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「横浜をつなげる30人」の第2回セッションが開催されました。

2020.11.30
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「横浜をつなげる30人」の第2回セッションが開催されました。

社会課題解決型イノベーション創出プロジェクトである「横浜をつなげる30人」の第2回セッションが、11月11日、京セラ株式会社様の「みなとみらいリサーチセンター」にて開催されました。
自己紹介の後、これまでの「つなげる30人」(過去に渋谷、名古屋、京都などで開催)で最多である16名がプロジェクトの提案を申し出て、熱意ある、質の高いプレゼンテーションを行いました。

次に”OST”の技法を用いて、参加者が自由に会話する時間が設けられました。OSTとはOpen Space Technology(オープン・スペース・テクノロジー)の略称で、自由に開かれた場所で参加者自らが解決したい問題や議論したい課題を提示、進行の段取りも自主的に決めるなど、個人の主体性を重視することで参加者のコミットメントを最大限に引き出すのが特徴です。アイデアを発表した16人を中心に、それぞれが興味を持ったテーマについて深堀りをしていきました。会場内のあちこちで、活発に質問や意見交換をする姿が見られました。
続けて、グループワークが行われました。それぞれの専門分野で貢献できそうなテーマごとに分かれ、具体的なアイデア構築に向けてのワークがスタートしました。ワークでは、主に横浜市の理想と現状、その間に存在するギャップ(=課題)についてディスカッションが行われました。
議論は大変白熱し、横浜市の理想とする将来像について熱く語り合うチーム、どのような形でアイデアに貢献できるかといった意見を共有し可能性を広げるチーム、横浜市の課題をひたすら掘り下げその解決方法を検討するチームの様子が見られました。オンラインでは感じることができない賑やかさに、会場全体が一体感を持って包まれました。
その光景は、日常では双方向で交わることのない産公学の3つのセクターが、まさに1つになった瞬間でした。
2時間にわたる話し合いの末、各チームの議論の進捗状況の共有を行ったところで「横浜をつなげる30人」の第2回セッションは終了しました。年明けに開催されるオープンセッションに向け、次回は各チームの企画を更にブラッシュアップさせていきます。非常に活発な「横浜をつなげる30人」、次回以降も楽しみです。

今回は、学生サポーターの平井嘉祐さん(国際商学部2年生、芦澤ゼミ所属)が、運営を担っておられる野村様と加生様にインタビューを実施しました。お二人が所属するスローイノベーション株式会社は、「つなげる30人」を立ち上げ、これまで全国6箇所での「つなげる30人」の運営を担っています。まさに日本全国でクロスセクターのイノベーション創出を担ってきた方々です。
野村様には「つなげる30人」で目指す将来像について、加生様にはファシリテーションの極意をお話いただきました。






<野村恭彦様> ※Slow Innovation株式会社代表取締役。慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程修了後、富士ゼロックス株式会社に入社。同社総合研究所のコーポレート戦略部にて、「ドキュメントからナレッジへ」の事業変革ビジョンづくりを経て、2000年に新規ナレッジサービス事業KDIを自ら立ち上げる。2012年6月、株式会社フューチャーセッションズを立ち上げ、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションをけん引する存在となる。2016年より「渋谷をつなげる30人」プロジェクトを開始。

野村 恭彦氏
Q1. 野村さんは対話を通じた未来づくりに携わっておられますが、この活動を10年以上継続してこられた原動力はなんでしょうか?

野村:実は僕自身は、何らかの強い原動力を持っているというわけでもありません。この仕事をするようになってから、出来上がるものが素晴らしく、感激していて、「こういうことが広がるといいな」ということを願っているという感じです。対話を促すことが正しいと信じているわけではなく、1人のファンとして「こういう場は良いな」と思っています。逆にそういった良い場を知ると、対話の力を活用していない場に行ったときに、なぜこんなに素晴らしい人たちが参加しているのにその力を活用せず、一方的な場の運営をしているのだろうかとすごく感じます。少しでも多く、そういった良い場が増えればとシンプルに思っているだけです。
Q2. つなげる”30人”の可能性、この活動を通じて野村さんが描く今後の夢を教えてください。また、「横浜をつなげる30人」への特別な期待があれば教えてください。

