遺伝性腎腫瘍外来
お知らせ
遺伝性腎腫瘍症候群の当事者・ご家族様へ向けたイベントのご案内です。
遺伝性腎腫瘍について
腎臓にできる腫瘍の5-8%には、遺伝的な背景があって発生すると言われています。特定の遺伝子に病気の原因となる配列変化を生まれ持っている場合、通常よりも腫瘍が発生する確率が高くなるためです。このような腎腫瘍を遺伝性腎腫瘍といいます。この場合、1人の患者さんに同時に複数の腎腫瘍ができたり、腫瘍を一度根治できても、腫瘍が腎臓に繰り返しできたりすることがしばしばあります。
また、腎臓以外の部位での疾患(全身徴候)が先に見つかることも多いです。遺伝性腎腫瘍症候群には多くの種類があり、それぞれ原因遺伝子が明らかにされています。
また、腎臓以外の部位での疾患(全身徴候)が先に見つかることも多いです。遺伝性腎腫瘍症候群には多くの種類があり、それぞれ原因遺伝子が明らかにされています。
症候群 | 遺伝子 | 腎癌頻度 | 腎癌組織型 | 全身徴候 |
---|---|---|---|---|
フォン・ヒッペル・リンドウ (VHL)病 | VHL | 25-50 % | 淡明細胞型 | 中枢神経系の血管芽腫、網膜血管腫、副腎褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、精巣上体腫瘍、内耳リンパ嚢腫、子宮広間膜嚢腫 |
バート・ホッグ・デュベ (BHD)症候群 | FLCN | 19% | ハイブリッド腫瘍、嫌色素性、オンコサイトーマ | 気胸、肺嚢胞、線維性毛包腫、唾液腺腫瘍 |
遺伝性平滑筋腫腎細胞癌症候群(HLRCC) | FH | 15-32% | 乳頭状、管状嚢胞型 | 皮膚および子宮の平滑筋腫 |
遺伝性乳頭状腎細胞癌(HPRC) | MET | 不明 | 乳頭状 | なし |
遺伝性パラガングリオーマ・褐色細胞腫症候群(PPGL) | SDHB/C/D | 10%以下 | 淡明細胞型、分類不能型 | パラガングリオーマ、褐色細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST) |
BAP1腫瘍易罹患性症候群 | BAP1 | 9-13% | 淡明細胞型 | 悪性中皮腫、ブドウ膜および皮膚の悪性黒色腫、基底細胞癌 |
PRDM10関連腎癌 | PRDM10 | 不明 | 乳頭状、オンコシティック腎癌 | 線維性毛包腫、脂肪腫、肺嚢胞 |
PBRM1関連腎癌 | PBRM1 | 不明 | 不明 | 不明 |
MITF関連腎癌症候群 | MITF | 恐らく10%以下 | 恐らく淡明細胞乳頭状 | 悪性黒色腫、膵癌、褐色細胞腫 |
カウデン症候群 | PTEN | 10-15% | 淡明細胞型、乳頭状、嫌色素性 | 消化管過誤腫性ポリープ、顔面および四肢の丘疹、巨大頭蓋症、乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌 |
遺伝性染色体3番転座型腎癌 | - | 30% | 淡明細胞型 | なし |
結節性硬化症(TSC) | TSC1/2 | 5%以下 | AML、淡明細胞型、乳頭状、嫌色素性 | 上衣下巨細胞性星細胞腫、顔面血管線維腫、てんかん、精神発達遅滞 |
CHEK2関連腎癌症候群 | CHEK2 | 10%以下 | 様々な組織型 | 乳癌、前立腺癌、大腸癌 |
副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群 | CDC73 | 恐らく10%以下 | ウィルムス腫瘍、淡明細胞型、乳頭状 | 副甲状腺機能亢進症、副甲状腺癌、顎腫瘍、子宮ポリープ、子宮癌 |
蓮見壽史ら. 『遺伝子医学』別冊 遺伝性腫瘍の基礎知識. 2022年.より一部改変
遺伝性腎腫瘍が診断されるきっかけとしては
