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【開催報告】平成30年度 第一回海外フィールドワーク合同帰国報告会

【開催報告】平成30年度 第一回海外フィールドワーク合同帰国報告会

6月11日(月)14:45~15:30、金沢八景キャンパス YCUスクエア ピオニーホールにて、平成29年度後期に海外フィールドワーク(以下、海外FW)を実施したグループによる、合同帰国報告会を開催しました。今回プレゼンテーションを行ったグループは後期渡航の7グループ中計2グループで、1グループ約15分間のプレゼンテーションと、5分程度の質疑応答がありました。当日の出席者数は、参加学生と教職員をあわせ51名でした。
 
始めに重田副学長から、「海外フィールドワークは当初、まずは皆さんに海外に出てみてほしいということで幅広い内容で行っていたが、最近は質が向上しており、現地の方と意見交換をしたりしっかりと資料を調べたりして、大変充実した内容になっている。今回発表する2グループも充実した内容であったと思うので、フィールドワークで得たものを話していただきたい。」と開会の挨拶がありました。

報告会後には五嶋副学長より、「報告を聞いてとても勉強になった。皆さんが経験されたことがこれからも活きていくんだろうなと感じさせるお話だった。7グループ中2グループのプレゼンテーションを聞くことができたが、私としては皆さんの経験を聞いてみたい。周囲の方にもぜひ報告会に参加するよう勧めてほしい。」というお言葉をいただきました。 
左から重田副学長、五嶋副学長 左から重田副学長、五嶋副学長
尚、当日資料として配布した全グループの報告書を金沢八景キャンパス3か所(いちょうの館エントランスホール、学生交流ラウンジ、学術情報センター1階)、福浦キャンパス3か所(基礎研究棟 渡り廊下掲示板、看護教育研究棟 掲示板、医学情報センター)の海外FW特設コーナー及び鶴見キャンパスキャリア支援室、舞岡キャンパス事務室に配架しています。ぜひご一読いただくとともに、教職員で必要な方は、金沢八景キャンパス学術企画担当までご連絡ください。

発表グループは以下の通り(発表順)です。

学部・研究科
 
コース・学科・専攻 引率教員
(敬称略)
渡航先 渡航期間 参加
人数
国際総合科学部 経営学 芦澤 美智子 フィリピン(セブ) H.30.2.13-9.19  10名
国際総合科学部 社会関係論 滝田 幸子 イタリア(ローマ、トリエステ、ヴェネチア) H.30.2.13-2.23 13名

以下、発表の様子です。

国際総合科学部 経営学コース 芦澤グループ

芦澤グループは、「現地メンバーと共同で会社を設立し、事業計画の作成や会社経営を行うことを通じて、実践的でインクルーシブなビジネスを体験し、グローバルに対応可能なスキルを習得すること」を目的に、フィリピンのセブでフィールドワークを実施しました。
芦澤ゼミでは「全員リーダーシップ」を掲げ、一人一人が主体的に行動し、リーダーシップを取ることを目指しています。
今回訪れたフィリピンのセブ島にあるロレガは典型的なスラム街で、芦澤ゼミは過去4回訪れています。現地では「Waku Work English」という企業の社会課題解決プロジェクトに参画し、フィリピンメンバーと共にビジネスセミナーを開催しました。
現地調査では、普段の生活では気付けない、現地のインフラの状況や人々の価値観等を知ることができました。日本とロレガでは起業やマネジメントに対して抱くイメージが異なり、ロレガの人々はビジネス意識が低いということが分かり、「現地の人々のビジネス意識を高めたい」という目標を掲げて活動を進めました。
当初、現地メンバーとのやり取りはぎごちない雰囲気でしたが、「チェックアウト」を通じて一人一人が「全員リーダーシップ」を発揮しながら活動を振り返り、気持ちを言語化し、共有したことで、お互いの壁を取り払い、本当のチームになることができました。
現地の人々のビジネス意識を高めるために、「4PのPlace・Promotionを工夫して成功した経験を伝える」ということを目指しました。現地の商店で歩き売りや看板を立てる等の販売促進活動を行ったところ、普段では見られないような大きな売り上げを出すことができました。この経験を現地の人々にプレゼンテーションをしたところ、熱心に聞いてもらえ、「ビジネスは楽しいものではないと思っていたが、4Pなどの経営の理論を用いて主体的に活動したら楽しく思えた!」といった感想があったことから、ビジネスに関する意識の変化が生まれたと感じました。同様の経験を今後設置予定の「Waku Business School」でも提供することができれば、より多くの現地の人に対してビジネスへの意識の変化を生み出すことができると確信しました。
今回のフィールドワークを通じて、「現地に行くことの重要性」と「お互いを尊重し合い、話し合うことの重要性」を学びました。三上グループは、イタリアのローマにて、「カタコンベや初期の教会・洗礼堂見学を通じ、死とは何か、生とは何かを歴史的に、かつ具体的に考察すること」を目的に、フィールドワークを実施しました。ローマのバチカン市国では、博物館やサンピエトロ大聖堂を訪問し、実際にミサを見学する機会にも恵まれました。また、複数のカタコンベに足を運ぶという経験もできました。参加した学生からは、「カタコンベは現代の墓と同じように、家族ごとの単位に仕切られており、宗教の根源と家族の関係性について思いを馳せることが出来た。」「キリスト教とは関係もなく描かれる日常の風景から、死を土台として生が成り立っているのではないかと感じた」等、死生観や個々人の研究テーマをより深めることへと繋るフィールドワークとなりました。