野村:「京都をつなげる30人」のメンバーの方が、「太秦映画村」近くの商店街で、実際に「キネマ・キッチン」というコミュニティーキッチンを創り、運営しています。ここでは、ビジネスとして成立させるギリギリの線を保ちながら、やるべきこと、やりたいことをどんどん実現しています。メンバーのみなさんがやりたくてしょうがなくてやっている、というのが伝わってくるのです。止めないと、とことんやってしまうという雰囲気になっています。それがすごいなと思いました。そういった社会に貢献する姿を、ビジネスの世界が見習ってほしいと思っています。経済活動と社会的な価値をトレードオフで捉える事が多いですが、その2つが一致したら良いなと思っています。毎日自分の身近な人達と本当に良いコミュニティを作ることが仕事として成り立てば、そもそも仕事するという概念がなくなりますよね。コミュニティの一員としてビジネスをうまく使っていける、いいバランスの社会が理想です。
また、消費者が本当に社会的価値があるものにお金を払う社会にもしたいと思っています。例えば旅だったら飛行機に乗ってバスに乗ってホテルに泊まって、その間でもいろんな物を使いますよね。その消費の過程で、消費者が社会をサスティナビリティに向かわせるものに価値があると思えば、事業者はサスティナビリティへの取り組みを付加価値としてのせて提供することができるようになります。つまり、社会問題解決がビジネスになるには、消費する側の変化の影響が1番大きいわけです。
そして僕が期待しているのは、ビジネスだけではなく、政治とか宗教、哲学などの全ての面から同時に変えていくことです。それによって、よりスピーディーに社会を変えていくことができるはずです。「つなげる30人」にはその可能性があるんじゃないかなと思っています。これまでは様々な物を専門分化して、それぞれで頑張ると全体としていいよね、ということをやってきました。ですが専門分野で小分けにしていくと、リソースの無駄が多いです。例えばモビリティーを使ったスマートシティといった話と、子育てが大変といった話の根本は基本的には同じメカニズムで、解決策も同じだと思っています。だからこそ横断的に考える経験を積み、横断的に考える能力を持った人たちを育てていくことがすごく重要で、企業、政治、宗教、哲学などの全然違うレイヤーを行ったり来たりできるような人たちが増えていくと、今の我々の社会が1つにレベルアップすると思っています。


Q3. そのような社会の実現には、例えば貧困問題のような困難を抱えている人たちどれほど参画できるかというところも焦点になってくるかと思います。その点はいかがでしょうか?


野村:鋭いご指摘だと思います。僕はNPO側から入ってきたわけではなく、どちらかというと企業のイノベーション側から入ってきました。そこで、そういった困難を抱える層を応援する社会起業家が企業とコラボレーションする場をつくるところから活動を始めてきました。そのような困難を解決するには、社会課題を手触り感を持って解決する社会起業家が必要になるのですが、現状では、社会起業家は経済のサイクルの中で孤立していることが多いのが現状です。確かに大企業から資金をもらってうまくやっている欧米のモデルも1つだと思うのですが、僕としては、例えば大きな会社がスマートシティをやる際、貧困層の視点を持つために、NPOや小さな株式会社などの、密度が濃くて丁寧にいい仕事している人たちと、大きなお金を動かしている大企業がちゃんと連携していく事が必要だと思っています。または、地域の地産地消の野菜を誰もが手に入るような形にしようと、NPOと大手スーパーが組んだりするのも1つだと思います。企業から見ると、解像度が高い事業をやっている人たちは自分たちのサービスの価値を上げる可能性があるし、相乗効果になります。この実現も、「つなげる30人」の持っている可能性なのではないでしょうか。このようなことがつなげる30人の中で起きると良いなと思います。「つなげる30人」は、企業・行政・NPOというセクターを超えて、パーソナルな友人関係のようなものを構築できます。その中で信頼関係ができれば、大企業を動かせる一面があると思います。


Q4. 「Slow Innovation」という社名と亀が歩いているロゴが特徴的です。デジタル化やコロナで社会が急速に変化しているのに、どうして速さにはこだわっていないのですか?


野村:スローがつく言葉はたくさんあります。たくさん作ってたくさん廃棄するファストファッションに対し、少しずつ作って一切廃棄しないスローファッション。牛丼やハンバーガーなどに代表されるファストフードに対し、自分たちで1から農業を行ってBBQをするスローフード。その他にもスローメディア、スロージャーナリズム、スローガバメントなどが挙げられます。例えば行政だと、なにか問題が起きると、それぞれのセクションごとに問題を解決しようとします。対して、そもそもなぜ問題が生まれているのかという一歩引いた視点から見つめ直し、本当に何をすべきかを考えてみたほうが良いのではというのがスローガバメントの考え方です。つまり、来年までに1億円稼げと言われたら手段はかなり限られてくるように、急げば急ぐほどやれるオプションは減っていくんです。ほんとはもっとゆっくり考えたらやれることがたくさんあるし、根本から考えられるはずです。そこを一歩引いて、やれることを広げようとすると1人ではできないので、仲間を広げて、本質的な発見をしながら進んでいこうというのが、スローイノベーションの真意です。今は社会的にスローイノベーションをしなければならない時代であり、急げば急ぐほど失敗するっていう感じがありますよね。焦ってなにかやるよりも、しっかり時間を作って時間をかけて視野を広げて本質的な変化を起こしていきたいというところが面白いところですね。最終的にはうさぎよりカメが先に着くわけですからね。


