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急性心不全入院患者におけるARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)内服後の血圧変化を詳細に報告

横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学の永広尚敬医師(博士課程4年)、田村功一主任教授、医学部循環器内科学日比潔主任教授、小西正紹准教授らの研究グループは、急性心不全*1入院患者におけるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)*2内服後の血圧変化を詳細に解析した結果、入院中に有意な血圧低下作用が認められ、類似薬効のアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ACEi/ARB)*2と比較して、その低下度合いには差がないことを明らかにしました。

ARNIは2020年から使用可能になった新しい心不全治療薬で、いままで使用されていたACEi/ARBよりも有効性が高い薬剤ですが、血圧を低下させる作用が強く、血圧の下がりすぎが懸念されていました。しかし、欧米では心不全の入院期間は日本よりも短く、入院中の詳細な血圧の変化はわかっていませんでした。

本研究では、循環器内科学教室関連9施設に入院した166例の診療記録を解析しました。この結果、ARNIを使用した患者さんでは収縮期血圧が平均132mmHgから3日後に117mmHgまで、ACEi/ARBを使用した患者さんでは平均131mmHgから3日後に117mmHgまで低下していました。つまり、この2つのグループ間で血圧低下の度合いに差は認められませんでした。

本研究の結果は、急性心不全患者の入院中の薬剤選択に役立つことを示唆しています。

本研究成果は、英文誌「Hypertension Research」に掲載されました(2026年1月8日)。

研究成果のポイント


● 横浜市、神奈川県を中心とした9施設の急性心不全患者の観察研究を実施

● 入院中の収縮期血圧は、ARNI開始前132mmHgから3日後117mmHgへ、ACEi/ARB開始前131mmHgから3日後117mmHgへ低下し、薬剤による違いはなかった

● この結果は急性心不全患者の入院中の薬剤選択に有用であることが示された

図 研究概要

掲載論文

タイトル:Early drop in blood pressure following angiotensin receptor-neprilysin inhibitor initiation in decompensated heart failure
著者:Nagahiro T, Konishi M, Kikkoji E, Fukushima Y, Matsuzawa Y, Sato R, Okuda J, Sawada R, Tsukahara K, Takano K, Shimizu M, Saka K, Akiyama E, Iwahashi N, Misumi T, Hibi K, Tamura K, Kimura K.
掲載雑誌:Hypertension Research
DOI:https://doi.org/10.1038/s41440-025-02501-8

用語説明

*1 心不全(急性心不全):心不全とは、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」である。このような症状が比較的急に起こる状態が急性心不全で、入院治療が必要になる場合も少なくない。

*2 アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB):心不全や高血圧の治療に用いられる飲み薬。血管、心臓、腎臓などに作用するホルモンの働きを抑えることで効果を発揮する。

お問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
Mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
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