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頭頚部癌に対する再建術

頭頚部癌の再建について

頭頚部癌とは、口腔内・咽頭・喉頭などに生じる癌のことをいいます。耳鼻科や口腔外科、脳神経外科で癌の治療が行われますが、腫瘍の大きさによっては広い範囲の切除が必要になります。
切除によって大きな欠損を生じた場合は、食事、会話、呼吸といった生活に重要な機能が損なわれる可能性があるため、欠損部を修復する必要があります。この欠損部に体の他の部分から皮膚・筋肉・骨などの組織を移植して修復する手術を形成外科が担当し、主となる診療科の先生方と一緒に外科的治療を担当します。
移植の方法には有茎組織移植と遊離組織移植がありますが、 現在は顕微鏡を使用して血管吻合を行うマイクロサージャリーによる遊離組織移植が主流となり、高度な先進医療の一つになります。

技術的には確立された方法ですが、2~3%程度の頻度で吻合血管に血栓が詰まり、再手術が必要となったり、移植した皮弁が壊死してしまう場合があります。
頭頸部に吻合に適した血管がない場合や血管吻合自体が無理な場合は、血管吻合を必要としない 有茎組織移植を選択します。

頭頚部がんが出来る主な部位頭頚部がんが出来る主な部位

主な再建方法

ここでは、遊離組織移植のうち頭頚部再建によく用いられる方法をご紹介します。

腹直筋皮弁

腹直筋皮弁の説明イラスト腹直筋皮弁の説明イラスト

腹直筋とは、お腹にある大きな筋肉です。
腹直筋皮弁は、腹直筋にお腹の皮膚と脂肪をつけて組織を移植する方法で、採取できる組織量が多いため頭頸部の大きな欠損の充填に用いられます。
組織を採取されたお腹は縫い閉じられることが多いです。お腹の筋力が低下しますが、日常生活には支障のないことがほとんどです。

前腕皮弁

前腕皮弁の説明イラスト前腕皮弁の説明イラスト

肘より手に近い腕の皮膚を、脂肪と血管をつけて移植する方法です。
薄い組織が必要な場合に用いられます。
組織を採取した腕は、さらに体の別の場所(お腹など)から皮膚を採取して移植されることが多いですが、移植された皮膚は色や質感が異なります。

前外側大腿皮弁

前外側大腿皮弁の説明イラスト前外側大腿皮弁の説明イラスト

太ももから皮膚や脂肪をつけて移植する方法です。
中程度の大きさの欠損の充填に用いられます。
組織を採取された太ももは、縫い閉じられない場合は皮膚移植が行われます。歩けなくなることはありませんが、傷跡が残ります。

空腸移植

空腸移植の説明イラスト空腸移植の説明イラスト

咽頭や喉頭など、のどにある組織が欠損したとき、お腹の中から小腸の一部である空腸を採取して口と食道をつなぎます。
空腸を採取しても、傷が落ち着けば消化・吸収にはほとんど影響しません。

腓骨皮弁

腓骨皮弁の説明イラスト腓骨皮弁の説明イラスト

膝下にある腓骨という骨を用いる方法です。
下顎再建など、長い骨の移植が必要な場合に用いられます。
腓骨を採取しても、脛骨という太い骨がほとんどの体重を支えていますので、歩けなくなることはありません。腓骨を採取された傷は、縫い閉じられない場合は皮膚移植が行われます。

治療後について

上記の各種再建手術により、血流を有する遊離移植組織は失われた組織を置き換えます。
しかし現在の医療ではまったく元通りというのは難しく、患者さんと相談しながら後日組織の大きさや形を修正する手術を検討することがあります。
また血管吻合を行った手技では、2-3%程度の頻度で血管が詰まるなどして再手術が必要な場合もあるため、術後は定期的に皮弁への血流確認を行います。
これらの頭頸部の再建治療によって、顔の外観や視野、飲食、会話、呼吸などの機能を維持し、社会生活を取り戻すことを目指します。