難治性脳腫瘍に挑む! NF-kB経路を標的とした中枢神経原発悪性リンパ腫治療法開発に向けたトランスレーショナル研究
立石 健祐
横浜市立大学 医学部 脳神経外科学 助教(採択当時の役職)
横浜市立大学 医学部 脳神経外科学 診療講師(令和4年3月時点)
横浜市立大学 医学部 脳神経外科学 診療講師(令和4年3月時点)
研究の概要
遺伝子異常に基づく標的治療法の確立と臨床応用を目指します。
中枢神経原発悪性リンパ腫 (PCNSL)に対し, 高頻度に認められるNF-kBの恒常的な活性化を誘導する分子を標的とした治療法の開発を目指します。
中枢神経原発悪性リンパ腫 (PCNSL)に対し, 高頻度に認められるNF-kBの恒常的な活性化を誘導する分子を標的とした治療法の開発を目指します。
研究成果
我々の研究を含めた先行研究より、PCNSLには主要な癌シグナルであるNF-kB経路に関連するMYD88, CD79B遺伝子の点突然変異が非常に高率に存在することが明らかになっています (Nakamura T et al. Neuropathol Appl Neurobiol. 2016)。しかしながらこれらの遺伝子異常がどのように腫瘍の形成に関わっているかなど、病態に関して未解明な点が多く残っているのが現状です。このことから病態解明には再現性の高いモデル用いて検証を図ることが重要であると考えられていました。一方で、これまで世界的にみてPCNSLモデルはほぼ皆無であり、病態の解明や治療法の開発が進まない要因となっていました。
今回の研究ではPCNSLマウスモデル樹立に最初に取り組み、これまでに世界最多規模のPCNSLモデルを樹立することに成功しました (Tateishi K et al. Cancer Res. 2020、特願2020-174066)。これらのPCNSLモデルの再現性を検証するため、網羅的な遺伝子解析や画像解析などを通じて詳細な検討を行ったところ、PCNSLモデルは患者さんのPCNSL腫瘍を忠実に再現するものであることが確認されました。この結果、これらのモデルを通じてPCNSLの病態を解明し、病態に基づく治療法を開発することで、臨床に繋がる成果が得られることが期待できると考えられました。そこでこれらのモデルを用いて様々な角度から検討を行いました。中でもMYD88, CD79B遺伝子の点突然変異が、NF-kB経路の主要な分子であるRelA/p-65の活性化を引き起こし、活性化したRelA/p-65が癌の重要な代謝経路である解糖系の主要な酵素であるhexokinase2 (HK-2)の活性化を誘導し、その結果PCNSL形成が促進されることを見出しました。またこのシグナル異常は免疫不全により発生するEBV陽性PCNSLでも同様に認められました。これらの結果から、RelA/p-65がPCNSLの重要な治療分子標的であることが判明しました (Tateishi K et al. Cancer Res. 2020, Brain Tumor Pathol. 2021)。 またこの研究素材を活用してPCNSLに対する迅速診断ツールの開発にも成功しています(Gupta M et al. Blood, 2021)。加えて、これらのモデルを活用することで新たな治療標的分子を同定し、細胞・動物モデルでの検証を通じて非常に有力な治療法であることを見出しています (Miyake Y et al. Award for Excellence in CNS Rare disease. SNO meeting 2021. Boston, 三宅ら. Top Scoring Abstract賞. 日本脳腫瘍学会2021)。現在は遺伝子異常の探索研究のみならず、PCNSL形成に関わる腫瘍微小環境の病態解明に向けた研究も進めています。
今回の研究ではPCNSLマウスモデル樹立に最初に取り組み、これまでに世界最多規模のPCNSLモデルを樹立することに成功しました (Tateishi K et al. Cancer Res. 2020、特願2020-174066)。これらのPCNSLモデルの再現性を検証するため、網羅的な遺伝子解析や画像解析などを通じて詳細な検討を行ったところ、PCNSLモデルは患者さんのPCNSL腫瘍を忠実に再現するものであることが確認されました。この結果、これらのモデルを通じてPCNSLの病態を解明し、病態に基づく治療法を開発することで、臨床に繋がる成果が得られることが期待できると考えられました。そこでこれらのモデルを用いて様々な角度から検討を行いました。中でもMYD88, CD79B遺伝子の点突然変異が、NF-kB経路の主要な分子であるRelA/p-65の活性化を引き起こし、活性化したRelA/p-65が癌の重要な代謝経路である解糖系の主要な酵素であるhexokinase2 (HK-2)の活性化を誘導し、その結果PCNSL形成が促進されることを見出しました。またこのシグナル異常は免疫不全により発生するEBV陽性PCNSLでも同様に認められました。これらの結果から、RelA/p-65がPCNSLの重要な治療分子標的であることが判明しました (Tateishi K et al. Cancer Res. 2020, Brain Tumor Pathol. 2021)。 またこの研究素材を活用してPCNSLに対する迅速診断ツールの開発にも成功しています(Gupta M et al. Blood, 2021)。加えて、これらのモデルを活用することで新たな治療標的分子を同定し、細胞・動物モデルでの検証を通じて非常に有力な治療法であることを見出しています (Miyake Y et al. Award for Excellence in CNS Rare disease. SNO meeting 2021. Boston, 三宅ら. Top Scoring Abstract賞. 日本脳腫瘍学会2021)。現在は遺伝子異常の探索研究のみならず、PCNSL形成に関わる腫瘍微小環境の病態解明に向けた研究も進めています。
このように本研究助成を通じて画期的なPCNSLモデル樹立に始まり、遺伝子異常の果たす役割など病態の解明、更には新規治療法の開発などPCNSLに関する研究を大きく発展させることに繋がったと考えております。 この場をお借りして研究を現在までご支援いただいている多くの関係者、 そしてなによりも本プロジェクト設立にご尽力頂きました患者さん及びそのご家族に厚く御礼申し上げます。