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【開催報告】平成30年度 第二回海外フィールドワーク合同帰国報告会

【開催報告】平成30年度 第二回海外フィールドワーク合同帰国報告会

11月12日(月)14:30~15:35、金沢八景キャンパス YCUスクエア ピオニーホールにて、平成30年度前期に海外フィールドワークを実施したグループによる、合同帰国報告会を開催しました。今回プレゼンテーションを行ったグループは前期渡航の10グループのうち3グループで、各グループ約15分間のプレゼンテーションと、5分程度の質疑応答がありました。当日の出席者数は、参加学生と教職員計41名でした。
 
 始めに五嶋副学長から、「今回の報告会では、参加されたグループの代表の方に発表していただくが、発表者以外の学生にも発表者とは異なる感想があると思うので、積極的に追加の報告をしたり、活発なディスカッションをしたりしてほしい。」と開会の挨拶がありました。

 報告会後には窪田学長より、「今日は3つのグループに発表してもらったが、自分たちが体験したことだけでなく、他の学生がどのようなことを体験し、学んだのかということを知ることも面白いと思うし、非常に良いことである。皆さんはそれぞれ準備や危機管理をされてフィールドワークに臨んだと思うが、正直なところ、少しスケジュールがタイトだと感じたが、それもよい経験だと思う。海外フィールドワークではそれぞれ色々な所へ行って、色々なことを感じてくるという多様性を大事にしている。最初の発表グループは、多様な言語・文化をどのように残しながらこれから変わっていくのか、応用言語学を通じて学んだことがよく分かった。2つ目のグループは、フィリピンと日本の違いを認識し、どのような要因があるのかを実地で認識したことは非常に大事だと思う。日本は40~50年前はフィリピンのような状態であったと思うが、私たちを含めた医療者や社会、行政が非常に努力をしてきた。フィリピンはこれからだと思う。最後のグループは、イタリアの歴史や、現地の大学の教員・学生がどのような考えを持っているのかがよく分かったと思う。日頃の学修だけでは学べないことを皆さんよく学んで来たと思う。今日の発表会では敢えて厳しい質問をしたが、私が感心したのは皆自分の考えをしっかり答えられるようになっており、教育の成果が表れていると感じた。海外フィールドワークに行くことも大事だが、こういう場で厳しい質問に自分の言葉で答えることも非常に大事である。これからは自分から質問するという訓練をぜひやっていただくとよい。皆さん総じてよくやって来られたと思う。」というお言葉をいただきました。

 また、重田副学長からは「海外フィールドワークは年々レベルが上がってきており、しっかりと事前学習、危機管理を行い、現地でもしっかりとディスカッションをして自分で何か掴んでくるというのができていると思います。本学のグローバル教育がだんだん花咲いて形になってきている。今回参加された方は、この次にこの経験をうまく生かしてほしい。本学の100周年に向かって、グローバル人材の育成の中でこういった事業を広げていきたいと思うので、これからも皆さんには海外に出て行ってもらいたい。」というお話がありました。
左から五嶋副学長、窪田学長、五嶋副学長 左から五嶋副学長、窪田学長、五嶋副学長
尚、当日資料として配布した全グループの報告書を金沢八景キャンパス3か所(いちょうの館エントランスホール、学生交流ラウンジ、学術情報センター1階)、福浦キャンパス3か所(基礎研究棟 渡り廊下掲示板、看護教育研究棟 掲示板、医学情報センター)の海外FW特設コーナー及び鶴見キャンパスキャリア支援室、舞岡キャンパス事務室に配架しています。ぜひご一読いただくとともに、教職員で必要な方は、金沢八景キャンパス学術企画担当までご連絡ください。

発表グループは以下の通り(発表順)です。

学部・研究科 コース・学科・専攻 引率教員
(敬称略)
渡航先 渡航期間 参加
人数
国際総合科学部 国際文化 土屋 慶子 スコットランド(エディンバラ、スターリン) H.30.8.16-8.24 7名
医学部 看護 佐藤 いずみ
飯田 真理
フィリピン(イロイロ、マニラ) H.30.9.5-9.12 20名
生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻 橘 勝
ミケレット ルジェロ
イタリア(ベネチア、パレルモ) H.30.9.8-9.16 18名

