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「横浜をつなげる30人」の第1回セッションがオンラインで開催されました。

2020.11.11
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「横浜をつなげる30人」の第 1 回 セッションがオンラインで開催されました。

「横浜をつなげる30人」とは、社会課題解決型イノベーション創出プロジェクトです。これから約半年続くプロジェクトの初回セッションが、10月28日オンラインで行われました。
冒頭、横浜市の林琢己副市長、そして横浜市立大学の地域貢献センター長鈴木伸治教授の挨拶がありました。林琢己副市長からは、横浜市が現在進めている「イノベーション都市・横浜」の説明があり、その上で「横浜をつなげる30人」への期待が語られました。続いて鈴木伸治教授からは、これだけの多様な人たちが集まれば、いろいろなプロジェクトが起こせるのではないか、今までそれぞれで努力していても解決できなかったことが、もしかしたら解決できるのではないかと、そのような期待を持っているとの話がありました。
続いて参加者の自己紹介、そしてパネルディスカッションが実施されました。パネルディスカッションのテーマは「オープンイノベーションの経験談」「コロナ禍でチャレンジしたこと」「ソーシャル・イノベーションのテーマとしてのアイデア」の3つ。挙手制で実施されたのですが、次々に手が挙がり、活発な議論が展開されました。応募者多数の中から選ばれた、多様なバックグランド(大企業、ベンチャー企業、NPO、デザイナー/クリエーター、市民、大学生、市役所職員など)を持つ、個性豊かな参加者間の対話は途切れることなく進みました。オンラインならではのことですが、チャットが並行して盛り上がり、新しい何かが生まれるエネルギーに満ちていきました。
その後、7グループに分かれてアイデア出しが行われました。各グループ20-30個ものアイデアが出て、次回以降の具体的アクションへと期待が高まったところで、初日5時間のセッションが終了しました。

今回は経験豊富な社会人サポーターに加え、横浜市立大学の学生3名が学生サポーターとして参加しています。学生サポーターの清水愛美さん(国際商学部2年生、芦澤ゼミ所属)が、主催者の芦澤先生と吉永先生にインタビューを実施しました。

Q1. 今回企画をされた経緯・きっかけを教えてください。

芦澤美智子准教授
(芦澤先生)
話は私の大学着任前に遡りますが、私は30代前半のころ、誰もが知る大企業の再建に携わりました。優秀で人柄も良い人たちが一生懸命やっていても会社は傾き、悲惨でした。そんな事態を少しでも減らしたいと考え、変革とイノベーションの研究を進めてきました。そのうちわかってきたのですが、シリコンバレー、ボストンなど、連続してイノベーションを生み出す地域の中心には大学があり、大学の人材を中心にして地域が繋がり、挑戦する文化が形成されています。横浜市立大学もそんな大学になるといいなと考えてきました。
また、イノベーション創出には、未知の知との出会いが必要です。背景の違う多様な人が交わることが必要です。ただし、多様な人が集まるだけだと、そこには摩擦が生じやすくなります。そこで、対話を研究している吉永先生にチームに加わっていただき議論を重ね、クロスセクターの参加者を集めた対話型・継続型・実践型のイノベーション創出プロジェクトとして「横浜をつなげる30人」を企画しました。
この企画をしていたところ、ちょうど2019年から横浜市で「イノベーション都市横浜」という政策が進められており、横浜市経済局にも協力いただく形で今回の実施に至りました。
吉永崇史准教授
(吉永先生)
私がこのプロジェクトに関わるきっかけは主に二つあります。私はもともと、対話型組織開発の研究をしていて、実践をゼミで 7 年間ほど続けてきました。対話型組織開発の研究とは、ダイアログ(対話)を通じて組織を良くしていくにはどうすればいいか、ということの研究です。対話とは、相手の意見を否定せず、いろんな人の話を聴く。相手の意見を取り込もうとすることで自分の意見とのぶつかり合いや違和感を「楽しみながら」、新しい意見やアイデアに変えていく。そのようなプロセスのことです。私は、それらがひとつひとつ積み重なっていくと組織だけでなくひとりひとりも同時に成長するのではないか、という仮説を持っています。そもそも人と組織を同時に成長させるためのマネジメント、対話の進め方について関心があったんです。そしてそれが発展し、人と組織、そしてコミュニティを同時に成長させるようなプロセスに関心を持つようになって研究してみたいと思いました。
もうひとつは自分自身の問題意識にあります。横浜市立大学に着任して 8 年、様々な取り組みを横浜市と共同で行ってきました。しかし、ひとつひとつ課題解決のための事業を行っても、どうしてもそれを続けることができなかったんです。その経験を通して「社会課題をもとに発展的に事業を継続してすすめていくにはどうしたらいいのだろう?」という問題意識を持つようになりました。だから、この「横浜をつなげる30人」を中長期的に続けていきたいと考えています。また、このような取り組みを通して新しい考えを発見し、研究成果として世界に発信していく使命があると思っていますし、それが横浜への恩返しにつながるとも思っています。
(芦澤先生)
私もそこにとても共感します。大学や研究者は、社会から期待されているんです。その期待に応えていくことに大学の発展への道があるだろうし、そこに大学教員としてのやりがいや意義を感じています。 また教員が社会に出ると、その教え子である学生も、社会との接点での学習機会が増えます。