Q5. 今後野村さんの理想とする未来を担っていく学生・若者に、メッセージをお願いします。


野村:今までの人生の成功モデルは明らかに変わりつつあります。大学でどのような活動をするといい会社に就職できるかにつながって、いい会社に入ることができれば良い人生を送ることができるというモデルが色あせてきています。ですが、学生はそういったものがないと非常に不安になるかと思います。いろんな社会的活動をやったときにそれをそのままノンプロフィットでやるのは心配だし、それを自分の種にして就職活動で良いポイント稼ごうという人もいるでしょうけど、なんとなくどちらも本当に自分たちがやりたいことを突き抜けていないと思うんですよね。どういう仕事に着くかよりも、どういう人と一緒に仕事したいかに目を向けた方が良いと思います。ですので、できるだけまわりにいる人が作る場をみんなで活用して、今までの型にはめるのではなく、1人1人の”スローキャリア”で考えて貰えればよいのではないでしょうか。
先日、私が勤めているビジネススクールで入試面接をした時に、NPOで働いている人が受験してきていて、面接していたもう一人の教授が「君、今NPOやってるけど、将来はビジネスもしたいの?」と質問したのですね。それに対して彼は「近い将来、NPOと企業は同じ存在になってくるので、特に企業に転職する必要はないはずです」と答え、質問した教授が感銘を受けていました。つまり、今ある枠に自分をはめるのではなく、どういうふうに生きていこうとしているのか、どのようなジャンルを描いていきたいのかが重要です。当然1人じゃ作れないので今すでにそういうことをやっている人たちとつながっていく中で、自分自身がこういう事したいと思っていれば、企業でそういった仕事ができると思うし、是非どんな仕事に就きたいというマッチングではなく、自分自身がどういう人とどんなことをしていきたいのかというところにフォーカスを当てていろんな人とつながっていくと良いと思います。





<加生健太朗様> ※Slow Innovation株式会社プロジェクトマネジャー。大学卒業後、通信会社にて法人営業を行った後、フリーランスとして独立。震災後、東北での行政と住民との対話の場作りを行った事を契機に、2016年から渋谷区の企業・NPO・市民・行政によるクロスセクターまちづくりプログラム「渋谷をつなげる30人」を運営し、ディレクターを務める。現在は全国6ヶ所の市町村にて、「つなげる30人」プログラムとして展開中。

加生 健太朗氏
Q1. 「横浜をつなげる30人」を始められたきっかけを教えて下さい。

加生:私は多様なセクターに所属した経験があります。その経験を通じてセクター単体では何も変えることはできませんし、どんなに一つのセクターがリーダーシップを発揮してもなかなかうまくいかないことに気付きました。なぜいろんな人が頑張っているのに社会が変わっていかないのか、なぜ一部の動きにとどまってしまうのかが、学生のときからずっと疑問でした。これを打開するために2016年から始めたのが「つなげる30人」シリーズです。
Q2. 他都市の「つなげる30人」と比べて、「横浜をつなげる30人」の印象はいかがですか。

加生:セクターをまたいで対話する土壌が耕されていた印象があります。他の都市の30人と簡単に比較することはできませんが、もう少し仲良くなるのには時間がかかる印象があります。一方で横浜の30人は、互いの溶け込むスピードが非常に早かったです。それは、横浜市がこれまで非常に長い時間をかけて、このような話し合う文化を発信してくれていたからこそ、今があるのだと思います。


Q3. ファシリテーターとして場を仕切っていく中で、意識していることや気をつけていることはありますか。

加生:参加者の皆さんがワークを行っている最中は、基本的にはその後のことを考えています。タイムマネジメントにこだわり、絶対にイベントを遅らせたくないと考えています。そういう意味ではプロフェッショナルとして、自分の中で常にタイムラインができています。ちょっと時間的に押しているのであれば「ここを削れば良いかな」とかということは考えています。
ただし、何でもかんでも削れば良いということではありません。「なぜそれをしなければいけないの?」だったり、「なぜ今やらなくてはいけないの?」だったりを、参加者に思わせない進行を意識しています。そして、 “全員の可能性を引き出すにはどのような問いかけをすればいいか”、ということを最も意識しながら進行をしています。


Q4. 授業内のグループワークなどでリーダーシップを発揮しようと頑張っている学生へのアドバイスがあればお願いします。

加生:まずファシリテーションの主役はあくまで場にいる参加者です。ドラマで例えるなら、ファシリテーターは主演ではなく演出を担う人です。とにかく相手の気持ちになって場を創ることが重要です。

そしてもう一つ大切なのが、経験による判断力です。野球で例えるならば、たくさん球種を揃えておくこと。どのような状況でどのような導き方をするかによって雰囲気も変わってきますから、たくさんチャレンジして経験を積むことも重要です。
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