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【YCU RESEARCH 2021】COVID関連研究(微生物学)

2022.02.10
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COVID関連研究(微生物学)

 

new! 2022.2.10

Molecular and Epidemiological Characterization of Emerging Immune-Escape Variants of SARS-CoV-2 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2の新たな変異株の解析について

微生物学 梁  明秀  教授、宮川 敬 准教授 
感染制御部 加藤英明 部長

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、現在まで継続的に検出され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて重大な課題となっている。また、ワクチンや中和抗体薬治療が効果のない新たな変異体のさらなる出現も懸念されている。本研究において、ワクチン先進国で増加している変異株を同定するための疫学的調査を実施し、変異株に由来するスパイクタンパク質を模した標識ウイルス様粒子を作製して、ファイザー社製ワクチンといくつかの治療用抗体薬の中和効果を解析した。
その結果、ワクチン2回目接種後、95.2%の接種者が、従来株に対しては顕著な中和活性を示したが、Muおよびデルタ変異株に対して中和活性を示したのは、ワクチン接種者のそれぞれ73.8%および78.6%のみで、デルタ株のMu、βおよびγ変異株では、ワクチンの効果が下がることが判明した。また長期的な解析では、当初88.8%のワクチン接種者がデルタ株に対しては強い中和活性を示したが、接種後6ヶ月目には、31.6%に減少した。
さらに、これらの変異株にはいくつかの治療法の有効性の低下が示され、現在流行している変異株に対するパンデミックへの警告とワクチンの追加接種の必要性を示している。

new! 2022.1.29

Phosphopeptide enrichment using Phos-tag technology reveals functional phosphorylation of the nucleocapsid protein of SARS-CoV-2  

Phos-tag技術を用いた新型コロナウイルスヌクレオカプシドタンパク質(NP)の機能的リン酸化部位の同定


先端医科学研究センター  プロテオーム解析センター   井野 洋子 特任助手、木村弥生 准教授
センター長  梁  明秀 (微生物学 教授)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のヌクレオカプシドタンパク質(NP)は、ウイルス粒子を構成するタンパク質の1つであり、様々な宿主タンパク質と相互作用することが知られています。宿主細胞内においてNPがリン酸化を受けることが知られていますが、実際にどの部位のリン酸化が、ウイルスの増殖性や感染性に寄与するかは解明されていませんでした。本研究では、Phos-tag精製という新しい技術を活用し、ウイルス粒子内のNPのリン酸化を調べました。その結果、NPの79番目のセリン残基がリン酸化を受け、その部位にPin1という宿主因子が結合することで、ウイルスの複製が維持されていることが明らかになりました。本研究成果は、新型コロナウイルスに対する新たな感染制御法の創出に役立つことが期待されます。


new!
 2021.8.23

All-Trans Retinoic Acid Exhibits Antiviral Effect against SARS-CoV-2 by Inhibiting 3CLpro Activity 

微生物学 梁  明秀  教授

SARS-CoV-2によるCOVID-19のパンデミックは、世界的な制圧努力にもかかわらず、今もなおオミクロン株などの変異株が広がり続けています。SARS-CoV-2の主要なプロテアーゼである3C様プロテアーゼ(3CLpro)は、SARS-CoV-2変異株間でアミノ酸の保存性が高く、ウイルスの複製に重要な役割を果たすことから、抗ウイルス薬開発において最も興味深いターゲットの一つと考えられます。本研究では、AlphaScreenを用いたSARS-CoV-2 3CLpro阻害剤のハイスループットスクリーニングを構築し、天然物化合物をスクリーニングした結果、FDA承認薬であるall-trans retinoic acid (ATRA)が3CLpro活性を阻害することを見いだしました。ATRAはトレチノインとして抗白血病薬として欧米等で承認されている薬剤であるため、今後、本化合物のCOVID-19への適応について検討を行う予定である。 

new! 2021.4.1

Whole Nucleocapsid Protein of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 May Cause False-Positive Results in Serological Assays (2021.4.1)

微生物学 梁  明秀  教授、山岡 悠太郎 客員研究員 (関東化学株式会社所属) 

