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駐日大使を招いての講演会 2025

【開催報告】オーレリウス・ジーカス駐日リトアニア共和国大使講演会

 横浜市立大学では、グローバルな視野を持って活躍する人材の育成を目的に、毎年各国の駐日大使など国際的に活躍する方々をお招きし、諸外国の動向や日本との関わりなどをグローバルな観点から語っていただく講演会を英語または大使の母国語で開催しています。

 令和7(2025)年度は、10月15日(水)にオーレリウス・ジーカス駐日リトアニア共和国大使をお招きし、「リトアニアの真実:文化、自然、政策、未来への課題」をテーマにご講演いただきました。モデレーターは、本学国際教養学部の靑正澄教授及び学部4年生の石川妃菜さんが務め、約215名の参加者が集いました。
 本学とリトアニアとの交流は、教員・学生間の学術的なつながりから始まり、親日家の多いカウナスでの教員の研究交流は25年間続いています。さらに来年からカウナス工科大学との学生の交換留学プログラムの開始が予定されており、さらなる交流の深化が期待されています。今回の講演会は、そうした国際交流の一環として実施されました。

 
  講演では、冒頭から大使は学生に直接問いかけながら発言を促し、リトアニア語での挨拶も教えるなど、楽しく双方向のやり取りが行われ、会場も和やかな雰囲気に包まれました。その後、人口約270万人のバルト三国の一つで、国土の3分の1が森林に覆われ、6,000を超える湖を有する自然豊かな国であること、「気球の国」として伝統と現代性を両立していることなどを交え、リトアニアの地理や文化が紹介されました。
 また、歴史、政治体制、経済、教育など幅広い内容が語られました。13世紀から18世紀にかけてのリトアニア大公国の繁栄、ロシア帝国・ソ連支配を経て、1987年から1991年にかけて独立回復に至る一連の出来事は「歌う革命」と呼ばれ、その歴史について解説されました。現在はEU・NATO加盟国として、民主主義と国際的ルールを重視し、政治的安定と革新性の両立が強調されました。
 経済面では、機械、光学機器、医薬品などのハイテク輸出に加え、ICTやライフサイエンス分野が急成長しており、約1,000社のスタートアップと9社のユニコーン企業が誕生していることが示されました。さらに、高学歴人材の多さ、STEM分野での女性の活躍、再生可能エネルギーによるエネルギー自立、ウクライナ支援など、社会の成熟と国際貢献が説明されました。
 講演の最後に大使は、1922年に樹立された日本との外交関係や、IT・バイオ分野での協力、杉原千畝の功績を通じた両国の絆に触れ、今後の大学間交流への期待を述べられました。
 質疑応答の場面では、参加した学生から再生可能エネルギーや電力自立に関する質問がありました。大使は、リトアニアが電力不足を克服できた理由として、市民の信頼を得る難しさを乗り越え、再生可能エネルギー導入が国の存続に不可欠だと認識し、明確な目標と戦略を設定して着実に実行したことを挙げました。また、家庭ごとの太陽光発電など市民参加型の政策により、国全体で電力生産が分散化されつつあることも紹介されました。電力自給の観点では、原子力発電はEU加盟時の約束により閉鎖され、再導入は国民の支持が低く、現在は再生可能エネルギーが優先されています。2025年にはロシアからの電力供給を停止し、EU電力網に統合したことで独立性も向上しました。森林とのバランスについては、風力や太陽光発電施設の建設で一部森林が失われることもあるものの、原子力や化石燃料に比べ環境への影響は少なく、持続可能な政策として容認されています。リトアニアでは多くの場合ソーラーパネルは個人の家の屋根や畑に(発電用風力タービンの場合は海上に)設置されているため森林への影響は少ないと述べられ、本講演を結ばれました。
【オーレリウス・ジーカス駐日リトアニア共和国大使講演会】
日 時:2025年10月15日(水)16:10~17:40
会 場:金沢八景キャンパス シーガルセンター3階 シーガルホール
テーマ:「リトアニアの真実:文化、自然、政策、未来への課題」
講演者:オーレリウス・ジーカス駐日リトアニア共和国特命全権大使
モデレーター:靑 正澄 教授(国際教養学部)、石川 妃菜(国際教養学部4年)


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