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ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業(看護学科)

【令和4年度実績報告】テーラーメイドDX実習トレーニング看護人材育成事業

 横浜市立大学医学部看護学科は、医学科と共に令和3年度文部科学省「ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業」に採択され、「テーラーメイドDX実習トレーニング看護人材育成事業」と銘打ったプログラムに取り組んでいます。

事業の要旨

 看護学科の実習カリキュラムでは、現在、(1)教員とのキャリアカウンセリングを通じて希望する進路及び課題を抽出し、(2)設定された進路や課題を見据えてさらに磨きをかける必要のあるスキルを明確化、(3)それぞれの学生が志向するキャリアや必要なスキルに合わせてトレーニングプランを選ぶというテーラーメイドなキャリア形成支援の仕組みが構築されています。本事業では、新型コロナウイルスの影響により特に臨地実習での体験が難しい看護場面のVR教材、医療的ケアが必要な小児の看護技術トレーニングに資する高機能シミュレーターを導入し、安全にスキルを磨く場を提供することで、上記(3)のトレーニングプランの拡充を図っています。 

☆取組概要ポンチ図はこちら
☆記者発表資料は
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◆小児高機能シミュレーター SimBabyを用いた実習

 令和4年10月、看護学科の4年生を対象に、小児高機能シミュレーターSimBabyを用いた実習(以下、実習)を行いました。
高機能シミュレーターとは、病態に応じた心音や呼吸音などの生体反応を設定でき、肌の触感や色が赤ちゃんに近く、泣き声や笑いをタイミング良く発するセッティングができるモデル人形です。病態や状況に応じたシナリオを作成することで、リアリティのある臨床現場の看護を学習することができます。今回は、小児看護での就職を希望する4年生11名に対し、小児看護実習で未体験であった実習内容を中心に学生の志向性を踏まえて企画・評価しました。

(1)事前準備
 希望学生は、自己目標・課題を明確化し実習に臨みました。

1.自己目標
・小児看護学で未経験の技術を実践できる。
・小児の年齢・発達段階に応じた技術を習得できる。
・小児の病状に応じた適切なアセスメントと実践ができる。


 2. 自己課題
・病態を踏まえた観察
・講義・小児看護学実習で学んだ知識の整理
・小児の成長発達に関する知識
・発達段階に合わせた小児の安全管理

☆DXトレーニングプログラムにおける学習評価アンケート結果はこちら


(2) 小児高機能シミュレーター SimBabyによるアセスメント・技術トレーニング実習
 小児看護学実習では体験できなかった看護技術(輸液管理、吸引、経腸栄養)のトレーニング、気管支喘息のある小児の看護実践に取り組みます(写真①)。
学生は、呼吸状態のアセスメントに必要な情報の収集を行い、看護計画を立案し、事前にトレーニングした看護技術をもとに子どもへのケアを実践します(写真②)。
別室では、映像モニターから学生の実践を同時観察することができ、録画再生をもとにグループ全員で「子どもと家族にとってのより良いケア」をディスカッションすることができます(写真③)。

写真①SimBabyを用いた呼吸管理(呼吸音の聴取、吸引)をトレーニングする様子
写真②SimBabyを用いた呼吸状態の悪化時のケア(情報収集、アセスメント、ケア実施、評価、報告)をトレーニングする様子
写真③トレーニングの様子を別室から観察しディスカッションしている様子
(3)実習の成果
 実習評価アンケートでは、小児看護における基本的実践力として重要な「ニーズを捉える力」「ケアする力」「協働する力」「意思決定する力」を測定しました。
実習実施後の結果は「非常にそう思う」「そう思う」と答えた割合が約70%となり、目標達成ができたことで学生も自信がついたようです。

  
☆DXトレーニングプログラムにおける自己評価アンケート結果はこちら


(4)参加学生の声
・体温・脈拍・呼吸の測定中にシミュレーターの子どもが泣き出したり、咳込んだりするため、実際の実習に近い環境で技術トレーニングができた。
・肺雑音や呼吸音の強さなどは動画で聴くよりも、本実習でしっかり聴取することができた。

・吸引の演習では、人形が唸ったり、心拍数や呼吸を示すモニター数値の変動がリアルに伝わり、実際をイメージながら実践できた。

・看護技術では、実際に使用する物品を用いて手技を確認できた。就職に向けて貴重な経験ができた。

・子どもの事例とシミュレーターを通して、アセスメント・計画・実践・報告を学ぶことができ、就職に向けて新たな課題を把握することができ、非常に役立つ実習だった。


(5)担当教員の振り返り
 シミュレーション実習は、臨床場面をリアルに再現した状況下で、学生がその経験を振り返り、ディスカッションを通して専門的な知識・技術・態度の統合を図ることができる教育です。今回の小児高機能シミュレーターを活用した実習では、学生の学習や技術レベルに合わせ、安心して繰り返し学習ができる教育環境を提供することができました。学生は、高機能シミュレーターならではのリアルな呼吸音や胸郭の動きや子どもの声を五感を通して握し、臨床判断をもとに看護を実践できたことが、看護職者としての自信に繋がったようです。
 小児病棟実習はCOVID-19感染症の影響により実習時間が短縮化されましたが、高機能シミュレーター実習は、未体験の実習を補うことのみならず、「看護における基本的実践力」向上に成果があることが確認されました。今後は、学生が主体的にキャリア形成できる教育支援、卒業後1年目の教育目標「キャリアラダー1」達成に資する自己教育力醸成のために、プログラム開発を続けていきたいと思います。(小児看護学 教授 佐藤朝美)


(6)本事業に携わった教員
  叶谷 由佳 医学部看護学科長
  佐藤 朝美 医学部看護学科教務委員長
  佐藤 政枝 医学部看護学科学生支援部門長

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