2025年度科研費助成事業【基盤研究(S)】採択について(生命ナノシステム科学研究科 立川 仁典 教授)
横浜市立大学 生命ナノシステム科学研究科 立川 仁典 教授 の研究が、日本学術振興会(JSPS)2025年度科学研究費助成事業【基盤研究(S)】に採択されました。
基盤研究(S)は、独創的、先駆的な研究を格段に発展させるために設けられている研究種目で、研究期間は原則として5年間、研究費の申請総額は5,000万円以上2億円以下という大型研究種目です。2025年度は全体で69件が、大区分E(化学分野)で7件が採択されました。
基盤研究(S)は、独創的、先駆的な研究を格段に発展させるために設けられている研究種目で、研究期間は原則として5年間、研究費の申請総額は5,000万円以上2億円以下という大型研究種目です。2025年度は全体で69件が、大区分E(化学分野)で7件が採択されました。
研究課題名


In silico の先導による重水素化医薬品の理解と設計指針の構築 (In silico 重水素科学)
Understanding deuterated medicine and its design guideline via “in silico” techniques (In silico deuterium science)
Understanding deuterated medicine and its design guideline via “in silico” techniques (In silico deuterium science)
研究概要
「水素」って最近なにかとよく聞きますが、水素の中には重たい水素(重水素)があるんです。この重水素を上手に活かすことによって、私たちの暮らしや健康にとても役立つことが知られています。例えば、ある薬の水素の一部を、この重水素に置き換えることによって(重水素化医薬品と言います)、薬の効果が増大します。薬によっては、1日の服用回数が3回から2回に減った例もあり、患者さんの負担が大きく軽減されます。しかしながら、「なぜ」重水素で薬の効果が効くようになるのか、その理由は全く分かっていません。そこで本研究課題では、私が独自に開発してきた最先端の量子計算シミュレーション技術やAI技術(In silico技術と言います)とスーパーコンピュータ富岳を駆使することで、この重水素の不思議な力を解明します。重水素の不思議を解明することができたら、新しい重水素化医薬品や重水素化材料を設計・開発することも可能と考えます。そのため、本研究課題の成果は、学術のみならず産業技術の分野にも大きく波及します。




立川 仁典 教授 プロフィール
<経歴>
平成 7年 早稲田大学大学院 理工学研究科化学専攻修了・博士(理学)取得
平成 7~8年度 早稲田大学 理工学総合研究センター 講師 (専任)
平成 9~11年度 日本学術振興会特別研究員 (PD) @Emory大学、立教大学
平成12~14年度 理化学研究所 基礎科学特別研究員
平成15~18年度 横浜市立大学 助教授
平成18年度~ 横浜市立大学 教授
この間、平成15年~18年度 科学技術振興機構 さきがけ研究員 (兼務)
<受賞歴>
2007年4月 平成19年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞(公立大学初!)
2018年6月 平成30年度日本コンピュータ化学会学会賞
2019年9月 第4回(2019年度)分子科学国際学術賞
2022年10月 第9回「富岳」を中核とするHPCIシステム利用研究課題優秀成果賞
コメント
本申請課題を評価していただき大変ありがたく思っております。本申請課題が採択されたのは、当研究室のスタッフ・OBOG、さらには日頃から共同研究を行っている有機合成化学、生物物理化学、物性化学、分析化学の先生方、また本学URA部門のおかげです。ここで改めて感謝申し上げます。
当研究室では、「量子」と「水素」をキーワードに、世界に先駆けて、横浜発の新しい量子計算技術やAI技術(In silico技術)を開発・実装してきました。最近では、スーパーコンピュータ富岳を利用することにより、海外研究者との共同研究や産学連携研究も積極的に実施しています。基盤研究(S)の5年間では重水素医薬品をターゲットにし、学術的「問い」である「重水素化学の理解と重水素効果の発現機構の解明」に取り組んでまいります。本研究の波及効果として、国際競争が極めて激化し始めた「重水素化材料への展開」も視野に入れております。
当研究室では、「量子」と「水素」をキーワードに、世界に先駆けて、横浜発の新しい量子計算技術やAI技術(In silico技術)を開発・実装してきました。最近では、スーパーコンピュータ富岳を利用することにより、海外研究者との共同研究や産学連携研究も積極的に実施しています。基盤研究(S)の5年間では重水素医薬品をターゲットにし、学術的「問い」である「重水素化学の理解と重水素効果の発現機構の解明」に取り組んでまいります。本研究の波及効果として、国際競争が極めて激化し始めた「重水素化材料への展開」も視野に入れております。