診療科・部門案内

脳神経外科

良性腫瘍・頭蓋底腫瘍

担当:坂田 勝巳(准教授、部長、日本頭蓋底外科学会評議委員)、川崎 隆(機能的脳神経外科、脊髄・脊椎疾患)、中村 大志

治療について

脳神経外科領域で良性脳腫瘍と言えば、髄膜腫、神経鞘腫(聴神経腫瘍ほか)、下垂体腺腫などが挙げられます。これらの腫瘍に対する治療のゴールは機能を温存し、腫瘍を全摘出することにあります。しかし、良性だからといって手術が簡単であるということではありません。なぜなら、発生する場所によって手術の難易度が何倍も変わるからです。

頭蓋底手術とは頭蓋骨の底部の骨を削除することにより、機能の中枢である脳に対して愛護的に病変を除去する手術法です。特に頭蓋底(頭蓋の底で重要な血管や神経が存在している)に発生した場合、機能を温存しできるだけ腫瘍を摘出するには経験と技術が問われます。
当施設では約2,000例以上の開頭手術を経験した医師が手術を担当しております。また、センター病院である性格上、困難な腫瘍が紹介されて参りますが、頭蓋底手術を専門とする経験豊富な脳神経外科医と頭蓋底再建を専門とする形成外科医がチームを組み、治療戦略を検討し、個々の症例において最良の手術方法を選択し、治療を行っております。また、当施設では術中超音波エコー、脳神経モニタリング、MEP、SEP、ナビゲーションなど最新の工学医療機器を導入し、脳神経、穿通枝はもとより脳静脈の温存を心がけ、より安全にかつ効率的な手術を行っております。

当施設での治療方針は患者さんのQOL(Quality of Life)を最重視した治療計画を立てることです。もちろん良性脳腫瘍に対する治療の第一選択としては多くの場合、手術療法を選択いたしますが、腫瘍の部位や大きさ、患者さんの状況により手術だけにこだわるのではなく、定位的放射線治療(ガンマナイフやサイバーナイフ)も加味した治療を協力関連病院と緊密に連携し行っております。
頭を開ける(開頭手術)ということは、患者さんが我々脳神経外科医に命を預けることであり、我々はその重みを常に考え、日々診療を行わなければなりません。自分の家族であればどのような治療方針とするかを考え、診療を行っております。ただ、病気だけを診るのではなく、患者さんの人生の手助けをすることが使命であることを十分に認識することが重要です。手術後もほとんどの場合、自らの外来で長期的に経過観察をします。「手術をしたら後は診ない」ということはございません。

経鼻開頭同時治療

対象となる疾患

副鼻腔や前頭蓋底・頭蓋内に同時進展する嗅神経芽腫、頭蓋底骨浸潤や副鼻腔進展をしめす髄膜腫などで、単独アプローチでは十分な摘出が困難であり、同時手術で大幅な腫瘍摘出が見込まれる症例

診療において認める症状

腫瘍に伴う視覚(視力視野障害、複視などの眼球運動障害)、感覚障害、顔面神経麻痺、嗅覚障害といった脳神経症状が主になります。

診療において行う検査

診察では上記のような神経症状所見があるか確認し、ホルモン・電解質採血や画像:MRI・CT・脳血管撮影検査を行います。

  • 治療前①
    治療前①
  • 治療前②
    治療前②

術前のCT/MRI検査では前頭蓋底・頭蓋内から副鼻腔に大きく進展した腫瘍性病変が確認されます。

治療中治療中
治療中

患者さんの手術に用いたナビゲーションプランニングイメージです。実際の手術治療ではリアルタイムに位置関係を確認しながら腫瘍摘出操作を進めていきます。
開頭側から中頭蓋窩・側頭下窩という領域の腫瘍成分を摘出し、経鼻側は鼻腔・副鼻腔の領域の腫瘍を摘出し上顎洞という副鼻腔のスペースを大きく開放して翼口蓋窩の領域の腫瘍成分を摘出し側頭下窩という領域で顕微鏡側と交通した状態になりました。

治療後治療後
治療後

術後の造影MRIにおいてあった大型の腫瘍が摘出され経過しております。

治療方針の策定

手術、定位放射線治療、画像追跡が基本として挙げられ、上記のような対象の疾患について適応を検討します。
耳鼻科・脳神経外科は普段より下垂体近傍・頭蓋底病変への神経内視鏡治療に全症例にわたって協力する診療体制で治療にあたっております。顕微鏡、ICG機能を備えた4K-HD神経内視鏡での治療体制としております。

手術実績

  2022 2021
脳腫瘍手術 64 66
うち良性・頭蓋底腫瘍 46 42

関連ページ