第1期 平成19年度採択 研究開発プロジェクト
戦略的中核プログラム「がんの制圧に向けた開発型研究」(がんの予防)
細胞極性研究によるがんの克服(乳がんの予防と治療に向けた新戦略)
医学研究科 教授(分子生物学)大野 茂男
045-787-2596
日本人女性の30人に1人がかかる乳がんの克服、特に乳がんの早期発見に向けた新たな戦略の構築が我が国の国民的な課題の一つとなっている。
私たちは、乳がんの発症前の状態を摸擬するモデルマウス、さらにヒト乳腺上皮細胞モデルの作成に成功した。この二つの独自のモデル系を用いることにより、乳がん発症の初期過程を詳細に解析して発がん機構に迫ると同時に、現在困難とされている乳がんの初期診断を可能とする新たなバイオマーカーの開発を行う。
これに加えて、細胞へのナノ粒子の取り込みを利用した新たな製剤の実用化の可能性を探る。
私たちは、乳がんの発症前の状態を摸擬するモデルマウス、さらにヒト乳腺上皮細胞モデルの作成に成功した。この二つの独自のモデル系を用いることにより、乳がん発症の初期過程を詳細に解析して発がん機構に迫ると同時に、現在困難とされている乳がんの初期診断を可能とする新たなバイオマーカーの開発を行う。
これに加えて、細胞へのナノ粒子の取り込みを利用した新たな製剤の実用化の可能性を探る。
がんの予防と制御を目指した基盤技術開発
医学研究科 教授(泌尿器病態学)窪田 吉信
045-787-2679
がんの予防と制御に向けた分子標的の分析と具体的な薬剤や方法の開発を3つの課題を中心に進める。
- アンジオテンシンIIレセプターブロッカーによる前立腺がんの化学予防効果の解析と応用の研究
- Peroxisome Proliferator Activator-γ(PPARγ)リガンドの作用解析に基づく大腸化学発がん予防法の開発研究
- 細胞外マトリックス分子の作用解明とそれにもとづくがんの増殖制御や転移の予防法の開発研究
戦略的中核プログラム「がんの制圧に向けた開発型研究」(がんの診断)
遺伝子情報に基づいたがん(膵がん、腎がん)のオーダーメード医療の開発
医学研究科 准教授(泌尿器科学)矢尾 正祐
045-787-2679
これまでがんの診療は主に病理診断に基づいて行われてきたが、個々のがんで起きている様々な遺伝子の変化を検出することで、新たな重要な情報が得られることが最近の研究より示されている。よりよい医療の実現のためにはこれらの遺伝子情報をも加味したオーダーメード医療の開発が不可欠と考えられ、今回我々は以下の研究を計画した。
1)膵がん患者の微小な転移を術中迅速遺伝子変異検出により行いその結果により術式を変更する。
→がんの取り残しがより少なくなる手術が行えるようになる。
2)腎がん患者のがん組織の遺伝子発現型を評価し、転移の出現や予後、腫瘍亜型に密接に関連する遺伝子群を同定する。
→これらの遺伝子型より腎がんの診断チップを作成する。
1)膵がん患者の微小な転移を術中迅速遺伝子変異検出により行いその結果により術式を変更する。
→がんの取り残しがより少なくなる手術が行えるようになる。
2)腎がん患者のがん組織の遺伝子発現型を評価し、転移の出現や予後、腫瘍亜型に密接に関連する遺伝子群を同定する。
→これらの遺伝子型より腎がんの診断チップを作成する。
プロテオミクスによるがんの新規バイオマーカーの開発
国際総合科学研究科 教授(生体超分子科学)平野 久
045-508-7439
診断マーカーや創薬ターゲットになるタンパク質を高感度、高精度かつハイスループットで検出・同定・評価するため、質量分析技術を中心にした最先端のプロテオミクス解析技術の開発を行う。また、開発された技術を応用して卵巣がん、前立腺がんなどで発現が変動するタンパク質を網羅的に検出・同定し、それらが診断マーカーあるいは創薬ターゲットとして利用できるかどうか評価する。一方、リン酸化タンパク質に結合してその機能を調節するプロリン異性化酵素Pin1と相互作用するリン酸化タンパク質を網羅的に検出・同定し、検出されたタンパク質と乳がん、腎がん、大腸がんなどとの関係を明らかにする。
戦略的中核プログラム「がんの制圧に向けた開発型研究」(がんの治療)
がん幹細胞を標的とした革新的がん治療法の開発
医学研究科 教授(臓器再生医学)谷口 英樹
045-787-2621
