気管支喘息吸入治療薬の気道上皮に対する新たな可能性を解明 (LAMAが気道粘液過剰産生と線毛機能障害を直接改善するメカニズムを解明)
概要
横浜市立大学 救急医学教室小川史洋講師、竹内一郎教授、および呼吸器病学金子猛教授、らの研究グループは、喘息治療薬として広く使われている吸入薬(LABA、LAMA*1、ICS)が、従来の気管支拡張作用や抗炎症作用とは独立して、喘息の根本病態である気道上皮のリモデリング*2(構造変化)に直接作用するメカニズムを解明しました。
本研究では、ヒト気道上皮細胞を用いたin vitroの喘息モデル(IL-13刺激)を作製し、各薬剤の効果を超微細構造レベルで比較しました。
その結果、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)が、他の薬剤と比較して顕著な効果を示すことが判明しました。具体的には、LAMAは喘息で生じる粘液細胞の過剰な増殖を抑制するとともに、気道内の異物排出を担う線毛細胞の分化を促進し、線毛の長さ、密度、動きを回復させました。
一方、ICS(吸入ステロイド)やLABA(長時間作用型β2刺激薬)の単独または一部の併用療法では、粘液細胞の増殖を助長する傾向が見られました。
この成果は、LAMAが気道を広げるだけでなく、気道上皮の健康を維持する「ホメオスタシス維持薬」としての新たな役割を持つことを示唆しています。これにより、痰や咳が多く、気道閉塞が強い重症喘息患者に対するLAMA併用療法の有効性を裏付けるものであり、今後の個別化治療戦略の確立に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、学術誌『Biochemical and Biophysical Research Communications』に掲載されました(2025年9月11日)
本研究では、ヒト気道上皮細胞を用いたin vitroの喘息モデル(IL-13刺激)を作製し、各薬剤の効果を超微細構造レベルで比較しました。
その結果、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)が、他の薬剤と比較して顕著な効果を示すことが判明しました。具体的には、LAMAは喘息で生じる粘液細胞の過剰な増殖を抑制するとともに、気道内の異物排出を担う線毛細胞の分化を促進し、線毛の長さ、密度、動きを回復させました。
一方、ICS(吸入ステロイド)やLABA(長時間作用型β2刺激薬)の単独または一部の併用療法では、粘液細胞の増殖を助長する傾向が見られました。
この成果は、LAMAが気道を広げるだけでなく、気道上皮の健康を維持する「ホメオスタシス維持薬」としての新たな役割を持つことを示唆しています。これにより、痰や咳が多く、気道閉塞が強い重症喘息患者に対するLAMA併用療法の有効性を裏付けるものであり、今後の個別化治療戦略の確立に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、学術誌『Biochemical and Biophysical Research Communications』に掲載されました(2025年9月11日)
研究成果のポイント
● LAMAが気道上皮細胞に直接作用し、粘液過剰産生を抑制することを確認
● LAMAが線毛細胞の分化と線毛長・密度を回復させ、粘液クリアランス*3改善に寄与
● 気管支拡張作用と独立したLAMAの抗リモデリング作用という新機序を提示
論文情報
タイトル: Insights into the effects of inhaled drugs on airway epithelium with human airway basal cells
著書:Fumihiro Ogawa, Kohei Somekawa, Aya Yabe, Mototsugu Nishii, Hideshi Okada, Chihiro Takada, Takeshi Kaneko, Ichiro Takeuchi
掲載雑誌:Biochemical and Biophysical Research Communications
DOI:10.1016/j.bbrc.2025.152634
著書:Fumihiro Ogawa, Kohei Somekawa, Aya Yabe, Mototsugu Nishii, Hideshi Okada, Chihiro Takada, Takeshi Kaneko, Ichiro Takeuchi
掲載雑誌:Biochemical and Biophysical Research Communications
DOI:10.1016/j.bbrc.2025.152634
用語説明
*1 LAMA(長時間作用型抗コリン薬):気管支平滑筋の収縮を抑えることで気道を広げる吸入薬
*2 気道上皮のリモデリング:喘息の慢性炎症により気道壁が厚くなり、粘液過剰産生や線毛機能障害が生じる構造変化。
*3 粘液クリアランス:気道の線毛運動により、粘液に絡め取られた異物を体外へ排出する、防御機能
*2 気道上皮のリモデリング:喘息の慢性炎症により気道壁が厚くなり、粘液過剰産生や線毛機能障害が生じる構造変化。
*3 粘液クリアランス:気道の線毛運動により、粘液に絡め取られた異物を体外へ排出する、防御機能
お問い合わせ先
