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「横浜をつなげる30人」の第4回セッションが開催されました。

2021.06.15
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「横浜をつなげる30人」の第4回セッションが開催されました。

「横浜をつなげる30人」の第4回セッションが1月18日から22日の期間に、オンラインで行われました。
この第4回セッションでは、これまでのセッションで形成された全5つのプロジェクトごとに、オープンセッションが開かれました。オープンセッションとは、それぞれのプロジェクトが巻き込んでいくステークホルダーを招聘し、ファシリテーションスキルを発揮して対話の場を生み出すセッションのことです。
オープンセッションを行う目的は、2つです。1つは、自分たちでワクワクする問いを立ててステークホルダーと対話することで、プロジェクトの効果を肌で感じるためです。もう1つは、チームメンバーだけの議論では、行き詰まってしまうことがあるからです。第三者の視点でプロジェクトについて一緒に考えてもらうことで、価値観の違いを許容できるようにし、より広い視座で事業をつくりあげるきっかけとすることを目的としています。

このようにオープンセッションは普段のセッションとは違い、自分たちだけの力で場を作らなければなりません。招聘するステークホルダーの選出から、日程の調整、設問の設定には相当の苦労が伴いました。当初は「本当にこの議題で場が活性化するだろうか」「当日のファシリテーターは私で良いのか」といった迷いや戸惑いの声も聞かれました。

そんな不安いっぱいで迎えた当日。各方面のエキスパートが数名集まる中で、オープンセッションは行われました。若干の緊張感が漂いながらも、当事者だからこそわかる声や、実体験に基づいた新しい提案などが積極的に交わされ、メンバー内での話し合いだけでは見えてこなかった視点を得ることができました。改めて、クロスオーバーの素晴らしさと、参加者のネットワークの広さを感じることができました。

終始明るい雰囲気でセッションを終えた後、メンバーからは普段あまり見せないような安堵と満足な表情が垣間見えました。ですがそれはほんの一瞬で、徐々に「ここから事業をより具体化し、社会課題を解決させるのだ」という強い覚悟の表情に変わっていきました。
次回のDay 5はいよいよ事業案のブラッシュアップです。今回のセッションを通じて吸収したことが、事業案に必ずや活きることでしょう。

5つのグループそれぞれの詳しいセッションの内容は、こちらから御覧ください。
https://30fan.jp/yokohama1_opensession.html/

そして前回から行われている参加者インタビューの第2弾!
今回も学生サポーターの平井嘉祐さん(国際商学部2年生、芦澤ゼミ所属)が、市民NPOセクターから4名の方にインタビューを実施しました。市民NPOの参加者側から見た「横浜をつなげる30人」についてと、市民NPOから見た横浜とその未来について、対談形式でお話しいただきました。

今回ご協力頂いた参加者の皆様(プロフィールはいずれも取材当時)

品川優 様 (株式会社An-Nahal CEO)
<品川優 様>
※株式会社An-Nahal CEO
企業のダイバーシティ&インクルージョン推進とそのための人材育成・組織開発を専門とし、人事制度設計や研修開発に携わる。独立後は国際機関での教育関連プロジェクトや、NPO法人での難民申請者への就労支援を経て、「多様な人材が協働する社会を作る」をビジョンとしたAn-Nahalを設立、ダイバーシティ&インクルージョン推進に取り組む企業・個人が学び実践するコミュニティづくりに取り組む。世界経済フォーラムGlobal Shapers, JWLIフェローとしても活動。


田中多恵 様 (NPO法人 ETIC. 横浜ブランチ)
<田中多恵 様>
※NPO法人 ETIC. 横浜ブランチ
大学卒業後、㈱リクルートマネジメントソリューションズで組織開発・人材開発に係る仕事を経て、2009年NPO法人ETIC.に参画。以来、横浜市内で、「地域未来創造型インターンシップ」や「Yokohama Changemaker‘s CAMP」等のプログラムを立ち上げ、大学生や若い世代のアントレプレナーシップ開発に焦点をあてた活動を行う。プライベートでは7歳・0歳の2児の母。


遠藤望 様 (Yocco18代表/キャラクター原作)
<遠藤望 様>
※Yocco18代表/キャラクター原作
「地理学×横浜愛×イラストでまちづくり」
オリジナルの横浜18区キャラクターを活用した地域魅力発見プロジェクト「Yocco18」を展開。学生時代より地域に関心を持ち、横浜のまちづくりや商店街振興などの活動に広く携わる。大学では交通地理学を専攻。現在はフリーのデザイナーおよびクリエイターとしても活動している。横浜市西区出身。


