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遺伝子のスプライシングを制御するタンデムリピート(縦列反復配列)についての論文がGenome Research誌の表紙を飾りました!

医学研究科 遺伝学教室の濱中耕平助教・松本直通教授らの研究グループは、遺伝子のスプライシングを制御するタンデムリピート(縦列反復配列)について、ゲノムワイドに同定したことを、Genome Research誌で報告しました。

タンデムリピートは同じ塩基配列が縦列に繰り返されている領域であり、ヒトゲノム内に多数散在しています。その長さ(繰り返し回数)は個人毎に異なり、ゲノム機能に影響を与える可能性がありますが、全貌は明らかではありません。例えば、タンデムリピートの長さが、遺伝子スプライシングを調節する例がいくつか報告されてきましたが、ヒトゲノム全体での網羅的な探索はまだ行われていません。

本研究では、ヒト一般集団のゲノムと全身の組織のトランスクリプトーム情報を集めたGenotype-Tissue Expression (GTEx)プロジェクトのデータを用い、49の組織にわたって9,537のスプライシング調節タンデムリピートを同定しました。これらの中には、リピート伸長病(特定のリピートが、一般集団と比して異常に長くなることで発症する疾患の総称)の原因となるリピートも複数含まれていました。これらのリピートについて、GTExプロジェクトの一般集団とリピート伸長病患者を比較した結果、一般集団でも軽度ながら患者と同様のスプライシング変化を起こしていました。この結果から一般集団のデータを用いてリピート伸長病の病理メカニズムを予測することが可能であることがわかりました。

本研究で同定された9,537のスプライシング調節タンデムリピートはZenodo(研究データリポジトリ)を通じて一般に公開されており、様々なリピート伸長病の病理メカニズムの解明に役立つことが強く期待されます。

掲載論文

論文名:Genome-wide identification of tandem repeats associated with splicing variation across 49 tissues in humans
著者名:Kohei Hamanaka Daisuke Yamauchi, Eriko Koshimizu, Kei Watase, Kaoru Mogushi, Kinya Ishikawa, Hidehiro Mizusawa, Naomi Tsuchida, Yuri Uchiyama, Atsushi Fujita, Kazuharu Misawa, Takeshi Mizuguchi, Satoko Miyatake and Naomichi Matsumoto
雑誌名:Genome Research 2023. 33: 435-447
Published in Advance March 27, 2023,
doi: 10.1101/gr.277335.122

 
また、本研究の概要イメージが、2023年4月13日発行のGenome Research誌の表紙を飾りました。スプライシングの制御を、反物から着物が作られる過程として描いています。反物はゲノム、縫い目はタンデムリピート、着物はmRNAを表しています。縫い目の長さ(タンデムリピート長)が異なると、切り取られる(スプライシングされる)断片(エクソン)が変化するため、異なった模様の着物(mRNA)の模様が完成します。

(カバーイラスト:高橋由樹氏)