【開催報告】グリシッチ駐日セルビア大使講演会
横浜市立大学では、グローバルな視野をもって活躍する人材の育成を目的に、学生を対象とした英語による講演会を毎年開催しています。今回はセルビア駐日大使をお招きし「国際関係におけるセルビア」をテーマに、セルビアの様々な課題(歴史、観光・文化、経済、EU加盟に向けての取組等)と現状についてご講演いただき、約70名の学生が参加しました。講演および質疑応答はすべて英語で行われ、学生にとっては、セルビアの現状を通じグローバルな視点で政治、経済、各国との関係等を考えることのできる有意義な時間となりました。
出席した学生からのレポート
7月1日(火)、本学で行われたセルビア駐日大使による講演会に参加しました。
セルビア共和国はバルカン半島の中央に位置し、首都ベオグラードはアテネやローマと並ぶヨーロッパ最古の都市です。国旗は、赤と青と白の3色で描かれています。「白は啓蒙を象徴、赤は歴史における血の犠牲を、青は澄み渡る空、そして王家の双頭の鷲は国家統一を描いている盾を持っている」とグリシッチ大使は説明してくださいました。セルビアは多民族、多文化、多宗教が共存する国ですが、長い歴史の中で解決し得なかった問題が現代においてもなお重く大きな課題として残っています。
セルビアはコソボと長い間その独立をめぐって争ってきました。1990年代前半に、ユーゴスラビアが崩壊して以来、コソボの独立を主張するアルバニア人と自国の一部であるため、それを認めたくないセルビア人との間の溝は更に深まり、90年代後半のコソボ紛争では膨大な数の死者数と難民が発生しました。わたしたちにとっては、多民族と対立する問題はいつも対岸の火事のように感じられます。そのため、多民族と共存して日々生活をしていくことがいかに大変なことであるか、わたしは今まで想像したこともありませんでした。しかしグリシッチ大使の、「大きな大きな課題かもしれない。そしてそれは解決することが難しい。しかしそれでも今日、一緒に生活している。協力して生きているのだ。」という言葉を聞き、同じ民族であっても対立することが多い社会で生きているわたしたちだからこそ、他人事で片づけるのではなく想像し学び続ける姿勢が必要だと感じました。2012年から首相級対話が開始され、現在は関係正常化のための合意の履行、対話の継続が焦点となっています。彼らは、過去を振り返りながら、しかし確実に前へ進んでいるのです。
日本とセルビアの関係はどうでしょうか。
グリシッチ大使は上智大学に在学していたこともあり、わたしたちに対する温かい瞳や話し方から、いかに親日であるかが伝わってきました。実際、セルビアと日本の関係は良好で、例として東日本大震災における支援が挙げられます。
震災の際、セルビアがいち早く支援をしてくれたという事実は、残念ながらあまり知られていないと思います。失業率も21%という決して経済的に余裕のある国ではないにも関わらず、震災の一か月後にはヨーロッパで最も多額の義援金が集まったという報道もあります。その迅速で温かい支援に多くの日本人が救われました。
一方、今年5月中旬、セルビアでは記録的集中豪雨があり、世界貿易機関(WTO)代表団は「状況は悲劇的である」との見解を示しました。日本では、「日本人として恩を返す」と若い世代を中心に寄付が広がっており、グリシッチ大使もそのサポートの厚さに驚くのと同時に感謝の意を表しています。
アジアとヨーロッパという遠く離れた日本とセルビア。しかし遠く感じるのは距離だけであって私たちが思う以上に深い絆が確かに築かれています。
それは他人が傷を負ったときに、その痛みや苦しみを想像できる、セルビア人の豊かで尊い国民性が、長い歴史で培われてきたことにあるのかもしれません。
今後注目すべき事柄としては、セルビアのEU加盟に関する動きが挙げられるでしょう。近いうちに、またひとつ、セルビアの決断が大きく歴史に刻まれるかもしれません。
グリシッチ大使による貴重な講演を通して、常に様々な角度から知識を深められ、想像できる力を持つ学生、いち人間にならなければならないと強く思いました。
このような有意義な講演に参加できたことを嬉しく思います。ありがとうございました。
(横浜市立大学 2年 鈴木まり奈さん)
セルビア共和国はバルカン半島の中央に位置し、首都ベオグラードはアテネやローマと並ぶヨーロッパ最古の都市です。国旗は、赤と青と白の3色で描かれています。「白は啓蒙を象徴、赤は歴史における血の犠牲を、青は澄み渡る空、そして王家の双頭の鷲は国家統一を描いている盾を持っている」とグリシッチ大使は説明してくださいました。セルビアは多民族、多文化、多宗教が共存する国ですが、長い歴史の中で解決し得なかった問題が現代においてもなお重く大きな課題として残っています。
セルビアはコソボと長い間その独立をめぐって争ってきました。1990年代前半に、ユーゴスラビアが崩壊して以来、コソボの独立を主張するアルバニア人と自国の一部であるため、それを認めたくないセルビア人との間の溝は更に深まり、90年代後半のコソボ紛争では膨大な数の死者数と難民が発生しました。わたしたちにとっては、多民族と対立する問題はいつも対岸の火事のように感じられます。そのため、多民族と共存して日々生活をしていくことがいかに大変なことであるか、わたしは今まで想像したこともありませんでした。しかしグリシッチ大使の、「大きな大きな課題かもしれない。そしてそれは解決することが難しい。しかしそれでも今日、一緒に生活している。協力して生きているのだ。」という言葉を聞き、同じ民族であっても対立することが多い社会で生きているわたしたちだからこそ、他人事で片づけるのではなく想像し学び続ける姿勢が必要だと感じました。2012年から首相級対話が開始され、現在は関係正常化のための合意の履行、対話の継続が焦点となっています。彼らは、過去を振り返りながら、しかし確実に前へ進んでいるのです。
日本とセルビアの関係はどうでしょうか。
グリシッチ大使は上智大学に在学していたこともあり、わたしたちに対する温かい瞳や話し方から、いかに親日であるかが伝わってきました。実際、セルビアと日本の関係は良好で、例として東日本大震災における支援が挙げられます。
震災の際、セルビアがいち早く支援をしてくれたという事実は、残念ながらあまり知られていないと思います。失業率も21%という決して経済的に余裕のある国ではないにも関わらず、震災の一か月後にはヨーロッパで最も多額の義援金が集まったという報道もあります。その迅速で温かい支援に多くの日本人が救われました。
一方、今年5月中旬、セルビアでは記録的集中豪雨があり、世界貿易機関(WTO)代表団は「状況は悲劇的である」との見解を示しました。日本では、「日本人として恩を返す」と若い世代を中心に寄付が広がっており、グリシッチ大使もそのサポートの厚さに驚くのと同時に感謝の意を表しています。
アジアとヨーロッパという遠く離れた日本とセルビア。しかし遠く感じるのは距離だけであって私たちが思う以上に深い絆が確かに築かれています。
それは他人が傷を負ったときに、その痛みや苦しみを想像できる、セルビア人の豊かで尊い国民性が、長い歴史で培われてきたことにあるのかもしれません。
今後注目すべき事柄としては、セルビアのEU加盟に関する動きが挙げられるでしょう。近いうちに、またひとつ、セルビアの決断が大きく歴史に刻まれるかもしれません。
グリシッチ大使による貴重な講演を通して、常に様々な角度から知識を深められ、想像できる力を持つ学生、いち人間にならなければならないと強く思いました。
このような有意義な講演に参加できたことを嬉しく思います。ありがとうございました。
(横浜市立大学 2年 鈴木まり奈さん)