橋本綾子 様 (一般社団法人Cross-Community Design and Management Lab. 代表理事)
<橋本綾子 様>
※一般社団法人Cross-Community Design and Management Lab. 代表理事
2015年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士卒業。大手都市銀行へ就職後、現在は大手Webサービス会社で社内システムの企画・運用を担当し、組織の生産性向上を図る業務に従事。大学生の頃より〈個人が望む最適な働き方の選択が可能なコミュニティの実現〉を目指し、活動を続けている。学部生時代は労働法を専攻し、現在は企業に勤める傍ら自身でも一般社団法人を設立。パラレルキャリアを実践しつつ、起業家自立支援サポートやキャリア支援、横浜でのビジネスコンテストを主催。



30人に参加しようと思ったきっかけを教えて下さい。

品川)きっかけは、ご紹介です。世界経済フォーラム任命のユース組織Global ShapersCommunityの一員として横浜を拠点に様々なプロジェクトを推進しているのですが、その中で横浜100人カイギ というコミュニティイベントを2年ほど開催していました。横浜で分野を問わず活動をしている人がスピーカーとして活動紹介を行い、参加者とつながるイベントです。「横浜をつなげる30人」には登壇者の方も多くいらっしゃいます。そのイベント開催場所を提供いただいていた富士通エフサスの方から芦澤先生をご紹介いただきました。
グローバルな視点をもちながらローカルで社会課題解決に取り組んでいるユースとして、「横浜をつなげる30人」に入ってほしいということで、参加させていただくことになりました。本業の状況としても、起業2年目でコロナの影響を受け事業自体があまり動き回れずに試行錯誤しているタイミングでした。
一つのチャレンジとして都心での活動から地元でもあり、多文化共生に力を入れている横浜に軸足を移し、ダイバーシティ&インクルージョン推進事業の本格展開・仲間づくりをする事に価値があると考えました。そういう意味で、「横浜をつなげる30人」への参加は、Global Shaperの活動における地域とのつながり強化と本業での仲間づくりやアイデアづくりに絶好の機会と考えて参加を決心しました。

遠藤)「横浜をつなげる30人」のメンバー募集は、地域活動の知人を通して知りました。内容を見て、横浜で活躍するビジネスパーソンと繋がれること、プログラムを通してオープンイノベーションや横浜の地域課題の解決に取り組めることから、参加を希望しました。私自身は学生時代より横浜のまちづくりやNPOなどの活動に携わっており、横浜のまちづくりや市民参画プロジェクトにはもともと非常に関心がありました。
今はデザインやイラストの腕を活かし、ローカルな地域を盛り上げる市民プロジェクトを運営しています。同じく地域で活動する人たちとのコラボが出来たら嬉しいと思った点も参加理由の一つです。お役に立てることがあればと良いなと思っています。

田中)2009年くらいにETICに参画し横浜ブランチを立ち上げ、10数年大学生のインターンシップコーディネートやソーシャルビジネスの立ち上げサポート等の分野で活動してきました。横浜って本当に面白くて、掘り下げ甲斐がある街だなと実感しながら自分の足で街の人に会いに行ってプロジェクトを推進するという活動をしてきました。
しかし、品川さんと同じように、コロナで急に家に閉じ込められる生活になってしまい、さらに2020年7月に7年ぶりに第2子が生まれて産休・育休に入ったことも重なり、突然の環境変化に孤独を感じていました。たまたま、Facebookで「横浜をつなげる30人」がオンライン中心で開催されるということを知り、「オンラインならば赤ちゃんが一緒でももしや参加できるのでは?」と思って飛び込んでみました。
今回under40の方が中心で、今まで出会ってこなかったような20~30代の第一線でご活躍されている方々とのご縁をいただき、よかったなと思っています。

橋本)きっかけは、自身が卒業した大学院の指導教員からの紹介です。個人的な学生時代の活動などから、少しだけ横浜の繋がりはあったもののそこまで多いとは言えず…。そのなかでも特に起業家の方や横浜を中心に活動をしている方とのつながりを増やしたいと考えて、参加させていただきました。

これまでのお話を聴いていると、いままでは地域とのつながりがいまひとつもてなかったということでしょうか?