新型コロナウイルスの抗体検査法に用いられる抗原タンパク質の一つであるヌクレオカプシドタンパク質に、感冒様疾患を引き起こすヒトコロナウイルスと相同なアミノ酸配列が認められることを見出しました。そして、本相同領域を除いた部分タンパク質を抗原に用いることで、抗体検査の特異度を向上できる可能性があることを明らかにしました。本研究成果は、高性能な新型コロナウイルスの抗体検査試薬の開発に寄与しました。
 

2021.12.27

Persistence of robust humoral immune response in COVID-19 convalescent individuals over twelve months after infection

新型コロナウイルス感染から1年後における抗ウイルス抗体および中和抗体の持続性に関する調査結果


微生物学   梁 明秀 教授、宮川 敬 准教授 
データサイエンス研究科   後藤 温 教授

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し回復した方の、6ヶ月後および1年後における血清の解析を行い、感染から1年後でも多くの方が検出可能な量の抗ウイルス抗体と中和抗体を有していることを報告しました。しかしながら、軽症例の一部(約20〜30%)では、感染6ヶ月後には既に変異株に対する中和活性が失われており、一方で、重症例では、感染1年後でも全ての変異体に対する中和抗体を維持していることもわかりました。

本研究は、横浜市立大学が主導した「新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査PROJECT」の一貫として行われ、本年5月に中間報告をした研究成果の最終報告となります。

 

2021.12.24

Antibody titers against the Alpha, Beta, Gamma, and Delta variants of SARS-CoV-2 induced by BNT162b2 vaccination measured using automated chemiluminescent enzyme immunoassay

新型コロナウイルスワクチン 接種6週間後までの抗体価に関する調査報告

感染制御部   加藤英明 部長
微生物学   梁 明秀 教授、宮川 敬 准教授  
データサイエンス研究科   後藤 温 教授
血液・免疫・感染症内科学   中島秀明 教授


ファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンを2回接種 (初回の接種は2021年3月15日~22日、2回目の接種は4月5日~13日)した医療従事者168名の血液を採取し、初回ワクチン接種6週間後 (2回目接種3週間後) までの抗体価を測定して、影響を及ぼす背景因子の解析や、変異株に対する抗体価との比較を行いました。また、ウイルスの感染阻害能を示す中和抗体価についても、シュードウイルスを用いて定量的に測定し分析を行いました。

その結果、2回目接種3週間後に十分な免疫が誘導されると考えられること、年齢が高い人ほど、接種後の抗体価が低いことが判明しました。

 

2021.11.05

Vaccine-induced humoral and cellular immunity against SARS-CoV-2 at 6 months post BNT162b2 vaccination

新型コロナウイルスワクチン接種後6か月時点の 抗体価に関する調査結果報告

感染制御部 加藤英明 部長
微生物学  梁 明秀 教授、宮川 敬 准教授  
データサイエンス研究科   後藤 温 教授
血液・免疫・感染症内科学   中島秀明 教授


ファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンを接種した医療従事者98名の血液を採取し、ワクチン接種6か月後の抗体価と細胞性免疫を調べました。

その結果、6ヶ月の時点で、抗体は98名全員から検出されたものの、ほとんどのワクチン接種者において、ピーク時(接種1〜3週後)と比べ、抗体価は顕著に(約90%)減少し、ウイルスの感染阻害能を示す中和抗体価も約80%減少し、その陽性率は85.7%でした。また、細胞性免疫については、ワクチン接種6ヶ月時点で、多くの人で細胞性免疫反応が認められ、経時的な評価は行えていませんが、新型コロナウイルスに対するワクチン接種後の免疫応答における細胞性免疫の役割の重要性も示唆される結果でした。

2021.10.20

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 血清予後予測マーカータンパク質を発見


先端医科学研究センター  プロテオーム解析センター  木村弥生 准教授
センター長  梁  明秀 (微生物学 教授)
救急医学        竹内一郎 教授
臨床統計学     山本紘司 准教授
免疫学            田村智彦 教授
呼吸器病学     金子   猛 教授


質量分析計を利用したプロテオーム解析技術を用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の予後と密接に関連する血清タンパク質を明らかにしました。これらのタンパク質の測定は、予測される予後に基づいた適切な治療の提供に役立つことが期待されます。 

2021.6.24

Development of highly sensitive and rapid antigen detection assay for diagnosis of COVID-19 utilizing optical waveguide immunosensor

微生物学 梁 明秀 教授


COVID-19のパンデミックの拡大を防ぐには、適切な診断と治療が不可欠です。現在、新型コロナウィルス感染症の検査のほとんどはRT-PCR法などの核酸増幅法に依存していますが、RT-PCR法は高価な装置と時間を要し、一般のクリニックではなかなか行えないため、それに代わる迅速かつ簡便な抗原検査の開発が望まれています。新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の迅速抗原検出検査は、鼻咽頭や鼻腔ぬぐい液中のウイルス抗原蛋白質を直接検出する方法で、どこでも短時間で簡便に検査することが可能で、コストも低い利点があります。一方、現在普及している抗原検査は、イムノクロマト法による目視の検査が主流であり、PCR法と比較して十分な感度が得られないとう問題がありました。
 

本研究において、産学連携の共同研究により、光導波路センサーを用いた高感度な新型コロナウイルス抗原検出法を用いて、特異的かつ高感度の抗原検査法を開発しました。COVID-19の診断のほか、感染源となるうる人の迅速検査にも使用可能で、タイムリーで適切な治療または予防措置を講じる手助けとなります。 

2021.6.14

Highly specific monoclonal antibodies and epitope identification against SARS-CoV-2 nucleocapsid protein for antigen detection tests

新型コロナウイルス抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発とその実用化~高精度な抗原検出キットの普及へ~

微生物学   梁 明秀 教授、宮川 敬 准教授
微生物学   山岡 悠太郎 客員研究員  (関東化学株式会社所属)


昨年、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功し、この抗体のさらなる性状解析および、抗体を用いた実証研究を、横浜市衛生研究所、国立感染症研究所などとともに進めてきました。そして、本抗体により、感染拡大傾向にある様々な新型コロナウイルス変異株も、従来株と同様に検出できる、高精度な抗原検出キットの開発が可能であることを明らかにしました。これらの研究成果は、Cell Press社の刊行する学術雑誌である「Cell Reports Medicine」に掲載されました。

 

 

2021.5.20

新型コロナウイルス感染から約1年後における 抗ウイルス抗体および中和抗体の保有状況に関する調査

臨床統計学 山中 竹春 教授
微生物学    梁 明秀 教授
データサイエンス研究科   後藤 温 教授

研究グループは、昨年8月より「新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査PROJECT」を実施し、昨年12月には回復者のほとんどが6か月後も従来株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していることを報告しました。

今回、2021年3月末までに採血を実施した約250例のデータを解析し、感染から6か月後と1年後において(1)抗ウイルス抗体および中和抗体の量はいずれも6か月時点より緩やかに減少する傾向にあることを確認しました。一方で(2)依然として多くが抗ウイルス抗体および検出可能な量の中和抗体を有しているという結果も得られました。さらに拡大傾向にある変異株に対する中和抗体の保有割合についても評価を行ったところ、6・12か月時点の中和抗体保有割合は従来株に比べて低下傾向にあることが示されました。

2021.5.12

Rapid detection of neutralizing antibodies to SARS-CoV-2 variants in post-vaccination sera

新型コロナ変異株に対するワクチン接種者の約9割が 流行中の変異株に対する中和抗体を保有することが明らかに

臨床統計学 山中 竹春 教授
微生物学    梁 明秀 教授, 宮川 敬 准教授
附属病院  感染制御部   加藤 英明 部長



研究グループは、現在接種が進められている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンが、従来株のほか、様々な変異株に対しても中和抗体の産生を誘導し、液性免疫の観点から効果が期待できることを明らかにしました。現在、日本でワクチンの接種が進められているところですが、接種をされる方々にとっての重要な基礎データとなります。

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