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呼吸器病センター

肺がん~化学療法・放射線療法について~

化学療法とは

薬物を用いた治療です。進行期の肺がんに対して、がんの増大や他臓器への転移を抑制し、がんの進行を遅らせ、生存期間延長が目的とする治療が最も多くおこなわれている化学療法です。

免疫療法や分子標的薬など使用可能な薬剤が増え、これらの薬剤の効果的な使用方法が検証された結果、化学療法は進行期以外にも行われる頻度が増えています。

がんの切除術後に再発予防のため実施する化学療法や、がんの切除術前に病変縮小を目的として化学療法を行うことがあります。また、放射線治療効果を高めるため化学療法を併用する場合もあります。
特定の遺伝子変異がある肺がん、特定の物質を多く産生している肺がんなど、特徴を有する肺がんに対して高い効果がみられる薬剤があるため、手術や気管支内視鏡検査などで採取された肺がんの細胞を用いて、対象となる薬剤選択のため遺伝子変異や産生物質などの特徴を確認し行う個別化医療が重要となっています。
いずれの化学療法も、対象となるがんの種類や特徴・病期、年齢、他の疾患有無などを参考に、使用する薬剤の組み合わせ、使用量、頻度については効果と副作用の程度が確認された方法に基づいて実施されます。

抗がん剤治療

従来からある所謂“抗がん剤”で、細胞障害性薬剤と呼ばれることがあります。がん細胞に障害を与え増殖抑制や死滅させることでし、進行・再発や転移を防ぐ効果があります。
がん細胞だけでなく、正常細胞の増殖も抑えます。そのため胃腸や皮膚、血液をつくる骨髄の細胞など細胞分裂が活発な部位に影響しやすく、吐き気や皮膚のしびれといった副作用が出やすい薬剤です。

免疫療法

本来身体に備わっているがんへの免疫反応を強化し、がんの増殖・進展を制御する治療です。抗体医薬である免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫抑制状態を回復させ免疫反応を活性化することができます。
肺がんでは2015年に保険適応となりました。免疫チェックポイント阻害薬は使用中だけでなく使用後も正常部位への免疫反応が生じる、免疫系の副作用に注意する必要があります。

分子標的薬剤

分子標的薬は、がん細胞内部の過剰な増殖に関わるタンパク質、増殖に必要な成分を運ぶ血管形成に関連したタンパク質、がんを攻撃する免疫反応に関わるタンパク質などを標的にした薬の総称ですが、ここでは免疫療法で用いる薬以外を指し、「小分子化合物」と「抗体薬」があります。
細胞障害性薬剤は、異常な細胞だけでなく正常な細胞にも攻撃的に作用してしまうのに対し、分子標的薬は、病気の原因に関連している特定の分子だけを選んで攻撃するという特徴があります。
肺がんではEGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、RET、Krasなどの遺伝子変異が認められた場合、それぞんに対応した小分子化合物治療を行います。血管新生に関連した物質の働きを阻害する薬剤を使用することもあります。

放射線療法

臨床病期I〜Ⅱ期で手術が困難な方、病変部位に集中するように多方向から放射線照射する「体幹部定位放射線治療」も積極的に行われており、照射技術の進歩と相まって良好な治療成績を示しています。Ⅲ期でがんの進展のため手術が困難な場合でも、「根治的治療」(がんを治すための治療)が行える場合もあります。
肺がんが進行し気管や大血管、食道などを腫瘍が圧迫している場合、骨や神経に浸潤で痛み強い場合、脳に転移した場合などでは、放射線治療が症状の軽減に有効な場合があります。