品川)いままでは地域に限定せず、国内外、特に都心にお客様やパートナーがいました。地元でありGlobal Shapers Communityの活動もあったので、横浜も知ってはいる、という感じでしたが限定的でした。特にコミュニティの活動やスタートアップの時期には直接会うことでコラボレーションが生まれることが多く、コロナ禍で対面の場が激減してしまったことは大きな転換期になりました。
オンラインの出会いから具体的なアクションにつなげることに苦戦していて、環境を変えようと決めました。最初の一歩として8月から関内のコワーキングに入居し、地域とのつながりや「アポをとらなくてもそこにいけば会える人」を増やすという動き方に変えました。実際に「横浜をつなげる30人」の参加者とも、少人数で少し会って話すなどもしやすかったです。また、共通の目標をもって取り組むという意味では単発のオンラインイベントよりも有機的・発展的な関係になりやすいと考えました。他にも、スタートアップと行政、スタートアップと大企業など、1:1のステークホルダーの関係だとビジネス色が強くなってしまい自分たちの利害関係をもちやすいのですが、共通の目標をもって取り組むことでそういった利害関係を超えた関係構築をしやすいかなとも思ったことも参加を決めた要因の1つでもあります。 

コロナに対する印象・自身の活動に影響は?

品川)いままでの行動パターンが通用しなくなったという感覚です。半ば強制的に働き方や人との関係のつくり方、仕事のつくり方が変わりました。もちろんコロナによるネガティブなインパクトは多くありました。一方でそれが逆にきっかけとなって「横浜をつなげる30人」に参加できたことなどポジティブな面もあります。

田中)否応なく家の中に閉じこもることが良いとされる状況が誰しも感じている変化だと思います。しかしそれは、赤ちゃんを育てる私にとってはある意味チャンスでもあって、仮に「横浜をつなげる30人」が集合研修のような形で開催されていたとしたら、6時間参加できますかっていうと「赤ちゃんかわいそうって言われちゃうな」とか「毎回赤ちゃん連れてみなとみらいまで行くのはきついな」とかの理由で、おそらく育休中の参加は無理でした。今回のように、対面で集まる機会もあったけれど、基本はオンラインベースで開催されたことで大変さ加減がかなり軽減されて参加できているので、その面はありがたいですね。

橋本)コロナによる変化って、よかったことと悪かったことが半々だと感じています。悪かったこととしては品川さんが言っていたことに同意できます。自分の法人がある私にとっては会社を大きくするという観点だけから考えると、自分のキャラクター的にオンラインでなんとかするのはまったく得意じゃないんです。初対面なのにオンライン上によくわからない人が大量にいる状態って結構つらいなって、もう去年の4月くらいには既に感じていました。
よかったなと思うのはパラレルキャリアをしている身として、従来は、昼間は絶対に会社にいなきゃいけなかったのが、コロナの影響で会社に行かなくて済んだところです。さらに、うまいこと休憩時間を組み合わせることができ、平日の日中帯に別の会社さんとコンタクトをとれるようになるなど、効率的に法人に対しての活動量をあげられました。そういう意味では田中さんと同じような感覚もあり、経営的なことや新しい人と繋がることではハードルはありつつも個人的にはいい方向に進んだのではないかと思っています。 

遠藤)私も皆さんと同じですね。去年まで様々な横浜のまちづくりの組織に関わらせていただいていたのですが、そこでは夜の時間、月に何回か会って打ち合わせをして、その後みんなで居酒屋に直行して会議の続きをすることがルーティーンになっていました。……いわゆる「飲み二ケーション」が大きなウエイトを占めていました。飲み会に行かないと、その後のやりとりで話についていけなくなるということがけっこうあったんです。コロナの影響で「飲みニケーション」はなくなり、自分自身の本当にやりたかったことに時間をさけるようになりました。もともと自分のためのクリエイティブな作業と、人と交流し繋がることの時間の配分やバランスには悩み続けてきたので、幸いにもこのニューノーマルにはうまく馴染むことができました。

自身の所属するセクターから見て、横浜はどんな都市ですか?