(吉永先生)
そうですね。たとえば今回は芦澤先生のゼミの学生が学習機会ととらえて参加しているということが、本当に嬉しいことです。また、吉永ゼミのOGも参加していますが、そのOGは、卒業論文で対話によるコミュニティ作りについて研究し、それを仕事に生かしキャリアを積んでおられる方です。このように、教育、研究、地域貢献がすべて重なっている企画が実現していて、これから継続していくと思うととても嬉しいです。

(芦澤先生)
そうですね。大学が地域貢献の場でもあり学びの場でもあるということはとても素晴らしいことです。外に出ることはなかなか難しいことですが、学生、教員はもちろん卒業生など関わるすべての人が境界を超えて繋がっていくということを大学でも実現できたらいいなと思っています。

Q2. 横浜をよりよい街にするためのプロジェクトですが、現在の横浜市の課題と思われる点はどういった点ですか?


(芦澤先生)
組織境界を越えた対話、つまりコミュニケーションが、足りていないと思います。企業セクターは高度成長期に生産性向上を追求した結果、モノカルチャー組織で経営を行うことが主となりました。大企業の役員は同世代の男性ばかりというような。また組織外部との接点が限られてきました。その方が摩擦が少なく効率的ですから。しかし、社会が成熟期に入り、生産性追求だけでは会社も成長に限界が出てきました。多くの会社が成長のためにどうやってイノベーションを生むかに悩んでいます。
たとえば、今回「横浜をつなげる30人」に参加していた、みなとみらいのB to B企業の人が、「市民が何を求めているのか、社会課題が何かを知りたいと思ってここに参加しました」と発言していたことが大変印象的でした。この数年、みなとみらい地区には大企業の研究開発拠点が集結してきています。ここにクロスセクターの対話が生まれてくると、イノベーションがもっと起こってくると考えています。そしてイノベーションが生まれれば、社会課題が解決され住みやすい街になっていきます。また新しいものが生まれる街は、生き生きと活力に満ちてきます。

(吉永先生)
そうですね。私も横浜は一体感を持ちにくいんだろうと思います。規模の大きさが起因している部分はあるものの、誤解を恐れずに言えば、現在は想いを持ったひとがたくさんいて、個々に活動している状態です。もしそれらが繋がれば大きな動きになるのに、とてももったいないことだと感じています。この「横浜をつなげる30人」はそれらの活動を繋げていき大きな動きをつくっていくことを狙いにする必要があると思います。単にこれまでの活動のリストに加わることでは意味がないと思います。

(芦澤先生)
そうですよね。誤解を恐れず言うと、似た者同士の繋がりを強化するコミュニティはたくさんあると感じています。そんな中、「横浜をつなげる30人」は「多様性」を特徴としており、これは比較的新規性のある動きではないかと考えています。また、次世代人材を中心としていることも特徴的です。

(吉永先生)
本当ですね。いま、若い人が課題を自分事としてとらえ、どんな小さなことでもいいから目に見える形で活動していくということは必要ですし、スピード感をもっともっと追求していかなければならないと思います。世界的な動きはもっとはやくなっていくので、適応していかないといけないという部分も課題としてとらえています。そのためには、クロスセクターの対話が重要だと感じています。セクター内に留まる動きだときっちりしすぎている面があり、個人の小さな成功が積み重ねられないからです。

Q3. 「横浜をつなげる30人」を通じて成し遂げたいことは何ですか?


