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バート・ホッグ・デュベ(BHD)症候群

FLCNという遺伝子に生まれつき病的バリアントがあることで、
  • 腎腫瘍
  • 肺嚢胞/気胸
  • 皮膚線維毛包腫
  • 唾液腺腫瘍(頻度は少ない)
  • 甲状腺腫瘍(頻度は少ない)
を発症します。
疾患自体は1970年代後半に発見されましたが、原因遺伝子FLCNが同定されたのは2002年と比較的最近です。私達は2006年と2008年にFLCN結合蛋白質であるFNIP1とFNIP2を相次いで同定し、2015年にFLCN、FNIP1、FNIP2が3遺伝子で腎のがん化を抑制していることを発見すると同時に、FLCNがミトコンドリア代謝やmTOR経路の制御に関わることを明らかにし、このことはBHD腎腫瘍に対してmTOR阻害剤を用いることへの理論的根拠となっております。
当院は2008年以降、Birt-Hogg-Dubé 症候群情報ネット(BHDネット)などを通じて、全国から250家系以上の患者さんを受け入れており、低侵襲手術をご希望される患者さんや、手術が難しい患者さんの最後の砦となってきました。2022年と2023年には、最新の手法を用いてBHD腎腫瘍の自然史(1個の細胞からがんが生まれて私達の目の前に現れるまでの様子)やがん微小環境(がん細胞の周りにいる免疫細胞や血管細胞など、現在の腎癌治療薬が標的としている細胞の情報)など、診療に直結する知見を次々と明らかにし、現在、これらの最新の知見を活かしながらそれぞれの患者さんに最適な診療を行っています。
  • 両側の腎臓に同時に多発する腎腫瘍

  • 肺の内側と底部に多発する肺嚢胞。これが破裂すると気胸になります。

  • 皮膚の繊維毛包腫。小さな丘疹が顔~首~体幹に多発します。

BHD症候群は常染色体顕性遺伝形式をとるので、診断された方のお子さんも50%の確率で同じ遺伝子の配列変化が見つかります。90%の患者さんが肺の嚢胞(空気が充満した袋状の組織)を有しており、それが破裂すると気胸といって肺に穴があいた状態となり、呼吸困難をきたします。70%以上の患者さんが気胸を経験しています。気胸を繰り返しているという既往歴から、本疾患の診断につながることも多いです。腎腫瘍は同時多発したり、時間差で多発したりします。本疾患では多様なタイプの腎腫瘍を発症するのが特徴です。多くはハイブリッド腫瘍(hybrid oncocytic tumor)という比較的ゆっくり発育する腫瘍ですが、淡明細胞型腎細胞癌、乳頭状腎細胞癌といったタイプの腫瘍を発症することもあり、その場合は転移して進行がんとなるリスクが高いです。

BHD関連腎腫瘍は初期であれば1年間に平均で0.1cmずつ増大することが分かっており、VHL病と同じく2cmとなるまで経過観察を行い、2cmとなった時点でロボット手術などの低侵襲手術を行います。腫瘍と正常腎の境界がわかりづらい、腎臓に埋没している腫瘍が多い、超音波で病変をやや検出しづらいといった点で手術の難易度は高くなります。当院は15年もの長きに渡って全国からいらっしゃるBHD患者さんの手術を行ってきたためBHD関連腎腫瘍の手術件数は国内随一であり、術後も各地域の先生方と連携しながら最適な方法でフォローアップをさせていただいております。転移をきたした一部の症例に対しては、VHL病でも述べた各種薬剤を用いて治療していくことになりますが、最適な薬剤についてはお気軽にお問合せください。

ご紹介先

〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学附属病院 泌尿器科 遺伝性腎腫瘍外来

原則、月曜日と金曜日の午前中ですが、学会などで担当医師が不在にしていることがありますので、お電話でご確認の上、来院されてください(病院代表番号の045-787-2800から泌尿器科外来までお問合せください)。
まずは遺伝性腎腫瘍である可能性の有無について診察させていただきますので、お気軽にいらっしゃってください。

ご相談先

メールアドレス:iJingan★yokohama-cu.ac.jp(★マークを@に変更して下さい)(担当:入部、青盛、軸屋、川浦、野口、蓮見)

こちらでは、当院への来院を考えていらっしゃる患者さんや、遺伝性腎腫瘍であるかの判断が難しく当院へのご紹介を迷われている主治医の先生方からのご相談を受け付けております。
遺伝性腎腫瘍に関する情報だけをご希望の場合も、お気軽にご連絡ください。

患者さんご自身でご相談される場合は、①お名前、②お電話番号、③メールアドレス、④これまでの簡単な経過、をお教えください。数日経ってもこちらからの返信がない場合は、TEL: 045-787-2800(病院代表)から泌尿器科外来にご連絡ください。