遠藤)横浜は、地理学的観点から、大都市であることと港町であることの2つの特徴に尽きると思っています。日本の多くの大都市は基本的に城下町を発端として都市が形成されているのですが、横浜市は日本の大都市の中では珍しく港町の機能を中心として都市が形成されています。横浜のアイデンティティとなる部分は港町や国際交易港、外国といち早く交流してきたというところが非常に大きく、今につながっています。多くの方々にとって横浜=港町のイメージが非常に強いですが、一方で大都市の部分も重要だと思っています。横浜市は、全国で最大の人口を誇る自治体です。経済規模もトップクラスで東京・大阪・名古屋と並ぶ日本の経済をけん引する大都市でもあります。実際に横浜市民もこれらの都市に負けないぞというライバル心を持っていて、市民のプライドも高いですね。
そういう意味では市民力が潜在的に秘められた場所だと思います。最後にもう一つ。前回の行政セクターの方の記事を拝見し、久継さんと同じ回答になってしまいますが、横浜は多様性が一つのキーワードだと思います。18区に多様な地域資源が存在していて、港だけじゃない、自然豊かな郊外だったり工場地帯だったり下町の商店街だったり、地理的に見て多様性に富んでいる都市だと思います。

品川)たしかに多様性はキーワードですよね。私の知るところだと外国籍市民も多く、企業でも研究開発拠点が多いためいわゆるビジネスパーソンだけでなく研究者の方が多かったり、中小企業が多くいろんな生業をやられている方が多かったり、という意味でも多様性に富んだ都市だといえると思います。
私は横浜に小学生の時から住んでいるので、愛着という意味で横浜のことは好きで、なんとなく誇らしい感じがあります。一方で私が活動してきた国際協力、多文化共生、ダイバーシティ&インクルージョンというテーマで考えると、横浜の良い面だけで表をきれいにコーティングされていてなかなか課題のところを知る・接する機会が少ないと思います。そういう意味では、きれいなところだけを見せるのが得意な都市だなとも感じます。みなとみらいって大きな商業施設・ホテルがあって、きらきらしていてそこにいる人がみんな楽しそうなポジティブなイメージが多いと思います。でも実はすぐ近くにある寿町のようになかなか陽が当たらないコミュニティも確実に存在していて、歴史的にはそういったコミュニティが横浜を形作って支えてきた部分もあります。横浜市民として育っていく過程でそのようなコミュニティや歴史を学ぶ機会はあまりなく、少なくとも私自身は自分で参加したワークショップで知るということも多くありました。
企業に関しても、みなとみらいエリアの大企業が注目されがちですが全体の約99%を占める中小企業はあまり知られていないのが現状。ポジティブな面、わかりやすい魅力といった一部の横浜だけでなく、このような多様な側面も発信したり連携したりできると、多様性に富むだけではなく、インクルージョンされている街になるのではないかと思います。
国際交流という観点では、アフリカ開発会議(TICAD)の開催都市になっていたり、国際交流ラウンジがあったりと、市民の意欲と行動力があれば触れ合う機会の多い国際交流都市であるとも言えると思います。私も高校生の時にTICADに参加していたアフリカ某国の財務大臣が道に迷っていて自分から声をかけて案内した経験があります。あと、坂が多いですね(笑)。

橋本)畑、多くないですか?

品川)青葉区とかは畑多いですよね。

橋本)畑とか果樹園とかも多いですよね。個人的には先ほど品川さんがおっしゃっていたことで感じるところがあるなって思いました。横浜愛ってきれいにパッケージングされている感じがするという話をされていたと思うんですけれど、けっこう似たような印象があります。私は、横浜市はハードだけすごくきれいに整っているという印象です。それゆえにハードはいいけど中身の入れ替えがきかないから、実はそんなに中身って変わっていないんじゃないか?という疑問です。例えばみなとみらいに大企業さんをいっぱい誘致しよう、という取り組みも、見てくれというか、大きいところは入ってきているけれど中小企業に対する補助や助成は東京に比べたらまだまだだなと感じるところが多いんですよね。個人的には横浜発のおもしろいベンチャーの社長って会ったことなくて、ソーシャルベンチャーさんはいたりするけれどやはりおもしろいプロダクトをつくろう!という人たちって渋谷とか大崎とかにいる印象です。横浜って意外と穴になっちゃっているんじゃないですかね。東京に近いから 越境しやすいっていうのもあり、横浜愛にあふれているようで、横浜に還元したい、横浜を内から盛り上げたいという人は少ないのかな、横のつながりが希薄なのかな?と感じています。

