診療に携わり、初期研修医や有志の医学生の実習受け入れが行われた。
● 実習は診療所内だけでなく周辺施設の見学・参加も含んでおり、学習者が多様な立場にある方を知り、理解するきっかけとなるプログラムとなっている。
研究背景
生活困窮地域で働く医療者の不足は世界的な課題となっており、英国スコットランドのGlasgow大学では2009年にGPs at the Deep Endプロジェクトを始めました。本プロジェクトは、そのような地域の診療所やそこで働く医療者同士の連携を通じて人材確保や診療の質改善、政策提言を行っていくものです。このプロジェクトには世界中のさまざまな地域が参加しており、金子准教授らの研究グループは2023年に川崎市・横浜市で勤務する医療者を中心にDeep End Kawasaki/Yokohamaを立ち上げ、活動しています。
研究内容
横浜市中区には寿地区という0.06km2ほど(東京ドーム約1.3個分)の地域に約5,000人が居住し、その約94%の方が生活保護を受給されている地域があります。今回はDeep End Kawasaki/Yokohamaの活動の一環として、その地域にある診療所と横浜市立大学の研究グループが連携し、そこで診療を行うだけでなく、初期研修医や有志の医学生を受け入れ、そこで実習することで学習者にどのような変化があるかを調査する研究を行う、という共同研究を開始しました。
その枠組みの中では、大学の教員が兼業ではなく業務の一環として診療所で勤務し、診療所が大学に必要経費(研究費等)を支払うことで、そこで働く医師が研究に活用できる資金を調達する形式を実現し、大学と地域の診療所がよりフレキシブルに連携できる環境を構築しました。それらのプロジェクトを通して、医師確保が困難だった診療所では、常勤・非常勤合わせて8名(本論文執筆時点)の総合診療医が診療に携わることとなり、初期研修医や有志の医学生の実習受け入れも開始されました。実習には診療所だけでなく、路上生活など居所が無い方の生活自立を支援する施設、断酒会、精神科デイケア、炊き出しなどの見学・参加も含んでおり、学習者が多様な立場にある方を知り、理解するきっかけとなるプログラムとなっています。
その枠組みの中では、大学の教員が兼業ではなく業務の一環として診療所で勤務し、診療所が大学に必要経費(研究費等)を支払うことで、そこで働く医師が研究に活用できる資金を調達する形式を実現し、大学と地域の診療所がよりフレキシブルに連携できる環境を構築しました。それらのプロジェクトを通して、医師確保が困難だった診療所では、常勤・非常勤合わせて8名(本論文執筆時点)の総合診療医が診療に携わることとなり、初期研修医や有志の医学生の実習受け入れも開始されました。実習には診療所だけでなく、路上生活など居所が無い方の生活自立を支援する施設、断酒会、精神科デイケア、炊き出しなどの見学・参加も含んでおり、学習者が多様な立場にある方を知り、理解するきっかけとなるプログラムとなっています。
今後の展開
本プロジェクトにより医療者の確保を実現した診療所が継続的に人材を確保するためには、勤務している医師や研修医の成長につながるような生涯学習の支援や、それぞれの役割を果たすことでのやりがいが重要となります。そのため、今後はそのような支援や取り組みを行い、日本の他の地域や諸外国にも発信していきます。また、「寿地区で学習することが学習者に変化をもたらすのか? もしそうであればどのような変化なのか?」といったことをテーマにさらに研究を進めていく予定です。
研究費
本研究は、横浜市立大学学長裁量事業 第5期戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」の支援を受けて実施されました。また、横浜市寿町健康福祉交流センター診療所との共同研究です。
論文情報
タイトル: Deep End Kawasaki/Yokohama: A New Challenge for GPs in Deprived Areas in Japan
著者: Makoto Kaneko, Rei Kansaku, Yusuke Kanakubo, Aya Yumino
掲載雑誌: Annals of Family Medicine
DOI: 10.1370/afm.3146
著者: Makoto Kaneko, Rei Kansaku, Yusuke Kanakubo, Aya Yumino
掲載雑誌: Annals of Family Medicine
DOI: 10.1370/afm.3146
お問合わせ先
横浜市立大学 広報担当
mail: koho@yokohama-cu.ac.jp
mail: koho@yokohama-cu.ac.jp