以下、発表の様子です。

国際総合科学部 国際文化コース 土屋グループ

土屋グループは、スコットランドのエディンバラ・スターリンを訪れ、J-CLILのワークショップに参加しました。
CLILは日本語で内容言語統合学習と呼ばれ、Content、Communication、Cognition、Cultureの4つのCを大切にしています。内容とそれを通した言語にアプローチし、学習者の思考を大切にしながら学習を進めていくもので、主にヨーロッパで推進されています。
事前学習としては、8月10日のSUMMER SESSIONで、現地でのワークショップのプレゼン練習を行いました。また、フィールドワーク期間内に巡る遺跡や建造物までのルートや交通機関を調べ、市街視察計画を立てました。加えて、現地でのワークショップで発表される先生方の文献を事前に読みました。
 渡航中の危機管理としては、自分たちでスケジュールや体調、貴重品の管理を行いました。
エディンバラ到着後は市街、スコットランド国立博物館、エディンバラ城、ホリールード宮殿視察、シェイクスピアの演劇鑑賞を行いました。スターリンでは、スターリン大学訪問、市街視察、J-CLILワークショップ参加、The National Wallace Monument視察等を行いました。
 J-CLILのワークショップでは、学会参加者のプレゼンテーション聴講、土屋ゼミ学生のプレゼンテーション、教育カリキュラム等を考えるワークショップを行いました。CLIL教育法の今後の展望と問題点等についてエディンバラ大学 Do Coyle教授からレクチャーを受けた後、話し合いながら考えていきました。実践型ワークショップには、土屋先生やゼミの学生も参加しました。大学教員や小学校~高校の先生等が参加する学会に我々学生が参加するという貴重な体験をすることができました。ゼミ学生のプレゼンテーションでは4つのグループに分かれ、World Englishes、Bilingual Education、Scottish Languages、CLIL in Primary Educationをテーマとした発表を行いました。
事後学習として、プレゼンテーションのやり方や内容について現地で撮影した動画を見ながら振り返ると共に、報告書の作成を行いました。今後は各学生が「マイノリティ言語の教育について」「スコットランド国民の帰属意識について」「多元腰用の実例」「複合リテラシーに加わる新しいリテラシー」等テーマを設定し、研究を進めて行きます。ゼミ生の中には英語の教員を目指している学生もいるので、今回の海外フィールドワークはとても貴重な経験になりました。

