YCU 横浜市立大学
search

ベトナム野外圃場で栽培したキャッサバにおけるフロリゲン遺伝子の時系列発現を解明 Plant Molecular Biology誌に発表 木原生物学研究所の肥後あすか特任助教と辻寛之准教授ら

2020.09.24
  • 大学からのお知らせ
  • 研究

キャッサバにおけるフロリゲン遺伝子の時系列発現を解明

(左)キャッサバの花。  (右)キャッサバの塊根。タピオカなどに用いられるデンプンの材料となる。貧栄養地でも生育可能であるため、換金作物として現地農家の暮らしを支える。しかし花が咲く時期の制御が難しいため、交配育種による品種改良はあまり進んでいない
木原生物学研究所の肥後あすか特任助教と辻寛之准教授は、理化学研究所、ベトナム農業遺伝学研究所等との国際共同研究により、東南アジアの野外圃場で栽培したキャッサバにおけるフロリゲン遺伝子の時系列発現を解明しました。

キャッサバはデンプン原料として世界的に注目されている作物ですが、品種改良はそれほど進んでいません。キャッサバはタピオカや工業用デンプンの原料となる作物です。貧栄養環境でも旺盛な生産力を示すことから、気候変動に対応した持続的な作物生産や農家の経済的自立を助ける作物として世界的に注目されています。キャッサバの品種改良は非常に重要ですが、これまでうまく進めることが困難でした。交配によって品種改良するためには掛け合わせる植物同士が同時に花を咲かせる必要がありますが、キャッサバは花がいつ咲くのかを制御することが困難だからです。キャッサバが環境に応答してどのように花をつけるのかが理解されれば、この問題の解決につながります。

本研究ではキャッサバをベトナムの野外圃場で栽培して栽培期間を通したサンプリングを行い、全遺伝子発現の時系列変動を解明しました。特にフロリゲン遺伝子が異なる野外環境でどのように発現変動しながら花芽形成に至るのかを初めて明らかにしました。本研究の知見は将来的にキャッサバの花の咲く時期の制御を可能にすることにつながり、交配育種による優良品種育成に貢献できると期待しています。


<論文情報>
Tokunaga, H., Quynh, D.T.N., Anh, N.H. et al. Field transcriptome analysis reveals a molecular mechanism for cassava-flowering in a mountainous environment in Southeast Asia. Plant Mol Biol (2020).
https://doi.org/10.1007/s11103-020-01057-0

本研究は、理化学研究所・環境資源科学研究センター 関原明チームリーダー(横浜市立大学・木原生物学研究所 客員教授を兼任)、ベトナム農業遺伝学研究所およびキャッサバ分子育種国際研究所(AGI /ILCMB)等との国際共同研究で実施されました。

JSPS国際共同研究事業プロジェクト日本学術振興会の国際共同研究事業「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム(28年度・29年度)/国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業(30年度)」(代表 辻 寛之)による支援を含む成果です。
<連携大学院について>
木原生物学研究所では、世界でも有数の研究機関である理化学研究所、農業・食品産業技術総合研究機構と連携大学院協定を締結し、大学院生の研究指導により研究交流を行っています。生命ナノシステム科学研究科生命環境システム科学専攻の大学院生は、これらの機関の研究者からの指導を受けられる環境が整っています。本件は、連携大学院・理化学研究所の関原明客員教授のラボの研究成果です。
連携大学院教員はこちらから確認できます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加