妊娠中の身体活動量が非常に少ないと、早産のリスクが増す(エコチル調査より)
2018.11.07
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妊娠中の身体活動量が非常に少ないと、早産のリスクが増す
(エコチル調査より)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 髙見美緒助教および、富山大学医学部公衆衛生学講座 𡈽田暁子助手らの研究グループは、妊娠期に中等度の身体活動量がある群と比較して、身体活動量が非常に少ない群では早産の発生が多くなることを明らかにしました。
これまで、妊娠中に適度な運動をすることは、妊娠中の心や体の健康を維持するとされ推奨されてきました。しかしながら、運動だけではなく日常の業務や家事等を含めた「身体活動量」が、出産にどのような影響を与えるかは明らかではありませんでした。
妊娠期身体活動量を約8万6千人の妊婦を対象に評価し、妊娠期間と分娩方法の検討を行ったのは世界で初めてであり、画期的な結果です。
これまで、妊娠中に適度な運動をすることは、妊娠中の心や体の健康を維持するとされ推奨されてきました。しかしながら、運動だけではなく日常の業務や家事等を含めた「身体活動量」が、出産にどのような影響を与えるかは明らかではありませんでした。
妊娠期身体活動量を約8万6千人の妊婦を対象に評価し、妊娠期間と分娩方法の検討を行ったのは世界で初めてであり、画期的な結果です。
この研究成果は科学専門誌「PLOS ONE」に、2018年10月29日付でオンライン掲載されました。
Effects of physical activity during pregnancy on preterm delivery and mode of delivery: The Japan Environment and Children’s Study, birth cohort study
Mio Takami, Akiko Tsuchida, Ayako Takamori, Shigeru Aoki, Mika Ito, Mika Kigawa, Chihiro Kawakami, Fumiki Hirahara, Kei Hamazaki, Hidekuni Inadera, Shuichi Ito, and the Japan Environment & Children’s Study (JECS) Group
PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206160, October 29, 2018
Effects of physical activity during pregnancy on preterm delivery and mode of delivery: The Japan Environment and Children’s Study, birth cohort study
Mio Takami, Akiko Tsuchida, Ayako Takamori, Shigeru Aoki, Mika Ito, Mika Kigawa, Chihiro Kawakami, Fumiki Hirahara, Kei Hamazaki, Hidekuni Inadera, Shuichi Ito, and the Japan Environment & Children’s Study (JECS) Group
PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206160, October 29, 2018
研究の内容
妊娠中は、つわりや体重の増加でお母さんの体には大きな負担がかかります。そのため、今まで余暇に行ってきた運動や、体を動かす家事や仕事をやめたり減らしたりする方も多いと思います。
これまで、妊娠中の運動は、妊娠中の心や体の健康を維持するとされ推奨されてきました。しかしながら、運動だけではなく日常の業務や家事等を含めた「身体活動量」が、出産にどのような影響を与えるかは明らかではありませんでした。
そこで、横浜市立大学と富山大学の共同研究グループは、エコチル調査に参加している妊娠中のお母さん約8万6千人について身体活動量を評価し、早産や分娩方法にどの程度影響するか関連を調べました。
身体活動量は、平均的な1週間で1日にどのくらいの時間、体を動かしているかを尋ねる「国際標準化身体活動質問票(IPAQ)」を用い、活動の強度と時間を妊娠中後期に回答してもらいました。また、妊娠前期には妊娠前の身体活動量について回答してもらいました。
得られた身体活動量を集計して、量が少ない人から多い人までを順に並べ、等しい人数になるよう4つにグループ分けを行いました。その結果、妊娠中は、「非常に少ない(0~1.0 Met時/週)」、「少ない(1.1~8.2 Met時/週)」、「中等度(8.3~23.0 Met時/週)」、「多い(23.1 Met時/週以上)」に分かれました。
次に、「中等度」群と比較してほかのグループでは満期産より早産になりやすかったかどうか、および、自然分娩より帝王切開あるいは器械分娩(「ちょっと詳しく」参照)になりやすかったかどうかを検討しました。
その結果、妊娠前の身体活動量は早産や分娩方法に影響を与えないことがわかりました。一方、妊娠中の身体活動量は、早産や分娩方法に影響を与えることが明らかになりました。
1) 「非常に少ない」群で「早産」になりやすかった
これまで、妊娠中の運動は、妊娠中の心や体の健康を維持するとされ推奨されてきました。しかしながら、運動だけではなく日常の業務や家事等を含めた「身体活動量」が、出産にどのような影響を与えるかは明らかではありませんでした。
そこで、横浜市立大学と富山大学の共同研究グループは、エコチル調査に参加している妊娠中のお母さん約8万6千人について身体活動量を評価し、早産や分娩方法にどの程度影響するか関連を調べました。
身体活動量は、平均的な1週間で1日にどのくらいの時間、体を動かしているかを尋ねる「国際標準化身体活動質問票(IPAQ)」を用い、活動の強度と時間を妊娠中後期に回答してもらいました。また、妊娠前期には妊娠前の身体活動量について回答してもらいました。
得られた身体活動量を集計して、量が少ない人から多い人までを順に並べ、等しい人数になるよう4つにグループ分けを行いました。その結果、妊娠中は、「非常に少ない(0~1.0 Met時/週)」、「少ない(1.1~8.2 Met時/週)」、「中等度(8.3~23.0 Met時/週)」、「多い(23.1 Met時/週以上)」に分かれました。