(芦澤先生)
「やってみようよ!」という仲間ができ、それが実際に着手され、手ごたえを感じる成功体験を得て欲しいと思っています。街で成功すると街を好きになる、そしてまた街で何かしたくなります。やらないとどうなるかわからないけれど、やってみて手ごたえがあると自分に自信が持てるし、一緒にやった相手に対しても愛着がわき関係性ができて、「また次何かやろう」という風になるのです。
家族や恋人同士でも同じだと思うのですが、継続しているうちに最初の気持ちだけじゃ済まされなくなってくるときがある。そんな課題を解決しているうちに、それが絆になり、次につながっていく。そういう関係性が、家族や恋人同士だけじゃなくて、仲間とか、組織とか、地域とか、国・世界・地球というように、ちょっとずつ広がっていくということが、世の中をよくすることにつながると思います。
手ごたえというのは、感謝されたり、目に見える形で何かが変わったり、形になったりすることで感じられます。たとえば、私にとっては「横浜をつなげる30人」自体がチャレンジです。始める際には「何の意味があるんですか?」や「本当にうまくいくんですか?」と言われることもありました。また進めていくに従って関係者も増え、多くの課題が出てきました。でもそういったことを乗り越え絆を深めながら、第1回目のセッションにたどり着きました。そしてやってみたら……参加した人々にとって、昨日と今日は違うという姿がありました。そして次に繋がっていくのだと思います。

(吉永先生)
私もとても共感します。まさに私がとても大切だなと感じているのはスモールステップ、小さな成功です。そのように小さな達成感を積み上げていくことによって切り拓ける未来に期待したいと考えています。さまざまな個々の活動を繋げて大きな動きを生み出していけるといいなと思っている一方で、その動きは達成感で繋がる部分があります。いま、達成感をもっているひとはまだまだ少ない。だからこそ、たくさんの人が小さな成功を収めてほしいし、それによって「あっ、自分たちできるんだ!」という、ちょっとでも社会にインパクトを与えられるという感覚を持ってほしいと思っています。

(芦澤先生)
私はその感覚を「街に受け入れられる感覚」という風に表現しています。

(吉永先生)
そうですよね。みんな、自分のやっていることが本当に社会の役に立つのかなんてよくわからないでやっているけれど、芦澤先生がおっしゃったような「街に受け入れられる感覚」という、実際に活動した後に得られるものは、ものすごく確かなものなんです。そういう確かに得られた「街に受け入れられる感覚」や達成感というものは次の活動に繋がっていくし、他の人の活動にも繋げたくなってくるんです。成功体験や達成感をもっていたり、自分のやっていることが評価された経験があったりすると、おこがましいなという思いや相手にとって貢献できないんじゃないかと思いで躊躇してしまうようなことがなくなります。そして、似たような挑戦をしている相手に対して協力したくなるんです。だからこそ、みんなに小さな成功を収めてほしいし、そういう感覚を持ってほしいと思っています。それは、「街に受け入れられる感覚」というように、小さくても地域なり社会に自分が貢献できるという実感のことです。
「横浜をつなげる30人」の中にはもうすでにその感覚を持ってらっしゃる方もいるし、まだ持ちきれてない方もいらっしゃいます。その人たちが混ざり合って少なくとも全員が大なり小なりそういう感覚を持ってくれるということがすごく大事なことだと思っています。そのようにして一度成功すると、それは繰り返しできるようになります。もう一度成功したいと思うし、もう一度感動を味わいたいという風に思うからです。その人のできることが広がっていき、それに伴ってビジョンが広がっていき、もっと発展していくと信じています。それが今回、少なくとも30人全員の経験になればいいと思います。
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