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KAI2由来生理現象解明を可能にするKAI2阻害剤を発見
—作物の潜在的な能力応用へ—

概要

東京大学大学院農学生命科学研究科の浅見忠男特任研究員(横浜市立大学木原生物学研究所客員教授兼東京大学名誉教授)と京都大学大学院生命科学研究科の宮川拓也准教授らによる研究グループは、煙由来分子カリキン(KARs)の受容体「KAI2」を選択的に阻害する最初の化合物を開発し、その結合様式を明らかにしました。このトリアゾールウレア型化合物である「KK181N1」は、KAI2に非共有結合的に結合し、モデル植物であるシロイヌナズナのKARs誘導性形質を選択的に抑制することができます。さらに、KK181N1はKARs受容体と類似した機能や化合物受容性を持つストリゴラクトン(SLs)受容体「D14」を介したSLs信号には作用せず、KARs信号に特異的に拮抗することが確認されました。この発見により、類似した作用を示すKARsとSLsの生理機能を区別することが可能となります。本研究は、KARsの基礎研究および農業応用への新たな展望を示しています。

この研究成果は、国際科学雑誌Nature Communicationsに掲載されました(2025年1月2日)。

発表のポイント


● 植物が燃焼する際に生じる煙由来分子として植物の成長と発達を制御するカリキン(KARs)の受容体KAI2に選択的に作用する世界初の阻害剤KK181N1を開発し、その結合様式を明らかにすることでKAI2機能解明を可能にしただけでなく、さらなる高活性型KAI2阻害剤創製の道筋を示すことに成功しました。

● KAI2阻害剤の発見により、互いの作用が似ているためにこれまでは単独の機能解析が困難であったKARs信号とストリゴラクトン(SLs)信号により生じる生理現象の違いを明確に示すことを可能にする世界初の化学ツールを提供することができました。

● この化合物を応用して多様な作物におけるKAI2受容体の機能を解明することで、作物の生育を促進させたり、ストレス耐性を高めたりといった、作物の潜在的な能力を引き出すことが期待できます。

KAI2阻害剤KK181N1の構造(上段)とカリキン(KAR2)の胚軸伸長抑制効果を打ち消すKK181N1の効果(下段)

論文情報

タイトル:Identification and structure-guided development of triazole urea-based selective antagonists of Arabidopsis karrikin signaling
著者:Jianwen Wang, Ikuo Takahashi, Ko Kikuzato, Toshihiko Sakai, Zhangliang Zhu, Kai Jiang, Hidemitsu Nakamura, Takeshi Nakano, Masaru Tanokura, *Takuya Miyakawa & *Tadao Asami
掲載雑誌:Nature Communications
DOI: 10.1038/s41467-024-54801-1

お問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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