最近、様々ながんにおいて、腫瘍を構成する階層的な細胞社会の起点となる“がん幹細胞(cancer stem cell)”が次々と同定されている。すなわち、がん細胞中には様々ながん細胞が存在することが判明し、腫瘍形成能を有しない多くのがん細胞中に、極少数の腫瘍形成能を有する特別な “がん幹細胞”が存在していることが明らかになりつつある。この“がん幹細胞”は発がんやがんの再発・転移に深く関与していると考えられており、この細胞を標的とした革新的癌治療法の開発に向けて世界的な研究開発競争が繰り広げられている。世界トップレベルの細胞分離技術を駆使して、“がん幹細胞”の実体を明らかにし、それらを狙い撃つ新しいがん治療法の開発を目指している。
創造的プログラム「生活習慣病や免疫・アレルギー疾患等の克服に向けた開発型研究」(免疫アレルギー疾患の克服に向けて)
エイズワクチンの実用化研究
医学研究科 准教授(微生物学)島田 勝
045-787-2602
エイズ研究は長年に渡り世界中でおこなわれているが、エイズに対するワクチンは未だ完成されていない。そこで、我々はエイズに対するワクチン開発をおこなっている。このワクチンは、ヒトの体内で増殖しないアデノウイルス及びワクチニアウイルスを遺伝子の運び屋として使用したウイルスワクチンで、もっとも優れたワクチンである。この技術に関して特許を取得し、平成20年に中国およびインドで臨床試験を開始する予定である。この結果をふまえ、横浜市立大学発のエイズワクチンを世界に向けて発信することが本研究の最終目標である。この目標の達成によって、エイズを克服し、世界中の人々に大きな安心をもたらすことを期待する。
網羅的自己抗体解析による新規バイオマーカーの開発
医学研究科 教授(分子病理学)青木 一郎
045-787-2587
従来の技術では一度に検索できる抗体の種類は最大数百種類に限られていたが、共同研究者である澤崎らは数万種類のタンパク質に対しての抗体を一度に高速高感度で測定できる技術を開発した。その技術を利用し、種々のヒト疾病における血清中の自己抗体産生パターンを網羅的に検出・解析できる技術を確立すると共に、得られるデータベースをもとに疾患の予後予測や治療法選択に有用なバイオマーカーの開発を本研究では目的とする。研究対象とする疾病は多岐に亘り、乳がん、前立腺がん、大腸がんなどの悪性腫瘍、生活習慣病の基盤となる動脈硬化症、自己免疫によると考えられているが有用な自己抗体が未知である難病のベーチェット病、原田氏病などである。
創造的プログラム「生活習慣病や免疫・アレルギー疾患等の克服に向けた開発型研究」(生活習慣病の克服に向けて)
生活習慣病関連遺伝子に基づくオーダーメード医療の展開
医学研究科 教授(遺伝学)松本 直通
045-787-2606
生活習慣病は多数の遺伝子が関与する多因子遺伝病である。近年、遺伝学的解析手法の環境が整い種々の生活習慣病の関連遺伝子の同定とそれらを応用した診断・予防の戦略、ならびに関連遺伝子の機能から治療に向けた研究展開が重要である。本プロジェクトでは、生活習慣病の克服を目指して、解離性大動脈瘤や神経精神疾患などを対象に疾患責任・関連遺伝子の同定を行い、同定された関連遺伝子情報から確実な診断・予防法を確立することを目的とする。責任・関連遺伝子が判明すればその機能解析を行うことで新たな創薬・治療法の開発が可能となる。さらに責任・関連遺伝子情報を用いて個別症例の遺伝情報に基づいたオーダーメード医療の展開が可能である。
生活習慣病予防管理支援のための市民健康ネットワーク(ICT)構築と生活習慣病関連遺伝子解析に基づくオーダーメード医療の展開
医学研究科 教授(循環器・腎臓内科学)梅村 敏
045-787-2635
わが国で数千万にもわたる生活習慣病(がん、高血圧症、糖尿病等)の予防、管理、治療を目的とする。自宅やいつどこでも簡単に、被験者の負担が少なく測定できる生体情報測定センサーの開発と、それらを通信で送り、診断、指導していく健康ネットワークを作成する。関連遺伝子解析、アミノ酸分画による早期がんやメタボリックシンドローム診断のマーカーとしての活用、膵β細胞を増加させる糖尿病新規治療法の開発、新規本態性高血圧症感受性遺伝子の同定等を通して、動脈硬化性疾患やがんのオーダーメードな予防、治療を実施する。これらの実施により、脳血管障害による寝たきり患者の削減、がん死亡患者の削減、透析等で大量の医療費を消費する糖尿病患者の削減が期待される。