田中)みなさんがおっしゃっていること、「うんうん」と思って聞いていました(笑)。横浜市ってとにかく街が大きいので良い面と課題が両方ありますよね。いい面としては、やはり恵まれていますよね、全体的に。スポーツクラブチームもいっぱいあるし、観光資源とか交通インフラとか、アーバンライフを謳歌できる環境が整っていて、恵まれているなと感じます。だからこそ横浜に住みたいと思う人も多くいるんだと思います。そういう人がいること自体、街としては恵まれていますよね。
一方で、大きいゆえにコミュニティの解釈が人によって違うという側面はあると思います。人によって「沿線エリアで街を盛り上げよう」とする人もいれば、「区で協力しましょう」という人もいる。
同じように「中小企業みんなで盛り上げよう」とか「自治体・町内会で」「学校圏」で、「横浜全域」であるいは「女性の力で」等など……という形で、いろんな活動主体が多様多層に入り混じっちゃっているんです。だから集中してパワーを発揮しきれない面がある。だけど、熱い想いを起点にパワフルに街を盛り上げて来た人がたくさんいたからこそ、この横浜が成り立ってきたし、多様なカルチャーが集積して色んな盛り上がり方をしてきています。最終的には「横浜のために一肌脱ぐぜ」っていう人がたくさんいるのはすごいことですよね。そこも含めて本当に面白くて掘り下げ甲斐がある都市だなと思っています。

前回、磯田さんがいろんな層に混じっているからこそ、どんなにいいビジネスでも広がっていかないと仰っていましたが、そこのところ起業などのプロジェクトに携わる田中さんや橋本さんはどうお考えですか?

田中)そこにチャンスがあるともいえますよね。「社会課題等のテーマ」や「エリアを盛り上げる」ということにエネルギーや求心力を持って活動しているひとたちが、探せば横浜には必ずいるので、そこをつないで斜めの関係とか接点をつくっていくとまた新しいことが生まれるということをすごく実感しています。だからこそこれまでになかった接点をつなぐことや、出会えていなかった主体同志が一緒にプロジェクトクトを仕組むことで、面白いプロジェクトを生み出しうると思っています。もちろん私たちにできていることはまだまだですけれど、社会課題・地域課題の解決という意味では、今回の「30人」の活動からも、無数のつながり方ができるんじゃないかなって思っています。

橋本)私なんかは逆に横浜の人はみんな人がいいなって思っていて、人がいいがゆえにビジネスになりにくいと感じています。ボランティア精神にすごくあふれているんですね。それって素晴らしいことですけれど、ビジネスの観点からするとお金が発生しないタイミングが多いんです。誰かのために何かを無償で提供していくことは大事だけれども、会社を運営させていく観点からするとお金が入ってきません。結局いつまでたってもそのソーシャル分野として、おもしろいひともいっぱいいるのにちゃんとビジネスになりきれないです。会社の規模や名刺が違うと、会える人が全然違うこともざらにあります。東京は何か少しするのにもお金のやりとりが発生します。逆に、だからこそベンチャー企業とかも生き残るすべがありますよね。横浜の人は無償労働がゆえに、ビジネスとしてなかなか発展しにくくて、そういった意味で横浜の人は、人がいいんだなって思います。

遠藤)橋本さんがおっしゃっていることがものすごくわかります。わたしもそういう意味では洗脳されていました(笑)。まちづくりの現場ってボランティアありきなところがありますね。有償ボランティアという価値観もあまり浸透していません。学校教育で地域のための課外活動が素晴らしいと言われ育っていくと、自分の生活を考えずに活動していく人が増えます。私もあるときふと気づいて「限界があるな」と感じたことが転機となりました。ビジネスの感覚を養うべきというか、「いいことをやっているからお金が発生しなくてもいい」という社会の価値観は変えていかないといけないように感じます。 

東京都と横浜って規模は似ているように感じますけれどいかがですか?

品川)規模は全然違いますね。横浜はアクティブに活動しているから、まちの中心になっている方に若い人や女性がまだまだ少ないと思います。私の世代で起業家をはじめロールモデルとしている人は東京拠点の方が圧倒的に多いです。そのため、コロナ前は渋谷を中心に都内での活動が多かったです。横浜からも1時間以内にアクセスできて、物事が進むスピードの速さや、会える人の多様性やチャンスは正直かなり違います。特に渋谷は若者も多く、スタートアップからユースの活動、アート、コミュニティ活動もとても活発な印象です。若い人でチャレンジしている人もとても多いですし、男女のギャップも横浜よりは少ないような気がして、少なくとも自分がアウェイと感じる瞬間はとても少なかったです。