医学部 看護学科 佐藤・飯田グループ

佐藤・飯田グループは、フィリピン共和国のイロイロ市、マニラ市を訪問しました。
事前学習では、食や地理情報等の特性だけでなく、専門的な視点から周産期の死亡数、健康寿命等について学習しました。周産期死亡数についてはフィリピンと日本との間に大きな差が見られ、健康寿命についても10~15歳の差が見られます。
危機管理については、渡航前の予防接種の徹底、海外旅行保険への加入、現地においては絆創膏・常備薬等の処置用物品を持ち歩く、グループ毎にこまめに点呼を取るなどを行い、安全なフィールドワークに努めました。
 イロイロ市役所には、デイルームやヘルスセンターと呼ばれる診療所や薬局、保育園が併設されていました。施設の見学後、現地の医療者からイロイロ市の現状についてお話を伺いました。イロイロ市では無料で受けられる予防接種の普及により乳幼児死亡数が減少傾向にある一方で、自宅出産による出産中の妊婦の死亡数が増えていることが問題視されています。フィリピンの社会保険制度は全ての人が恩恵を受けられるものではなく、自宅出産を選ばざるを得ない妊婦が居ることから、このような状況が生じています。
次に、Arevalo Health Centerにおける妊婦検診の様子を視察しました。日本では子宮形状、腹囲、血圧の測定、血液検査、超音波検査、食事や生活に関するアドバイスを行います。一方でフィリピンでは、4回受ける検診のうち2~3回は大きな病院で有料のエコー検査を受けますが、訪問したセンターでは画像での検査が無く、胎児の心音の聴取、腹囲の計測のみ行われていました。フィリピンでは2017年より妊婦全員に母子健康手帳が配布され、普及が進んでいるものの、運用が統一されておらず、全ての母親に同じ質の医療が提供されているとは言い難い状況です。フィリピンでも日本のように妊婦に対して様々な知識を提供する知識提供型の母子手帳が作られ、それが地域を超えて幅広く母親たちに普及することが乳幼児死亡に貢献するのではないかと考えられます。
 また、卒業研究の一環で、検診に訪れた妊婦2名と医療従事者にインタビューを行いました。調査の結果、妊婦のセルフケア行動はあまり見られませんでしたが、家族計画については自分の年齢を踏まえて考えられていました。また、妊婦は安全な出産を求めているものの、定期的な妊婦検診のみで満足しており、医療に対しての依存的信頼が見られました。一方で、平等で質の高い医療が提供されているとは言い難く、医師や看護師の国外流出が深刻なため質の向上は難しいのが現状です。行政の取組としては、結婚、妊娠、出産に関する教育のほか、病院での出産を義務付け、病院以外で産まれた子どもは戸籍を取得できないという制度があります。
 次に訪れたバランガイでは診療所訪問や衛生教育を行いました。フィリピンでは生活習慣病患者が増加傾向にあるとのお話があり、その予防に対する医療についても今後フィリピンが取り組んでいくべき問題の一つであることを感じました。
 ここでも、卒業研究の一環で、育児経験のあるフィリピン人の母親20名程度にアンケート調査を行いました。調査の結果、手洗いうがいの重要性については理解が進んでいることが分かりました。母乳育児については、全ての母親が母乳育児を経験しているものの、感染予防行動として母乳を与えているかどうかは「常に行っている母親」と「全く行っていない母親」に大きく分かれ、母親により意識が大きくなることが分かりました。
 マニラではフィリピン大学の学生と「生活習慣病」と「ドリームシティー」をテーマとしたディスカッションとプレゼンテーションを行いました。フィリピンでは、女性の晩婚化・晩産化の進行や、産後うつの知名度上昇の一方でケアが不十分であること、大家族で住むことや家政婦を雇うことが一般的で育児負担が小さいという現状があり、今後は国の発展に伴い日本の現状に近づくことが予想されるということが分かりました。
 続いて、WHO(WPRO)を訪問し、日本人スタッフからWHOの基本情報や結核対策・タバコ対策、緊急危機管理部署の活動に関するお話を伺いました。次に、IACSCカンファレンスに参加し、飯田先生や現地の研究者の発表を聞きました。
 今回の海外フィールドワークでは、フィリピンの母性看護に関することをはじめ、多くの学びを得ることができました。今後は、「今回の経験を基に今後のキャリア形成に生かすこと」、「多くの人にフィリピンの課題と現状を伝え、知ってもらうこと」、「自分たちと異なる環境や文化の患者への柔軟な看護に生かすこと」、「日本での恵まれた生活・学習環境に感謝し、一層学業に励むこと」に力を入れていきたいです。

生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻 橘・ミケレットグループ

 橘・ミケレットグループは、「海外の研究者を相手に研究する知見や魅力を発信し共有する」、「グローバルな研究マインドを身に付ける」、「イタリア文化を体感する」という目的で、イタリア ベネチアとその周辺地域を訪問しました。
 危機管理として、各自が責任ある行動を取ることを意識し、スリに注意すること、個人行動を避けること、連絡手段を確保することに気を付けました。
 ベネチア大学の訪問では、構内散策の後、透過型電子顕微鏡やX線回折装置の視察や企業と共同で創薬研究を行っている研究室紹介を受けました。研究発表では8名の学生が発表を行い、ベネチア大学の先生方から的確なアドバイスや質疑をいただき、とても勉強になりました。
 パドヴァ大学では、研究発表とディスカッション、旧校舎・植物園の見学を行いました。研究発表では1人5分間で英語で発表を行った後、ディスカッションを行いました。旧校舎の見学では、現在は使われていない人体解剖室や会議室を見学しました。また、世界でも古く、世界遺産に登録された植物園や、物理学の起源を知ることのできる物理学歴史博物館も見学しました。
 その他、ベローナのアレーナ・ディ・ベローナやベネチアの島々を観光し、ベネチアには世界遺産が数多くあり、日本とは違う歴史や文化を実際に目で見て体感することができました。
 今回のフィールドワークでは、各自がしっかりと注意し、連絡を取り合うことで、大きなトラブルなく無事に終えることができました。また、ベネチア大学では研究交流だけでなく、研究室の様子も知ることができ、日本との違いを感じることができました。パドヴァ大学では長い歴史の中で蓄積された様々な実験道具や施設を見学することができました。観光では、日本とは異なる様式の古い建築物や街並み、イタリアの様々な伝統工芸品を見ることができました。また海外フィールドワーク全体を通じて、日本では様々な国の料理を美味しく食べられるため日本の食文化はすばらしさを感じました。

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