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脳神経外科

もやもや病

もやもや病外来

毎週木曜日 午前 / 担当医:堀 聡

もやもや病とは?

脳に血液を送る主要な血管(内径動脈の終末部やその分枝)に狭窄や閉塞が進行性に生じる病気です。その結果、脳血流が不足し、これを補うために脆弱な細い血管網(もやもや血管)が発達することが特徴で、この血管が画像で「もやもや」と煙のように見えることから、「もやもや病」と呼ばれています。日本人が名付けた病気です。
原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因が関与していることが知られています。また、もやもや病はアジア人に多く、日本では比較的頻度が高い病気といえます。

もやもや病の特徴的な点

小児でも成人でも発症する

もやもや病の発症には、小児期(5-10歳)と成人期(30-40歳)の2つのピークがあります。

虚血型と出血型がある

脳血流の不足を反映して脳虚血の発作(一過性脳虚血発作)や脳梗塞を起こす場合と、脳血流不足を補うために発達したもやもや血管の負担が大きくなって脳出血を起こす場合があります。

小児のほとんどは虚血、成人は虚血と出血が半々

小児では楽器を吹いたり、ラーメンを“フーフー”したり、大きな呼吸を繰り返し行う「過呼吸」により脳虚血が誘発されることが多く、それを契機に病院を受診するケースが少なくありません。成人では、脳血流不足を補うべく発達した細い血管に負荷がかかりすぎて出血を起こすことがあります。成人の約半数が脳出血で発症します。

その他

頭痛やけいれん、不随意運動、高次脳機能障害で発症することもあります。また、無症状で偶然発見されることもあります。

診断

以下のような検査を実施して診断します。

脳血管撮影

カテーテルを用いた検査で、詳細に血管の状態がわかります。診断方法としてはゴールドスタンダードです。

MRI/MRA

主要な血管の狭窄や、もやもや血管の有無を調べます。

脳血流SPECT/PET

脳血流がどれくらい低下しているのかを調べます。

治療

1.  脳虚血や脳出血など、何らかの症状を認めた場合(症候性)は、不足している脳血流を補うべく、下記のような外科的手術(バイパス術)が検討されます。 

  • 直接バイパス術:頭皮の血管(浅側頭動脈)と脳表の血管(中大脳動脈)を直接つないで、直ちに血流を増やすことができる手術です。顕微鏡下で1mm前後の血管をつなぐ手術のため、高度な技術が要求されます。
  • 間接バイパス術:頭蓋骨を覆う筋肉(側頭筋)や骨膜、脳を覆っている膜(硬膜)といった組織を脳表に敷いて接着させます。これらの組織から数ヶ月かけて脳表に向かって新しい血管が発生し、脳血流が増えることが期待できます。小児では、ほぼ全例で十分な血流増加を認める一方で、成人の30-40%では有効な血流増加が期待できないと言われています。
  • 複合バイパス術:上記のバイパス術を組み合わせた方法です。当院では、原則この手術方法を採用しています。

また、出血を予防するための血圧管理や、虚血を予防するための血液サラサラの薬を使用することもありますが、その予防効果には限界があると考えられます。

2. 偶然発見された場合(無症候性)の治療方針は確立されておらず、原則経過観察の方針となることが多いです。しかしながら、近年無症候性のもやもや病の予後に関する研究結果が報告され、虚血や出血を起こす確率や、起こしやすい特徴などが示され、今後、治療方針が確立するかもしれません。

担当医のもやもや病に関する主な論文・業績

 Hori S, Miyata Y, Takagi R, Shimohigoshi W, Nakamura T, Akimoto T, Suenega J, Nakai Y, Kawasaki T, Sakata K, Yamamoto T. Preoperative collateralization depending on posterior components in the prediction of transient neurological events in moyamoya disease. Neurosurg Rev, 47(1):781, 2024.

Hori S, Kashiwazaki D, Yamamoto S, Acker G, Czabanka M, Akioka N, Kuwayama N, Vajkoczy P, Kuroda S. Impact of Interethnic Difference of Collateral Angioarchitectures on Prevalence of Hemorrhagic Stroke in Moyamoya Disease. Neurosurgery, 85(1):134-146, 2019.

Hori S, Acker G, Vajkoczy P. Radial Artery Grafts as Rescue Strategy for Patients with Moyamoya Disease for Whom Conventional Revascularization Failed. World Neurosurg, 85:77-84, 2016.

Hori S, Kashiwazaki D, Akioka N, Hayashi T, Hori E, Umemura K, Horie Y, Kuroda S. Surgical anatomy and preservation of the middle meningeal artery during bypass surgery for moyamoya disease. Acta Neurochir (Wien), 157(1):29-36, 2015.

Hori S, Kashiwazaki D, Akioka N, Hamada H, Kuwayama N, Kuroda S. Repeat bypass surgery for intracranial hemorrhage 30 years after indirect bypass for moyamoya disease. No Shinkei Geka, 42(4):347-353, 2014.

堀 聡: 第11回手技にこだわる脳神経外科ビデオカンファレンス 優秀演題賞. もやもや病手術におけるMMA走行の解剖理解に基づく温存法の重要性, 2024.

最後に

もやもや病は難病指定されている非常に稀な病気であり、診断自体が容易ではなく、上記のような特徴も認知度が低いのが現状です。当院では豊富な経験を持つ医師が担当し、診断から治療、その後までのご相談に乗りますので、安心して受診してください。