- 腎腫瘍が複数できているなど一般的な腎腫瘍としては非典型的である
- 遺伝性腎腫瘍に特徴的な腎腫瘍以外の疾患を有している(全身徴候と言います)
- 血のつながったご家族に腎腫瘍またはその他の全身徴候が見られる
- 若年で腎腫瘍を発症した
- がんゲノム検査*で遺伝子の配列変化を指摘された
などで、上記が一つでもあれば遺伝性腎腫瘍を疑う必要があります。
*がんゲノム検査とは、手術や生検などで得られた腫瘍検体から、がんの発生に関与する多数の遺伝子の情報を網羅的に検査する手法で、主にゲノム情報に基づいて奏効が得られそうな薬剤を探索することを目標になされますが、この検査で遺伝性腫瘍症候群に関連する遺伝子の配列変化が偶然みつかることがあります。
遺伝性腎腫瘍が疑われた場合、いまある腫瘍を治療すれば終わりではありません。
遺伝性腎腫瘍が疑われた場合、いまある腫瘍を治療すれば終わりではありません。
- 遺伝子検査を行い、遺伝性(原因となる遺伝子の配列変化)を確認すること(はっきりさせることで、その後の検診への積極性が変わり、予後が異なるとも言われています。また血のつながった方の健康管理にも役立ちます)
- 新たな腫瘍発症リスクを踏まえ、定期的な検診やリスク低減策を講じること
- 全身徴候(遺伝性腎腫瘍に特徴的な腎腫瘍以外の疾患)についても同様に定期的な検診やリスク低減策を講じること
- 血のつながったご家族に、ご希望に応じて遺伝子検査や検診の場を提供すること
- それらの意思決定のために遺伝カウンセリングを受けること
遺伝性腎腫瘍は、①一般的な腎腫瘍とは経過観察法や治療法が異なるため一般病院では対応が難しく、②早めに疑って遺伝子検査ではっきりさせて適切な検診を行なえば腎腫瘍を早期発見できるため、遺伝性腎腫瘍の知識や診療経験が豊富な施設に通院していただくことが非常に重要です。当院では腎腫瘍がまだできていない方の健康相談や全身の検診も行っております。
遺伝というと特別なことと思われがちですが、今ではほとんどの病気に遺伝が関係することが分かっております。
もしあらかじめ遺伝性腎腫瘍であることが分かっていれば、健康管理に活かすことができ、積極的に遺伝性腎腫瘍についての最新情報を取り入れていただくことで、生活の質を大きく向上させることが可能です。
もしあらかじめ遺伝性腎腫瘍であることが分かっていれば、健康管理に活かすことができ、積極的に遺伝性腎腫瘍についての最新情報を取り入れていただくことで、生活の質を大きく向上させることが可能です。
当院は30年以上前から遺伝性腎腫瘍の診療を開始し、全国から遺伝性腎腫瘍の患者さんが最新の治療法や情報を求めて来院されています。遠距離で通院が困難な患者さんも、それぞれの地域の先生方と連携しながらフォローアップさせていただいております。遺伝性腎腫瘍の診療では、検診方法から新規治療薬/予防薬の治験まで、健康管理に重要なさまざまな情報が日々アップデートされます。遺伝性腎腫瘍はとても希少であるため、患者さんが特定の医療機関に集まることが疾患特性の解明や新しい治療法と健康管理法の開発に繋がります。
アメリカでは世界最大の医療研究機関である国立衛生研究所(NIH)がその役割を果たしており、全米中から遺伝性腎腫瘍の患者さんが集まっています。当科は多くの教室員が継続的にNIHに在籍して遺伝性腎腫瘍の治療成績の向上に尽力してきた歴史的経緯もあり、世界中の遺伝性腎腫瘍専門医と日々情報を交換しながら、我が国における遺伝性腎腫瘍の情報発信源として最新の治療法と健康管理法を全国の遺伝性腎腫瘍の患者さんやそのご家族にお届けしております。そのため遺伝性腎腫瘍であると分かった方は当院の様な遺伝性腎腫瘍の拠点病院と接点を保ち続けていただきたいです。
万一、腎腫瘍へ治療が必要となった場合でも、当科は国内随一の症例数を誇るロボット手術や腎凍結療法などの低侵襲治療法を駆使して腎機能を最大限温存しますし、様々な予防薬や治療薬の治験も数多く行っており、それぞれの遺伝性腎腫瘍に合わせた最適な経過観察法や治療法をご提供することが可能です。
