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大規模マラソン大会の安全管理モデルを構築 (横浜マラソン10年のデータ分析に基づく医療支援体制の有効性の検証)

概要

横浜市立大学 救急医学教室の小川史洋 講師らの研究グループは、2015年のフルマラソン導入以降、2024年までの横浜市民マラソンにおける医療活動のデータを後方視的に詳細に分析しました。

本研究は、約13万5千人のフルマラソン参加者に対する医療提供体制(救護所配置、AEDチームの展開など)の継続的な改善が、ランナーの健康被害にどのように影響したかを検証することを目的としました。
分析の結果、医療体制を年々見直し、特に暑熱対策やトリアージ体制を強化した結果、ランナー1,000人あたりの救護所受診者数(PPR*1)は安定し、病院搬送率(TTHR*2)は、天候による一時的な上昇を除き、改善傾向にあることが示されました。
特筆すべきは、研究期間中に発生した3件の心停止(Cardiac Arrest: CA)症例全てにおいて、現場での迅速なCPRとAED使用により、すべてのランナーが後遺症なく社会復帰したことです。この成果は、緻密な計画と多職種連携に基づく迅速なモバイルAEDシステムの有効性を世界に示しました。

本研究は、大規模イベントにおける医療支援の安全管理において、データに基づいた継続的な評価と改善が、参加者の安全確保に不可欠であることを示す貴重なモデルとなります。

本研究は、学術誌『Cureus』に掲載されました(2025年7月7日)

研究成果のポイント


● マラソン参加者における心停止3症例全てで、迅速な対応により後遺症なく社会復帰を達成

● 医療体制の継続的な改善の結果、病院への緊急搬送率が低下したことを確認

● 大規模イベントの安全確保には、データに基づいた医療プロトコルの評価・調整が不可欠であることを実証
図1 従来1人のリーダーがメンバー15名/1,000mで500名体制のBLS(Basic Life Support:一次救命処置)隊を形成していたが、COVID-19後は感染拡大防止の意味もあり、1人のリーダーが4名とバディーを組み5名1組で49チームのFR(First Responder:初期対応)隊を形成し、250名体制の救護チームを作り、効率化を測った。

論文情報

タイトル:Retrospective Study for the Safer Management for Citizens' Marathon: A Medical Support Perspective
著者:Fumihiro Ogawa, Riichiro Nakayama, Yusuke Nakayama, Yuji Yuasa, Tomohiro Kamagata, Kohei Takahashi, Ryosuke Furuya, Shouhei Imaki, Ichiro Takeuchi
掲載雑誌:Cureus
DOI:10.7759/cureus.87424

用語説明

*1  PPR(Patient Presentation Ratio):マラソン大会においてランナー1,000人あたりの救護所受診者数を示す指標

*2  TTHR(Transport-to-Hospital Ratio):救護所受診者100人あたりの病院搬送者数を示す指標


 

お問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
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