橋本)品川さんと感覚値は似ていると思います。案件数は圧倒的に違うし、私の主戦場も港区を中心とした都心です。横浜には住んでいるけれど、強固な基盤をつくるには東京から切っても切り離せないと思います。

横浜に抱く理想像を教えて下さい。

田中)私が今所属しているプロジェクトで、組織やバックボーンの異なる人同士が協働することで越境し、誰かだけの利益になることではなく、地域全体・社会全体の利益になるような価値を生み出すということを目指して活動しています。思わぬ出会いや偶発的な刺激を起こしていくことによって自分の捉えていた横浜が違う解釈になったり、こういう側面があったんだ、こういう街の課題があるんだ、こういう問題意識で活動している人もいるのか、というように、どんどん自分なりの横浜の解釈が深くなったり広くなったりすることをお手伝いできたらなと思っています。出会いやプロジェクトへの参加をきっかけに、それまでは知らなかった横浜の側面を知ることで、親として子どもへの接し方に変化があったり、気づいたら自社で地域課題解決のプロジェクトを起案していたり、というような個人の変化を生み出していきたいですね。それが横浜のまちの未来への変容につながっていくと思っています。

品川)横浜でできることが増えたらいいなと思っています。それに加えて、横浜にしかないリソースを上手く活用できると横浜らしさができるかなと。一つの可能性として、外国籍市民が多い横浜で、多文化協働チームが彼らとの接点を生み出していくことで、新しい都市・コミュニティ活用のあり方を見出していきたいですね。
また、ある意味ロールモデルが少ないからこそ挑戦するときに評価じゃなくて応援される場所として横浜が機能するのではとも考えています。東京でできるかは自信がないけど、横浜ならやってみようかな、と思える人が増えるといいですよね。若い人とか多様なバックグラウンを持った方がまずは横浜でやってみようと思えるような都市にしていきたいです。商店街のおばちゃんや中小企業の経営者さん、子育て世代のパパママ、いろんな人から応援されたり、声をかけてもらえたりする距離感の街は魅力的だと思います。そうすると同世代や後輩で新しいことをする人に対しても横浜でやってみたらと前向きに誘えるようになっていくのではないかと思います。

遠藤)ローカルな地域の魅力の発信について特に思うことがあります。Yocco18をやっているなかで、横浜の行政のまちづくりはかなりブランディング志向が強いと感じています。品川さんもおっしゃっていましたが、基本的に横浜=おしゃれ、港、エキゾチックといった固定されたイメージしか発信されません。例えば、観光地に近接する横浜の古くからの市街地や郊外のエリアにスポットがあたることがあまりなく、みなとみらいや関内などの観光地ばかりを推している印象です。
一方Yocco18のTwitterでは、身近な地域の歴史やスポット等の情報に対し、毎回多くの反応をいただき、市民の方の身近な地域への関心の高さを感じ取ることができます。個人的な意見として、一般的に発信される横浜のシティプロモーションと市民の興味・関心や実生活とでは、かなり乖離しているように感じます。地理的および住民層的には多様性に富んだ都市であるにも関わらず、行政やメディア自体が横浜の持つ多様性に目を向けていない、旧来のブランドイメージ一辺倒という印象を受けてしまいます。良くも悪くも都市の規模が大きいため、多くの市民に一律に訴求するのは難しく、だからこそシティプロモーションにおいては、ブランディングよりもダイバーシティの価値観が重視されてほしいと思っています。横浜に住んでいる市民一人ひとりが自分たちの身近な街を知り、それぞれが自分事として考え、発信や活動をする人を増やしていきたいです。 

橋本)横浜で起業するということがかっこいいことなんだって思ってくれる人が増えたらいいなって、ただそれだけです。住所ってけっこう見られるんです。住所ブランディングも大事だなって思いつつ、そのためにも「横浜をつなげる30人」の活動で少しでも横浜の土地柄のステータスが上がっていけば嬉しいです。また、ぜひ若い人にはプレイヤーになってほしいと思っています。学生の子たちにひとつだけいえるのなら なるべくπが大きいコミュニティに入った方が良いですね。自分の中の引き出しが確実に広がるんですよね。そして求められることをきっちりこなしていくことを20代でしっかりやっていってほしいです。それが未来に繋がると思っています。そのような活動の中で、「横浜で起業する」ということがひとつのステータスになってくれたらいいなと思います。
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