国際総合科学部 社会関係論コース 滝田グループ

滝田グループは、「イタリアの精神医療システムの現在、ユダヤ人に関する歴史、イタリアの若者の現在の3点を中心にイタリア社会と日本社会の比較を行う」ことを目的として、イタリアのローマ、トリエステ、ヴェネチアでフィールドワークを実施し、それぞれの都市で精神医療に関する施設を訪問しました。
私たちは多くのゼミ生が受講していた『障害者福祉論』をきっかけに日本やイタリアの精神医療に興味を持ち、イタリアの社会や歴史にも興味が派生していきました。事前に文献や映像資料を用いて理解を深め、そこに登場する都市等を訪問地に決めてフィールドワークの計画を立て、実現しました。
危機管理の取組としては、Wi-Fiを用いた連絡のとれる環境づくり、複数人行動、スケジュール管理、体調管理、スリへの警戒を心がけていました。
ローマでは、宗教を知ることは相手の文化を知る上で重要であると考え、キリスト教の世界観を肌で感じることを目的としてバチカン市国、コロッセオ等を訪問しました。バザーリア法施行後、使われなくなった精神病院を博物館にした施設を訪問しました。若い人にも精神病院の実際に興味を持ってもらうため、映像や音など体験型の物を多く用いた展示がなされていました。
トリエステはイタリア精神医療改革の中心地として栄えています。サン・サバ強制収容所は、アウシュビッツへの輸送中間点となっており、他の収容所より犠牲者は少ないですが、ここで起きた出来事に対する反省が深く行われている場所でした。次に訪れたサン・ジョバンニ公園には、元々は精神病院やその患者の住む家がありましたが、精神科医で病院長であったバザーリアが、地域での生活を軸とした精神病患者の治療システムを作る実践の場としていました。公園内には元精神病患者が設立し、今は社会協同組合が運営しているラジオ局や工房もありました。
ヴェネチアでは交換留学協定を結んでいるカフォスカリ大学の教授に街を案内していただきました。かつて精神病患者の隔離場所として使われていた島には、精神病院の博物館や大学・大学の寮等があり、YCUから交換留学で訪れている学生もこの島で学んでいるそうです。カフォスカリ大学の学生との交流会では、学習で使用した著書の感想を体で表現したダンスの披露やディスカッションを行いました。また、ユダヤ人博物館も訪問しました。
事後学習では、滝田ゼミに在籍しているイタリアとオーストリアの留学生と共に文化・障害・宗教・戦争・教育等に関する捉え方や社会のあり方について理解を深めています。イタリアで学んだ日本との大きな違いは「NORMALとは?」ということで、ヨーロッパでは「一人一人が違う」という認識がありますが、日本では、「普通でありたい」とか「普通じゃないとおかしい」というような認識の違いが大きくあって、どちらがいい社会なのだろうかということを考えています。その他にも沢山の問いが浮かんできたので、今後の個人の学習や研究に発展させていきたいです。佐藤グループは、学年毎に目的を定め、2年生においては「開発途上国における母子保健の現状と課題を理解し、現地の学生や地域住民との交流・異文化体験をすること」、「行政やWHOの実際の活動等への学びを通し、国際看護の視点を養うこと」、4年生においては「周産期死亡率が高いフィリピンにおいて、産褥期の健康教育の現状について調査すること」をそれぞれ目的として、フィリピンのイロイロ市や、マニラ市でフィールドワークを実施しました。
地方自治区であるバランガイコミュニティのクリニックや保育園を訪問し、歌や劇を用いて手洗いや歯磨きについての健康教育を行いました。また、現地の看護学生と交流し、教室での授業風景や研修の様子を見学したり、ペアを組んで医療や学校生活について、意見交換をする機会にも恵まれました。最終日にはWHO西太平洋地域事務所を訪問し、世界での母子保健の現状や、途上国支援の実際について、理解を深めることが出来たとの報告がありました。

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