アメリカでは世界最大の医療研究機関である国立衛生研究所(NIH)がその役割を果たしており、全米中から遺伝性腎腫瘍の患者さんが集まっています。当科は多くの教室員が継続的にNIHに在籍して遺伝性腎腫瘍の治療成績の向上に尽力してきた歴史的経緯もあり、世界中の遺伝性腎腫瘍専門医と日々情報を交換しながら、我が国における遺伝性腎腫瘍の情報発信源として最新の治療法と健康管理法を全国の遺伝性腎腫瘍の患者さんやそのご家族にお届けしております。そのため遺伝性腎腫瘍であると分かった方は当院の様な遺伝性腎腫瘍の拠点病院と接点を保ち続けていただきたいです。
万一、腎腫瘍へ治療が必要となった場合でも、当科は国内随一の症例数を誇るロボット手術や腎凍結療法などの低侵襲治療法を駆使して腎機能を最大限温存しますし、様々な予防薬や治療薬の治験も数多く行っており、それぞれの遺伝性腎腫瘍に合わせた最適な経過観察法や治療法をご提供することが可能です。
また当院は、①既に遺伝性腎腫瘍であることが分かっている方はもちろん、②遺伝性腎腫瘍が疑われる方や、遺伝的背景がありそうでも③いずれの既知の遺伝性腎腫瘍症候群に当てはまらず診断に難渋している方のご相談も受け付けております。
これらに当てはまらない場合でも、お気軽に当科までご相談ください。
遺伝子検査と遺伝カウンセリングについて
アメリカ泌尿器科学会は、遺伝カウンセリングの対象症例として、
- 46歳以下の若年性腎癌
- 両側性または多発性腎癌
- 遺伝性腎癌症候群を示唆する特徴的な症状(他の部位を含む)を認める症例
を挙げています。
疑われる疾患に応じて特定の遺伝子の検査を提供します(保険適応がなく、自費となります:数万円)。
疑われる疾患だけでなく、がん発生に関与する多数の遺伝子を網羅して調べられる“遺伝性腫瘍に関する遺伝子パネル検査”が提案されることもあります(高額です:十数万円~)が、病態や患者さんの希望を加味して選択するべき検査だといえます。
遺伝カウンセリングでは、患者さんや血縁者の方の不安や疑問について、ゆっくりお話を伺いながら、正確な情報をお伝えし、その上で、自律的な意思決定ができる環境を提供しています。当院では遺伝子診療科にて行っています。一方で、遺伝カウンセリングを希望されない場合でも遺伝性腎腫瘍についての情報をご提供したり、検診を行ったりすることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
ご紹介先
〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学附属病院 泌尿器科 遺伝性腎腫瘍外来
原則、月曜日と金曜日の午前中ですが、学会などで担当医師が不在にしていることがありますので、お電話でご確認の上、来院されてください(病院代表番号の045-787-2800から泌尿器科外来までお問合せください)。
まずは遺伝性腎腫瘍である可能性の有無について診察させていただきますので、お気軽にいらっしゃってください。
ご相談先
メールアドレス:iJingan★yokohama-cu.ac.jp(★マークを@に変更して下さい)(担当:入部、青盛、軸屋、川浦、野口、蓮見)
こちらでは、当院への来院を考えていらっしゃる患者さんや、遺伝性腎腫瘍であるかの判断が難しく当院へのご紹介を迷われている主治医の先生方からのご相談を受け付けております。
遺伝性腎腫瘍に関する情報だけをご希望の場合も、お気軽にご連絡ください。
患者さんご自身でご相談される場合は、①お名前、②お電話番号、③メールアドレス、④これまでの簡単な経過、をお教えください。数日経ってもこちらからの返信がない場合は、TEL: 045-787-2800(病院代表)から泌尿器科外来にご連絡ください。