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COVID-19 附属病院感染制御部の取り組み

COVID-19 附属病院感染制御部の取り組み

感染制御部 部長 加藤 英明

ー感染制御部の役割

感染制御部と聞いても、何をしているか聞き慣れない方も多いでしょう。いつもは病院内で薬剤耐性菌やインフルエンザなどの感染が広がらないような感染対策の仕組みを整える仕事をしています。マスクや消毒薬などの衛生材料の管理、熱のある方や耐性菌(薬の効かない菌)が検出された場合の対応などです。今回の新型コロナウイルス感染症では、①職員や患者さんの安全を守るための感染対策の立案、②受け入れ病棟の整備、治療薬の管理など診療チームの支援、③横浜市や神奈川県と協力した地域の対策等を行いました。

ー最も苦労したのは感染が確定していない「疑い」の場合

私たち横浜市立大学附属病院に初めての新型コロナウイルス感染症の患者さんが搬送されたのは2月9日日曜日の午後でした。感染制御部では1月中旬より体制整備を開始し、職員向けの研修会や外来で使用する部屋の整備を行ってきました。テレビでは白い全身を覆う防護服を着て診察にあたる様子が取り上げられていましたが、私たちはもっと簡単なN95マスク、ゴーグル、ガウン、手袋で診療にあたることにしました。あまりに大がかりな防護服は着るのも難しく、また脱ぐときに自分自身が汚染するリスクが高いからです。また私たちの病院には感染症用の病室が5室しかなく、そこでは人工呼吸器を使うことができません。そこで一部の病棟を新型コロナウイルス感染症に対応できるように改装を行い、最大時には集中治療室8室、一般病棟21室まで拡張しました。CT室や検査も他の患者さんと交差しないような整備しました。結果としてクルーズ船からの7名を含め新型コロナウイルス感染症の患者さんは通算36名(5月31日現在)になりました。最も苦労したのは、感染が確定していない「疑い」の場合です。市中で流行していた4月上旬には「疑い」に該当する方が多く累計で150例を超えました。疑い例でもガウンやマスクなど防護具は付けなければならず、しかし当院には個室の病室が少ないため隔離管理に難渋しました。3月中旬からマスクが市場から入手困難になり、各方面に手を尽くし職員も1日一枚というかなり厳しい使用制限を行いました。 
写真左:感染患者の対応方法をレクチャー 写真右:細心の注意を払い患者の対応を行っている医療従事者

ー職員の安全を守るためのルール作り

患者さんの受け入れにあたっては職員の不安が強く、特に看護師の不安は強いものがありました。また各部門が独自に対策を立てると複雑になるため、クルーズ船からの搬送が続いた2月12日からは毎日、3月16日からは週2回の病院全体の対策本部会議で全病院の情報を集めることにしました。そこで問題になったのは、採取した採血やPCR検査検体を誰が運ぶのか、病室の掃除とゴミをどう処理するのか、シーツやカーテンの交換、給食の食器の回収方法などです。これら、通常であれば何の問題もなく動いていたことが全て滞りました。このような細かい事項を一つ一つクリアすることで職員や業者の安全を守りつつ、ほぼ通常通りの病院運営ができました。ここまで記載したことは感染制御部だけで行ったことではありません。感染制御部はこれらのルール作りや器材や薬剤の選定、病棟の整備など調整を行い、実際は施設整備担当者や物品購入、清掃、給食の担当者が動きます。病院の総力戦だったのです。新型コロナウイルス感染症はどれだけ細かいルールや仕組みを作っても、現場で実行できていなければ院内感染が起こることが報告されています。私たちは可能な限り現場に行って現場を見る、ということを心がけました。自分たちの感染対策に過剰なところや不足がないか、救急外来、集中治療室、手術室や新生児室など、どこに患者さんがきても十分、かつ過剰な対応がないか対応を検討し続けています。ここまで横浜市立大学附属病院では職員の感染や院内感染は報告されていません。どれだけの集中治療を行っても適切な対策をすべての職員が自ら行うことで安全な医療が提供できると考えています。 
 (2020/6/17)

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