次に、「中等度」群と比較してほかのグループでは満期産より早産になりやすかったかどうか、および、自然分娩より帝王切開あるいは器械分娩(「ちょっと詳しく」参照)になりやすかったかどうかを検討しました。
その結果、妊娠前の身体活動量は早産や分娩方法に影響を与えないことがわかりました。一方、妊娠中の身体活動量は、早産や分娩方法に影響を与えることが明らかになりました。
1) 「非常に少ない」群で「早産」になりやすかった
2)「少ない」群で「帝王切開」になりやすかった
3) 「非常に少ない」群と「多い」群で「器械分娩」になりやすかった
この度比較の基準とした「中等度」という身体活動量は、厚生労働省が推奨する身体活動量「1週間に23Mets・時」よりやや少ない程度の身体活動をしているグループです。ですので、早産や分娩方法への影響に関しては、「1週間に8~23Mets・時」程度の適度な身体活動をすることが推奨されます。
ただし、統計学的な観点から言うと、「身体活動量が少なかったから早産・帝王切開・器械分娩になるリスク」および「身体活動が多いから器械分娩になるリスク」は、喫煙や体重増加などが及ぼす影響と比べるとそれほど大きなものではありません。
今回の結果は、医師から運動をしないように指導される切迫流産、切迫早産、早産や分娩方法に影響を与えると考えられている妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など、多数の要因を除外する形で検討しております。しかし「早産等になりやすいから運動ができない」という可能性を完全に除外できているとは言い切れません。
妊娠中は自分の体調を考慮しながら、気になることがあればかかりつけの医師と相談して無理のない範囲で体を動かすよう心掛けるとよいでしょう。
ただし、統計学的な観点から言うと、「身体活動量が少なかったから早産・帝王切開・器械分娩になるリスク」および「身体活動が多いから器械分娩になるリスク」は、喫煙や体重増加などが及ぼす影響と比べるとそれほど大きなものではありません。
今回の結果は、医師から運動をしないように指導される切迫流産、切迫早産、早産や分娩方法に影響を与えると考えられている妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など、多数の要因を除外する形で検討しております。しかし「早産等になりやすいから運動ができない」という可能性を完全に除外できているとは言い切れません。
妊娠中は自分の体調を考慮しながら、気になることがあればかかりつけの医師と相談して無理のない範囲で体を動かすよう心掛けるとよいでしょう。
【「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」とは】
子どもの健康にどのように影響するのかを明らかにし、「子どもたちが安心して健やかに育つ環境をつくる」ことを目的に平成22年度(2010年度)に開始された大規模かつ長期に渡る疫学調査です。妊娠期の母親の体内にいる胎児期から出生後の子どもが13歳になるまでの健康状態や生活習慣を2032年度まで追跡して調べることとしています。
エコチル調査の実施は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを設置し、国立成育医療研究センターに医療面からサポートを受けるためにメディカルサポートセンターを設置し、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して行っています。
横浜市立大学は、横浜市金沢区、大和市、小田原市を調査地区とする「神奈川ユニットセンター」として本調査に参加しています。
エコチル調査の実施は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを設置し、国立成育医療研究センターに医療面からサポートを受けるためにメディカルサポートセンターを設置し、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して行っています。
横浜市立大学は、横浜市金沢区、大和市、小田原市を調査地区とする「神奈川ユニットセンター」として本調査に参加しています。
● 環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」WEBサイト
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/index.html
● 「神奈川ユニットセンター」WEBサイト
http://www.ecochil-kanagawa.jp/
● 横浜市立大学 エコチル調査WEBサイト
https://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/activity/ecochil/index.html
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/index.html
● 「神奈川ユニットセンター」WEBサイト
http://www.ecochil-kanagawa.jp/
● 横浜市立大学 エコチル調査WEBサイト
https://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/activity/ecochil/index.html
(本資料の内容に関するお問い合わせ)
公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター
総合周産期母子医療センター 助教 髙見 美緒
TEL:045-261-5656
Fax:045-241-5550
E-mail:tkmmio@yokohama-cu.ac.jp
(取材対応窓口、資料請求など)
研究企画・産学連携推進課長 渡邊 誠
TEL:045-787-2510
E-Mail:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp
公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター
総合周産期母子医療センター 助教 髙見 美緒
TEL:045-261-5656
Fax:045-241-5550
E-mail:tkmmio@yokohama-cu.ac.jp
(取材対応窓口、資料請求など)
研究企画・産学連携推進課長 渡邊 誠
TEL:045-787-2510
E-Mail:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp