新型コロナウイルスワクチン 接種6週間後までの抗体価に関する調査報告
2021.12.24
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新型コロナウイルスワクチン 接種6週間後までの抗体価に関する調査報告
横浜市立大学附属病院 感染制御部 加藤英明部長、同大学大学院医学研究科 微生物学 梁 明秀教授、宮川 敬准教授、同大学院データサイエンス研究科 後藤 温教授、同大学院医学研究科 血液・免疫・感染症内科学 中島秀明教授、東ソー株式会社、関東化学株式会社などの共同研究グループは、ファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンを2回接種 (初回の接種は2021年3月15日~22日、2回目の接種は4月5日~13日)した医療従事者168名の血液を採取し、初回ワクチン接種6週間後 (2回目接種3週間後) までの抗体価*1を測定して、影響を及ぼす背景因子の解析や、変異株に対する抗体価との比較を行いました。また、ウイルスの感染阻害能を示す中和抗体価*2についても、シュードウイルスを用いて定量的に測定し分析を行いました。
その結果、2回目接種3週間後に十分な免疫が誘導されると考えられること、年齢が高い人ほど、接種後の抗体価が低いことが判明しました。
本研究成果は、Journal of Infection and Chemotherapyに掲載されました。
その結果、2回目接種3週間後に十分な免疫が誘導されると考えられること、年齢が高い人ほど、接種後の抗体価が低いことが判明しました。
本研究成果は、Journal of Infection and Chemotherapyに掲載されました。
研究の背景
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種には、ファイザー社やモデルナ社製のメッセンジャーRNAワクチンが用いられ、これは、武漢株のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を主な標的とするように設計されています。このワクチンの予防効果や重症度の軽減効果には個人差があり、COVID-19に対する集団免疫レベルを把握するためには、SARS-CoV-2およびその変異体に対する免疫応答の大規模な調査が必要です。
調査結果
研究参加に同意を得た医療従事者から、ワクチン接種前、接種後2、4、6週目(初回接種後3週目に2回目接種)の4時点で採血を行い、サンプルを解析しました。ウイルスに対する抗体価(SP IgG)は、AIA-CL用 SARS-CoV-2-SP-IgG抗体試薬(東ソー株式会社)を、中和抗体価(NT50)は、ウイルスのスパイクをもつシュードウイルスを用いてそれぞれ定量的に測定しました。
被験者(平均年齢43歳;女性75%)の抗体価は、初回接種前、2週後、4週後、6週後でそれぞれ0.1、1.35、60.80、97.35でした(図1)。また、初回接種後4週後と6週後において、抗体価と中和抗体価は、正の相関を示しました。(図2)
被験者(平均年齢43歳;女性75%)の抗体価は、初回接種前、2週後、4週後、6週後でそれぞれ0.1、1.35、60.80、97.35でした(図1)。また、初回接種後4週後と6週後において、抗体価と中和抗体価は、正の相関を示しました。(図2)
図1 ワクチン接種後の抗体価の推移
図2 ワクチン接種後4週間後、6週間後の抗体価と中和抗体価の相関
武漢株と変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ株)*3を比較した抗体価の割合は、それぞれ2.029、0.544、1.017、および0.6096でした(図3)。また、初回接種から6週間後の抗体価指数は、高齢者ほど低い値を示しました。
図3 武漢株と変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ株)を比較した抗体価の割合
今後の展開
今回の研究においては、被験者168名と小規模ですが、ワクチン接種6週間後の免疫状況について、一定以上の免疫(抗体index 値10以上、もしくはNT50 値100以上)を獲得した被験者の割合は99.4%、中和抗体を獲得した被験者の割合は100%でした。研究チームでは、今後さらに、ワクチンの有効性を分析するため、抗体価や細胞性免疫についても調査し公表する予定です。
研究費
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)「新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究」の支援を受けて行われました。
論文情報
Antibody titers against the Alpha, Beta, Gamma, and Delta variants of SARS-CoV-2 induced by BNT162b2 vaccination measured using automated chemiluminescent enzyme immunoassay
Hideaki Kato, Kei Miyakawa, Norihisa Ohtake, Hirofumi Go, Yutaro Yamaoka, Satoshi Yajima,
Tomoko Shimada, Atsushi Goto, Hideaki Nakajima, Akihide Ryo
Journal of Infection and Chemotherapy (2021)
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.11.021
Hideaki Kato, Kei Miyakawa, Norihisa Ohtake, Hirofumi Go, Yutaro Yamaoka, Satoshi Yajima,
Tomoko Shimada, Atsushi Goto, Hideaki Nakajima, Akihide Ryo
Journal of Infection and Chemotherapy (2021)
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2021.11.021
用語説明
1 抗体価 : ウイルスタンパク質に対する抗体のうち、本研究ではスパイクタンパク質の受容体結合領域に結合するIgG抗体量を定量的に調べている。
2 中和抗体価 : ウイルス感染阻害能を有する抗体の活性を示す指標の一つで、本研究では血清を段階的に希釈してウイルス感染を50%阻害する血清希釈倍率をNT50値として定量的に算出している。
3 変異株 : WHOがリスク分析し、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のあるウイルス株を「懸念される変異株(VOC)」としてギリシャ文字を用いて分類をしている。アルファ=英国由来のB.1.1.7系統の変異株、 ベータ=南アフリカ由来のB.1.351系統の変異株、ガンマ=ブラジル由来のP.1系統の変異株、デルタ=インド由来のB.1.617.2系統の変異株。
2 中和抗体価 : ウイルス感染阻害能を有する抗体の活性を示す指標の一つで、本研究では血清を段階的に希釈してウイルス感染を50%阻害する血清希釈倍率をNT50値として定量的に算出している。
3 変異株 : WHOがリスク分析し、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のあるウイルス株を「懸念される変異株(VOC)」としてギリシャ文字を用いて分類をしている。アルファ=英国由来のB.1.1.7系統の変異株、 ベータ=南アフリカ由来のB.1.351系統の変異株、ガンマ=ブラジル由来のP.1系統の変異株、デルタ=インド由来のB.1.617.2系統の変異株。